全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、東京は浅草にあるヨーロー堂(さん、以下敬称略)をご紹介します。
私は、数年来、CDショップからもっとヒットが出ればいいな~と思っていた時に、CDショップ大賞の事務局からお声がけいただき、その目標がピタリと一致していたことに、とても驚き、本当に嬉しく思いました。愛のある店員さんって大好きなので!
ただ、実際に大賞のその邦楽ノミネート作品を見た時に、ちょっとロック系に偏りすぎかなぁ……ダンスポップスでも優れたのはあるし、ガールポップでも幅広い世代に支持されるネクストブレイクっているはずだし……と、実際の市場規模(ロック系はポップ色の強いものを除けば10%以下)と比べた時に、やや違和感を覚えました。いえ、決して店員の方にケンカを売っている訳ではございませんので悪しからず~♪
そこで、今回は現在の“CDショップ大賞”とは最も縁遠いと思われる“演歌・歌謡曲”に強いお店をご紹介します。この市場も、シングルでは既に10%を超えるマーケット、最近ではオリジナルアルバムでもTOP100に入るアーティストまで育ってきているので、これを機に見識を広げるのもアリかもしれません。
ヨーロー堂の入口では、発売されたばかりの綾小路きみまろの漫談が鳴り響き、また入口横には氷川きよし君のプリクラ機が! このふたつでオバ様たちが吸い寄せられるように入っていきます(微笑)。
実際に入ってみると、演歌のシングル、アルバムは勿論のこと、ここでしか見たことのない演歌のDVDソフトや、コンサート情報、演歌情報誌と、“ここに来れば間違いなし!!”という万全の体制が取られています。これは、片手間にヒット演歌だけを置いているお店は太刀打ちできません(笑)。ちなみに、前川清の『40周年記念コンサート』では、GLAY「HOWEVER」、サザンオールスターズ「真夏の果実」(この2曲は『エンカのチカラ』シリーズにも収録)、更にはEXILE「Choo Choo TRAIN」までカバーされていて、歌謡マニアの間で話題になっていますのでご参考までに。
そして、正統派の演歌だけではなく、ポップ・オペラのホープ、藤澤ノリマサが大きく展開されていたり、演歌歌手によるJ-POPカバー集『エンカのチカラ』シリーズが面出しされていたり、と、そのお客様が次の1枚として買いたくなるようなものもあれこれと展示されていて、これぞお店の素晴らしさ! って思いました。
例えば、ネット通販だと、そのお客さんが買いそうな類似商品ばかりが「これも買っています」的に表示されますが、リアルショップの店員さんは、ジャンルを超えて「氷川くんが好きなんだったら、同じ王子様系の藤澤くんも好きなはず」とか「演歌歌手が好きなら、同じ歌い手でJ-POPの良さも分かるのでは?」とか、二歩も三歩の先の提案が出来るんですよね。これこそが、リアルマーケティングの真髄!やっぱり店員さんってスゴい!!
さらに数年前訪れた時に比べ随分と充実していたのが、お色気やカルト歌謡のコーナー。ディスクユニオンにも負けず劣らず豊富なラインナップです。これも歌謡曲の更なる充実を試みてだと思いますが、クレイジーケンバンド、横山剣のバイブル『円楽のプレイボーイ講座』や、銀河系と場末の酒場を融合させたポップスを歌う青樹亜依『アンドロメダの異星人』が常設されていて、ちょっとチビりそうになりました(笑)。
発売から3年経過してもいまだバックオーダーが絶えない畑中葉子『GOLDEN☆BEST』(ちなみに、「後から前から」や「もっと動いて」以外は、正統派ポップスも多いのです。)もジャケット面出し、ここにこっそり来て、あたかも自分が発信しているフリをすれば、あなたもネットの人気者になれるかもしれません。
週間チャートを見てみましょう。
順位 | アルバム名 | アーティスト名 |
---|---|---|
1 | 演歌名曲コレクション13~虹色のバイヨン~氷川きよし | 氷川きよし |
2 | いきものばかり~メンバーズBESTセレクション~ | いきものがかり |
3 | ラブライフベスト2 | 竹島宏 |
4 | 爆笑スーパーライブ第4集! 拝啓 中高年&予備軍の皆様へ | 綾小路きみまろ |
5 | ゼロの空 | 浅草ジンタ |
6 | 踊る昭和歌謡 | 葵と楓 |
7 | 夢見るアンドロメダ姫 | 青樹亜衣 |
8 | うつくしき南洋 | あきれたぼういず |
9 | チヨの甘いお話 | 奥村チヨ |
10 | アパッショナート~情熱の歌~ | 藤澤ノリマサ |
氷川きよし、いきものがかりは世間的なヒットとほぼ同じですが、注目は3位以下。若手ムード歌手の竹島宏が3位、本格的なツイン三味線とハモる歌声が人気の小学生姉妹、葵と楓が6位、昭和初期~中期に歌とコントで活躍した“あきれたぼういず”が8位、奥村チヨの編集盤が9位と、もう時代もジャンルも超越しています。青樹亜衣がランクインしていることから、他店はこういったカルト歌謡の商機を逃しているのかもしれませんね。
店長の松永さんによると、他にも、歌姫楽団、うめ吉、快楽亭ブラック、ヒーリングオムニバスの『旅 江戸十景』、ビートたけし『浅草キッド』もオススメとのことです。うーん、やりたい放題で需要と供給のバランスが取れているって素敵!最後に、最もオススメの1作を松永さんにご紹介いただきましょう。
浅草ジンタ 『ゼロの空』
浅草といえばジンタ、浅草ジンタといえばヨーロー堂!? 斬新でド迫力のサウンドながら、芸能のメッカ浅草の黄金期を彷彿させる懐かしさや楽しさをどこかに感じさせる。それこそが浅草ジンタの提案する、老若男女誰もが楽しく心踊るオリジナルジャンル『エジャニカ』。ライブ以外では当店限定販売の『FES FES FES』はまさにその真骨頂!体に♪が当たるほどのホーンセッションに、ダイナマイト和尚の激速スラップベース。浅草来たならJINTAを夜露死苦!
店を出ると東の空にそびえるは日々高くなるスカイツリー!お店の人情深さも相まって映画『ALWAYS三丁目の夕日』を思い出し、明日も頑張ろうと思いました。またお邪魔させて下さい~♪