今回から始まった「つのはず誠の“元気が出るCDショップ”」。ここでは、全国のスゴいお店を毎月ご紹介できればと思います。どうぞしばらくの間、お時間をください。

その前に、今回は第1回でもありますから、自己紹介も兼ねて、この連載を始めた経緯をお話しさせて下さい。（スキップしたい方は5つ下の段落へどうぞ♪）

私は、ふだんレコード会社を中心に音楽市場の動向分析をレポートしたり、その提案の延長でCDを企画したりしているのですが、（もっと言うと、 30年以上前からレコード、有線、ラジオなどのヒットチャートを見ては、レコード会社ごとの作家の傾向を調べたり、「あぁ、この歌はこの番組に出たから売れたんだな」とか「このレコード会社は、この企業と組んでいるから、ヒットの確度が高いんだな」とか考えては「こうすればもっと売れるのかな？」と妄想したりする、小憎たらしいクソガキでした）、そういう数字分析の仕事って、どんなに理詰めで頑張っても音楽業界の人達からは、「どうせ現場一つ知らないんでしょ？」「マーケティングなんて関係ないんだよ！」と端から相手にされないんです。実際に、某大手広告代理店のマーケ担当のトップの人が「えっ？ソニーマガジンズは、SMEグループ以外の広告も受け付けるんですか？」なんて真顔で質問されたのを見て、私自身も一瞬凍ってしまったし、そういう先入観も当たらずとも遠からずだと思って。

そこで、2001年頃から自分の目で全国のCDショップを回ってみることにしました。（大きなキッカケは「２ちゃんねる」での誤解から生じた誹謗中傷でした。）　実際に動いてみると、「購入アンケートの回答で大量に出てくるCD店には、こんな良い部分があるんだ～」と発見したり、「あー、このお店は、近くにこのLIVEハウスがあるから、ロック系が売れるというデータと一致するんだな～」と認識したり、と自分なりに“「買う」と「買わない」の間にあるモノ”が徐々に見えてきて、例えばエルダー向けのCDの時には、文字をより読みやすくしたり、分析レポートでは数字では見えない部分を補足説明したりと、仕事にも活きてきました。

もちろん、自分の足（＋レンタカー＋レンタサイクル＋交通機関）でまわる体力面、休みに自腹で回るという時間面や経済面での負担もあり、“全国津々浦々回っている”なんて、到底言えませんが、のべ2000軒のお店を見ることで、何より私自身が元気をいただきました。30代以上の独身男性や、あるいは主婦の方は、仕事や家事が忙しいからか「CDなんて、みんな○○○○（某ネットショップの具体名）でしょ？」とか自分のライフサイクルだけで考えがちですが、実際にはまだまだネット通販よりもリアルショップの方が圧倒的に売れています。

でも、そういった誤った認識が浸透しているのは、過熱報道のせいでもありますので、じゃあ私にメディアで書く機会があるというのなら、その責任の一端を担って、元気になれるCDショップを実際に紹介していければ、音楽ファンも他メディアの方たちもリアルショップの良さを認識してくれるのではないか？また、それを見た他のショップの皆さんも元気になれるのではないか？と思い、ここに至りました。どうぞよろしくお願いいたします！

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ということで、第1回は、私が全国を回って一番驚いたお店、徳島市にあるディスクステーションAWAさん（以下敬称略）をご紹介します。AWAは、 JR徳島駅のロータリーから一筋細い道に入った所にあります。

徳島市は、NHKドラマ『うぇるかめ』や映画『眉山』で、近年全国的にもかなり有名になったのですが、県民の奥ゆかしい性格からか、街自体もなんだかおっとりしていて、特に盛り上がっている様子もなくて……。しかも、全国的な傾向と同様に、郊外の大型ショッピングセンターでの人混みとは対照的に、駅前はお年寄りの姿がやたらと目立っていて。

でも、そんな逆境もなんのその！一歩足をお店に踏み入れたら、そこはもう別世界。正直広いとは言えない間口からは想像できないほど、どのスペースも音楽への愛に満ち溢れていて、私も思わずニヤニヤしてしまいました。

