第100回 音楽処さん

全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第100回は札幌市中央区の音楽処さんです!(Twitterは@OnDoKo。以下、敬称を略させていただきます。)

今から20年前、あらゆる音楽チャートを貪るように見ていた(苦笑)私は、とりわけ業界版オリコン(CONFIDENCE)に掲載されている全国地区別ランキングのページに心躍らせていました。

北海道では、米倉利紀やSING LIKE TALKING、ゴスペラーズ、平井堅などの男性アーティストが全国ブレイクする前から、明らかに突出して売れていたのです。関西のように地元アーティストが強いのはよく分かるけど、地元に限らず、セールス以上に実力の目立つ男性アーティストばかり売れるなんて、これは一体??とずっと疑問だったのですが、数年後、音楽業界に入って、玉光堂に石川千鶴子さんというカリスマ・バイヤーがいらっしゃることがキッカケになっていると知りました。(これはショップのみならず、地元メディアやイベンターと一丸となって後押ししたのも大きいと思います!)とりわけ男性アーティストの取材時に「石川さんには本当にお世話になっています!」という会話を、幾度となく聞いて、これはいずれお店に行かなくては!と当時から沸々と思っておりました。(石川さんのお人柄をもっと知りたい方は、こちらの動画をご覧ください。)

高橋優
札幌でストリート活動をしていた高橋優との相思相愛ぶりがハンパないことが分かる展開。

GACKT様
オールシーズンで、いつも音楽処を見守っているGACKT様(の分身パネル)。

米倉利紀
デビュー以来、ずっと北海道のセールスを牽引してくれた石川店長へのお祝いとなれば、ANNIVERSARYと3回も重ね書きしたくもなります。(以上、米倉利紀氏の心の声を代弁してみました(笑)。)

セカオワ
普通のお店なら、「○○様」というサインがあるだけでも貴重なのに、あまりに他の展開が凄すぎて、セカオワのコーナーが地味に見えてしまうという目の錯覚(笑)。

そんな石川さんが2005年に独立なさったお店が、こちらの音楽処で、5月でオープン10周年を迎えます。札幌の中心街にあるファッションビル、4丁目プラザの7F、自由市場の一角にあります。

入ってみると、まず驚くのが猛プッシュされているアーティストの多さ。しかも、応援されているアーティストが、決してビッグヒットとも限らず、発売日直後でもなく、或るジャンルに偏っているわけでもない事から、その本気度が伝わってきます。

中島松原
世間からプッシュされることの少ない男性ソロ、しかも若手じゃないのに、中島卓偉や松原健之が共に猛プッシュされています。この両アーティストがこんなに展開されているお店があるなんて感動!そりゃあ、アーティストも〝愛するおんどこ様へ”と書きたくもなります!!

ChicagoPoodle
Chicago Poodleがプッシュされている点にも音楽処の良心が垣間見えます。

吉田山田
吉田山田も、最大ヒット曲「日々」以前からパネルにサインをされてずっと応援されてきたことが積み重ねた展開からジーンとします。応援ノートも4冊目!!

しかも、男性アーティストから愛されるお店として有名ですが、実際に入ってみると、インディーズアーティスト全般や女性シンガーソングライター、さらには演歌歌手も店頭展開やインストアLIVEで応援されていて、どんなアーティストでも「ちょっと聴いてみたいな~」と思わせる展開、また既にファンならば「これだけ応援されているなら、次の新作はここで買ってあげようかな~」と思わせる展開なのです。

(u>私もこちらのお店を訪れる度に、「自分は、何を守って生きているのか?」と考えさせられます。つまり、私のように日頃執筆やCD企画をする者でも、お店のスタッフの方でも、やはり売上げを上げやすいもの、注目されやすいもので自分の成績を上げるのが一つの正解だと思うのです。でも、放っておいては、誰にも注目されないアーティストがごまんといる中で、その知名度や売上げ「ゼロ」を「1」に変えることが出来る自分こそ、自分にしか出来ない事じゃないのか、そこまで効率の良い閲読数や売上げアップを目指す自分には、いったい何が残るのか?何が大切なのか?を、こちらのお店に数十分いるだけでも自ずと学びます。勿論、組織に属する人にはこの商業性と芸術性のバランスはとっても重要ですが、仕事が立て込むとどうしても前者に傾きつつあるので、時間を見つけてこうした音楽の良心に触れることが大切だなと思います。

A.F.R.O
北海道在住の7人組バンドA.F.R.Oの10周年コーナー。“バンド”とも“ヒップホップユニット”とも異なるため、なかなか紹介されませんが、ユニークな存在であることは確か。そして、そんな彼らをプッシュしている音楽処も流石。

Rune

Rihwa
男性アーティストだけじゃありません!北海道にゆかりのある女性シンガーソングライターもインディーズ/メジャー問わず応援しています!

