第6回 JEUGIAさん 四条店

全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、京都府を中心に展開されているJEUGIA(さん、以下敬称略)の四条店をご紹介します。

私自身、オトナになってつくづく思うのが、京都の企業(正確には本社のある企業)ってユニークな所が多いなぁということ。今思いつくだけでも、早期からゲーム機を開発していた任天堂、下着の常識を次々と変えたというワコール、厳選したブルーベリーと人情で一気にブレイクしたわかさ生活、常温で固体のスープをメジャー化した天下一品、見るからにこだわりを感じさせるカバンの一澤帆布など、『シルシルミシル』などが喜んで取材しそうな企業が多数あります。それらは、「世界に一つだけの花」が大ヒットするずっと前から“オンリーワン”を目指していたようで、昨今の“ゆとり”とか“自由”とかに由来する“オンリーワン”とはかけ離れた、伝統産業にも通じるストイックな職人気質を感じさせます。

そして、CDショップでもJEUGIAのことを(良い意味で)不思議な存在だなと感じていました。数年前、売上データで、キャロル・キングの『つづれおり』(1971年)が毎週毎週数百枚地道に売れているな~と思って、都道府県別を見たら京都府が突出していて、JEUGIA店頭では、つい先日出た新譜のようにしっかり紹介されていて、なんというか“良いものは良いので、お店としてはちゃんと売って当然でしょ”みたいな雰囲気が店頭から漂ってきました~。他にも、かなり早期から中高年を対象に楽器販売が強化されているお店があったり、百貨店に入っているお店では、大人にも優しいバンド系を紹介したり、やはり(お客様目線×職人気質)が垣間見えます。

その中で、今回のJEUGIA四条店は2007年にリニューアルされたのですが、私は他の業種の前例から「繁華街に新装オープンするのだから、ヒット作品だけを効率よく置くようにしたのかな~」などと、本当に失礼な予想をしておりました。

ところが、実際にお店を覗いてみたら、見事に予想を裏切られることに!入口のある1Fには、楽器のフィギュアやお風呂でも聞けるスピーカー、アーティストのポスターなど雑貨が充実していたり、階段を下りたB1Fでは様々なジャンルでリラックスできる音楽が大量に紹介されていたり、ここでは“音楽ありきのライフスタイル”が積極的に提案されていると感じました。

木目調の什器が多いのも相まって、ここに来れば、私に欠如している(汗)音楽的な知性や大いに欠如している(大汗)情操も自然と高められそうな気がします。あと、B1Fはソファもあるので、お店で推薦されている名盤コーナー“クラシックの100枚”をゆっくり選ぶことが出来て、日頃足を酷使している私にも嬉しいです(笑)。次に、週間チャートを見てみましょう。

アルバムTOP10 (2010/12/13~12/19)
順位 作品名 アーティスト名
1 COSMONAUT BUMP OF CHICKEN
2 SENSE Mr.Children
3 MICHAEL マイケル・ジャクソン
4 いきものばかり~メンバーズBEST いきものがかり
5 SINGLE COLLECTION 2 宇多田ヒカル
6 KIDS BOSSA ~HAPPY CHRISTMAS VA
7 Francfranc presents SNOW CRYSTAL -The Best of Christmas Party Mix- VA
8 LOVE&RAIN 久保田利伸
9 JAZZ BAR 2010 VA
10 闇に吠える街~THE PROMISE ブルース・スプリングスティーン

オリコンTOP100に入らない名作が4作もTOP10入りしているのは、さすがのJEUGIA四条店です。ファミリー向けのショップで爆発的に売れている『キッズ・ボッサ』シリーズ、若い女性に人気のショップで売れている『Francfranc』シリーズ、そしてジャズ企画ながら10年連続で根強く売れている『JAZZ BAR』シリーズ、トドメにブルース・スプリングスティーンのこだわり抜いた6枚組BOX!!

ヒット作もしっかりと押さえつつ(これって凄く大事!)、雑貨からよりライトな音楽ファンを引き込みつつ、ジャズ、クラシック、洋楽などヘビーな音楽ファンも多いということが、このチャートだけでもよく分かります。そして、ともすると敵対視しがちな様々な音楽ファンから信頼されるお店というのは、並大抵な努力では作れないだろうな~と、あらためて店員の方々をリスペクトしつつ、価格戦略以外でのお店の可能性を学びました。

最後に、店長の近藤さんからオススメの作品をご紹介いただきましょう。

ヘイリー・ロレン 『青い影』

ジャズヴォーカルを選ぶ点で外せないのは、歌声と雰囲気と千強。それらの点を見事なまでにクリアしたものが本作品。冒頭曲での歌い出しには、KO寸前に追い込まれること必至(ここだけでも買う価値あり)。選曲もスタンダードやポップスの名曲がズラリ。タイトルナンバーの“青い影”“フィーヴァー”は絶品。ルックス、歌声、そして美貌と全てが揃った、当店御指名NO.1の歌姫。“天は二物どころか三物をも与えた!”

「今度の2月は新譜が少なくて、うちのお店もヒヤヒヤで……」というお声も聞こえる今日この頃ですが、今回の取材で日頃から旧譜をしっかり売るチカラ、また私たちメディアもそれをしっかりと支えるチカラが必要なんだと思いました。お店って本当に勉強になります!またお邪魔させて下さい~♪

(実際の店頭の様子は、ホームページのフロアガイドをご参考ください。)

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。2010年、私がよく聞いた5作は、中島みゆき『真夜中の動物園』、amazarashi『0.6』、長渕剛『TRY AGAIN』、BEGIN『ビギンの島唄~オモトタケオ3~』、由紀さおり『COMPLETE SINGLE BOX』でした。(岩崎宏美など仕事関連作を除く。)…CDショップ大賞ノミネート作も、勉強せねばなりませんね(汗)。