各CDにぶらさがるレコメンド文の数々。注目は、下部の棚の手書き背表紙！！

まず、驚いたのはリコメンド文の圧倒的な多さ！1枚1枚に、アーティスト本人たちが感涙しそうなオリジナル文が書かれていて、まったくの門外漢から、その分野のマニアまで納得するはず。クリックボタンで買われた1枚と、情熱に導かれて買われたAWAの1枚が、数字上で同じものだとしても、その数字が未来に繋がる確率は、大きく二分するのではないでしょうか。

そうです、CDショップは現在だけではなく、過去から未来まで繋げるチカラがあるんですよね～。私の個人的な見解ですが、タワーレコードが徳島にないのは、単に商圏規模の問題ではなく、AWAの圧倒的なパワーも影響していると思いました（あくまでも個人的な見解です）。

必ずしも有利とは言えない広さ。それでも、店内は愛でいっぱいです。

そして、「ア」～「カ」行の棚を見た時もビックリ！近頃、その並びや文字サイズが統一されていないため、アーティスト名か作品名か分からないCDも多いのですが、そんなCDには1枚1枚に注意書きがありました！

先日、立ち寄ったブックオフに、SHOGO HAMADAが“洋楽「S」”欄にあったり、清竜人のように漢字アーティスト名はとりあえず演歌・歌謡曲に突っ込んであったり、ある意味Twitterやブログネタには困らないですが、なんだか物凄くバカにされたようでゲンナリしたので、AWAのこういう心遣いは本当に嬉しい。涙が出そうになりました！

それでいて、自分たちのプッシュ作品だけではなく、我らがCDショップ大賞、さらには他地域ブロック賞までしっかり紹介してくれていたり、その“深く、広い”知識にはリスペクトするばかりです。そして、徳島出身のアーティスト・コーナーでは、ブレイク前の作品でも試聴体制が整っています。

なお、写真からはロック色がムンムンと漂っていますが、実際には昨今勢いのあるアニメ・コーナーも充実しています。アニメはマニア向けと敬遠しがちな音楽ファンも多いので、このような愛情あるお店が紹介してくれれば、その先入観も払拭しやすいな～とこれまた感心しました。勿論、年輩の方が来店しやすい街柄、フォークや演歌もしっかりフォローされています。

特集の組み方も楽しさいっぱい。ライブハウスのスケジュール帳にも秘密がありそう・・。

次に最新のシングル・チャートを見てみると、人気の嵐、EXILE、浜崎あゆみなどと同じTOP10に、ロック勢の相対性理論と大谷能生や、関西のガールズ・スカポップ・バンド、スカルキャンディーが入り、更には演歌の藤原浩も4位と、“これぞ、音楽のデパート！”と、言わんばかりの内容で、チャートマニアとしては、古き良き『ザ・ベストテン』の時代を思い出しました。

また、スピッツが2週連続TOP10入りしているのも、この店の“グッド・ミュージック”へのこだわりを感じさせます。ちなみに、同週のアルバムにはBIGMAMAとPeople In The Boxが1,2フィニッシュ…本当にもう弟子入りしたいです！

徳島出身バンドコーナーより。キャッチーだけを読むも良し、全文を読むも良し。プレゼンの勉強になります！

最後に、AWAのスタッフ、中西さんから、今、お薦めの作品をご紹介いただきましょう。

Champagne(シャンペイン）／『Where’s my potato?』

超国際派４ピースロックバンド。

メロディック、パンク、UKロック、そこにカジュアルさも加えたハイブリッドサウンド。

演奏も歌声も新人とは思えないほどクオリティが高い。ヴォーカルがシリア出身で英語がネイティヴなので、自然体で歌声を楽しめる。また英詞と日本語詞の両方あるのがいい感じ。

そして生き物のように踊るギターは聴き応えあり。

1曲ごとに違ったバラエティに富んだ内容は彼らの素地の広さを思わせるし、次はどんな曲で来るのかわくわくする。独特のポップセンスを持っていて何度でも聴きたくなる音。

実際のライヴでの彼らは想像以上に動的でアグレッシヴだった。

野外フェスでの会場の雰囲気を全部持ってく、文句なくかっこいい”次世代型ロックバンド”

次回のアルバムも物凄く楽しみです！

なんか読んでいるだけでも、音が聞こえ出しそう。すっごく元気になりました。また、お邪魔させてくださーい！