V系
男性アーティストが圧倒的に多いジャンルゆえ、ビジュアル系CDやDVDもこの通り大量に。“花見桜幸樹のムード歌謡イベント”など、ついつい引き込まれるイベントも多数。

次に、アルバムチャートを見てみます。

音楽処 週間アルバムTOP10(2015/2/2~2/8)
順位 作品名 アーティスト名
1 おとコロコンピ V.A.
2 REPLAY 爽(さわ)(女性シンガーソングライター)
3 [-]MAKER G.A.I.A(男性バンド)
4 僕らのタッタッタラック 2gMONKEYZ(男性バンド)
5 Get Ready selfarm(男性バンド)
6 an evening prayer Natsuki(女性ゴスペルシンガー)
7 無名のランナー トラッシュオーディオ(男性バンド)
8 NEXT STAGE 三浦タカ(男性シンガーソングライター)
9 ベストモーニング CoCo Stretch(男性バンド)
10 カンダナオキ× 神田直樹(男性打楽器奏者)

こちらは、インディーズ・アーティスト中心のチャートですが、バンドやシンガーソングライターのみならず、幅広いラインナップとなっています。10位の『カンダナオキ×』は“バツ”じゃなく、コラボの意味の“かける”なのでお間違えなく(微笑)。

最後に、同店の石川さんより現在1位の作品をオススメいただきました。

V.A.『おとコロコンピ』 
 
2015年1月7日にリリース。ライブハウスと一緒に制作したコンピレーション・アルバム。今、北海道で一番応援したいアーティストが11組収録された、超お得な一枚です!!

おとコロコンピ
こちらが噂の『おとコロコンピ』。11曲収録、当店限定となれば買わずにいられません~!女性ソロもバンドも多彩です。

ハンバーガー
『おとコロコンピ』にも収録されている北海道の3ピースバンド、HAMBURGER BOYS。アーティスト側のサインとお店側の切り抜きのコラボも絶妙!

インディ1

インディ2
北海道のインディーズ及び、インディーズランキングコーナー。数枚ずつ置いてあるのは、まさにインディーズとしてアーティスト側から直接売りこみがある証拠ですね。それにしても「おんどこおすすめ!」の付箋が多くて、全部聴くのに何日も通う必要がありそう(←それが狙いでしょう!)。

確かに、これだけ幅広く揃って500円とは安すぎ!お土産に何枚か買って広めたくなりますね。ちなみに、現在の玉光堂ですが、女性スタッフを中心に、音楽が大好きで、とりわけ男性アーティストが大好きで(微笑)、全国チャート度外視で応援している様子がそこかしこに見られます。何店か取材した時に、石川さんがいらっしゃった時からのDNAだと分かり、やっぱりお店って人なんだな~とあらためて勉強になった次第です。

さて、2010年10月から続けてきた『つのはず誠の“元気が出るショップ”』、今回でいったんお休みいたします。CDショップ大賞が幅広いリスナーに認知され、その影響力もますます強くなり、何よりご紹介していない元気ショップが沢山あるなかでの休載は、心苦しくもありますが、私自身がお店周りをする時間が持ちづらくなったのが理由です。

しかし、これまでのべ100店の方とご連絡しながら、店頭展開に関するアイデアや写真をご紹介してきたことは、本当に感慨深いです。この連載が始まるずっと前から「CDショップは、すべてダウンロードとネットショップに替わるだろう」と言われてきましたが、どっこいまだ健在ですし、取材を進めるうち、創意工夫をこらしたお店の数自体はむしろ増えている実感さえあります。

もともと2001年頃、ネット上で「現場も知らないくせに!」と言われた(しかも、そのチャート関連記事を私が書いたものと勝手に誤解され、当時自分が持っていたサイトにアクセスが集中し炎上した(泣))のが悔しくて、始めた全国のCDショップ巡り。確かに、現場には私の知らない音楽、思いつかないアイデア、さらに音楽が大好きなお客様やスタッフの愛情が溢れていて、私の方が学ばせていただいております。私が、ただのデータバカに陥ることなく、定性的な理由づけが出来るのは、お店の方による音楽への愛情を見聞きしてきたからで間違いありません。

そして、掲載後にお店の方や展開のあったファンの方から御礼のご連絡が多く、これは他の連載にはない大きな特長で、誇りにすら感じます。本当に有難うございました。そして、いつか時間を作ってこっそり再開しますので、またお邪魔させて下さ~い♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。京都大学大学院修了。音楽関係の広告代理店での現場たたき上げを経て、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネット、日経トレンディネット、月刊タレントパワーランキングなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。これからも他の連載執筆や、メディアでのコメント(こちらは本名の「臼井孝」名義で活動しています)、CD企画などでお目にかかれれば嬉しいです。今後ともよろしくお願いいたします♪