第60回 ペット・サウンズ・レコードさん(前編)

全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は本連載60回目を記念して、今回と次回の2回に分けて、東京都品川区武蔵小山駅前にあるペット・サウンズ・レコード(さん、以下敬称略)をご紹介します。

先日、多くの人に注目を浴びながら発表された第5回CDショップ大賞2013。その授賞式の司会をされた男性が、私には凄く印象的でした。よく通った声で、チョイチョイとギャグを入れたり(笑)、ラストに杉真理と須藤薫の名盤を例に挙げたりと、段取りの良さがありつつも音楽への愛情を感じさせる進行ぶりでしたが、その方がこちらペット・サウンズ・レコードにお勤めの森陽馬さんなのです。森さん同様に、お店もすっごく熱いので、是非ご紹介できればと思いました。ちなみに、店名は、1966年のビーチ・ボーイズの名盤から来ているとのことです。

 


こちらが入口。BFにはライブもできるカフェ『Again』があります。

 


見よ!このコメントカードの咲き乱れっぷり!こんなに1枚1枚が愛されていると思うとじーんと来ませんか?しかも、よくよく見れば邦楽のラインナップもハイセンスぶりが露呈。

 


今の時期は、「スタッフが選ぶ2012年の名盤」が特集されています。薄緑色のフリーペーパーも読みがいが大有り♪

 

まず入ってみて驚くのが、お店の中の黄色いコメントカードの割合!!(コメントカード/陳列枚数)という数値を出してみたら、きっと全国屈指であることは間違いありません!しかも、通常の売れ筋に混ざって、洋楽・邦楽、ともに新旧問わずの名盤が、そこかしこに特集されています。その(良い意味で)雑然としている感じから、中古併設店のような雰囲気もありますが、実際はCD、アナログともに新品のみです。(それでも、レアなCDのセール品や、絶版の紙ジャケが意外とあるので、マニアの方は覗いてみるべし!)いずれにせよ、今年営業32年目とも思えぬほど、その陳列の絶妙なセレクトに大いなる愛と歴史を感じます。

 


レジ前には比較的わかりやすいヒット作。それでも、ジャンク・フジヤマや大橋トリオなど、グッド・ミュージックへのこだわりがあり、何より『CDショップ大賞』受賞作やフリーペーパーも展開して下さっています!写真内の女性は、紅一点のスタッフ、東尾沙紀さんです♪

 


「オシャレ」「名盤」「店長」「新譜」と区分された試聴機コーナーも親切。

 


貴重なインタビューを載せたフリーペーパーの数々!

 


スタッフの森陽馬さんが大好物なニール・ヤングも充実。ニール・ヤング新聞も!!

そして、CDショップ大賞のコーナーもしっかり確保されていますが、同じく目立つのがこちらのお店のスタッフお三方によるベスト作品のコーナー。その音源集も試聴させてもらいましたが、気取らずして上質なものばかりで、「あぁ、音楽って素敵だなぁ~」とあらためて実感いたしました。

さらに驚くのが、こちらはチェーン店ではありませんが、オリジナル特典や独占取材を交えたフリーペーパーも作成されている点!しかも、コメントカードもそうですが、その一つ一つに愛が溢れています!実際に、達郎さんや大滝さんのファン、また地下のカフェで定期的にLIVEをされる村田和人や伊藤銀次、告井延隆ファンの方も多数訪れるそうで、ちゃんとお店の方の愛情が届いているんだな~とジーンと来ました。こりゃあ、ヴァン・ダイク・パークス御大も加山雄三御大も来店したくなるよな~。


AOR系の充実ぶりが目立つ邦楽「ま」「や」行周辺。特に「村田和人」の充実ぶりは日本屈指かと思いました。

 

 


こちらのお店の大ロングセラー、告井延隆さんのビートルズ・カバーとそのオリジナル特典。センチメンタル・シティ・ロマンスもお店で作成されたオリジナル特典バッグ付!

 


お店の上方には、大滝詠一・佐野元春・杉真理の3人の直筆サインの入ったナイアガラ・パネルが!大滝さんによると、3人のサインが揃っているのは世の中に数枚だそうです。

 


米音楽の至宝と呼ばれる、ヴァン・ダイク・パークス!その翌月には、若大将・加山雄三氏も!国内外の大物が次々とご来店!!

 

すべて新品のアナログ・コーナー。レコード・ストア・デイの商品もあるとのことです。

 

こうして書いてみると、ベテランのアーティストばかり多いように思われがちですが、決してそうではなく、若手でも例えば今だったらジャンク・フジヤマとか大橋トリオとか音楽性の高いアーティスト、つまりはCDショップ大賞で人気のアーティストも多数置いていらっしゃいます。実際、私が訪問した時も、店長の森勉さん(陽馬さんのお父さんで、また解説者としてビーチ・ボーイズ・ファンにも有名!)相手に、若手アーティストらしき女性が、音楽を熱く語っておられました。確かにアーティストやその関係者ならば、何か喋らずには帰れない雰囲気が漂っています!

まだまだ紹介したいことがあるので、次回も居残ってお邪魔させて下さ~い♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネット、OKMusicなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic
過去40年間にわたって、邦楽で実力派の女性アイドルと女性シンガーソングライター(更には女性演歌歌手)を聴き倒してきた私。なのに、なのに・・・近日発売される“女性シンガーソングライター”のレビュー集の仕事にも、別の雑誌の女性アイドル特集の仕事にも一切誘われなかったことに対しちょっと凹んでいます(苦笑)。まぁ、ここで全国のCDショップばかり紹介していたり、他の連載で数字から音楽市場の傾向を読んでいたりしたら、「あっ、この人は音楽を聴いていないんだな」と思うかもしれませんが、そもそもCDショップや音楽市場を見つめようとしたキッカケは、音楽ファンの想いや声を自分で確かめようとしたことなので、音楽を聴かない訳じゃありません~。
これをご覧の業界の方々、どうぞこれからも、女性ボーカリスト(+松崎しげるなど、味のある男性ボーカルも)については「つのはず誠」ちゃんをよろしくお願いいたします♪