第一回「小田切大/パブリック」 DDCZ-1689 ¥2625 前半

そろそろ、CDショップ大賞のノミネート作品が決まりつつあります。そこで、今回は特別に僕が行った選盤作業の手順を、発表したいと思います。マネしてもいいですよ。


① まず、自分が対象期間に買った該当ジャンルのCDをパソコンの在庫リストから抽出(入荷処理済み)
② 唸りながら、20枚ほどに候補を絞る
③ 主要なHPをチェック、「○○では、このアルバムをプッシュしているな。カブっているから外そう。」の作業。どうせならショップ店員にも衝撃を与えることを目指したい。だいたい、5枚くらいになる
④ 対象期間の未聴CDで、チェックしておくべきアルバムがあるか否かを、発注書を見直しつつ、リストアップ
⑤ それらを購入、更に聴く。ハズレもある。アタリもある。最終的に3枚にする


こうやって書くと怖いですね。マネしなくてもいいです。「CDショップ大賞」のキャッチフレーズにもある通り、「CDショップに行かなければ、出会えない音楽」はもちろんですが、その先にある「自分のお店でなければ、出会えない音楽」を目指して投票したいと考えています。


さて、それでは始めましょうか「勝手にライナーノーツ」。
初回なので「勝手にライナー・ノーツ選盤基準」を勝手に制定してみます。
その1:基本的に「ライナー・ノーツが付いてないもの」を対象とします
その2:主要CDショップのHP上でも、まだレビューされていない作品をピックアップします
その3:もちろん、私自身が購入しオススメ出来るもの。CDショップ大賞推薦候補かも。
その4:当面、JPOPの中からセレクトします


というわけで本題です。

ひっそりとリリースされた。といっていい、小田切大のアルバム。新宿フォークというグループで活動していたのですが、その時のファンでも今回のアルバムに気がついていない人が多いのでは無いでしょうか?でも、大丈夫。私が気づきました。さっそく、本作のライナー・ノーツを書いていこうと思います。尚、本作は、ライナーこそ付いていないものの、帯に載せてある文章は、音楽性を簡潔にまとめており、情報量充分です。気合が伝わります。CDを持っている皆さん。これだけでいいのでは、とか思っちゃダメです。

今回のお題

小田切大/パブリック

小田切大 「パブリック」

元新宿フォーク、小田切大のファースト・ソロ・アルバム。まず、新宿フォークについてふれておきます。1999年結成。活動初期の音源は少ないですが、オムニバス『満塁時代の時代です』(2003年)を聴く限りでは、初期は歌謡フォークっぽいこともやっていた様です。しかし、TRIAD(コロンビア)から唯一発表されたアルバム「Rainbow Man」(2005年発表、名盤)では完全にファンク・ロック・バンドへと変貌しています。音楽性が名前と完全に乖離するも、素晴らしいバンドでした。しかし、惜しくも昨年解散。その新宿フォークで作曲の中心を担っていたのが本作の主役、小田切大なのです。

ジャケットの控えめな佇まいからも想像出来ますが、日常を情緒豊かに表現する歌声を主役にしています。スティーヴィー・ワンダー、マーヴィン・ゲイ等、70年代ニュー・ソウルからの影響を伺わせる粘り越しのロック・サウンドに、日本人らしい歌謡曲由来のメロディをまぶした彼の作曲センスは、これまでと変わらないながら、より成熟しており、魅力的です。また、後述しますがプロデューサーの影響から、フュージョン要素も加わっており、バンド時代(ファンク・ナンバーは健在ですが)に比べると発汗は抑え目。すっきりと整理されています。結果、ルーツのひとつである歌謡曲由来の情感豊なメロディが、より引き立てられた作品となりました。(次回へ続く)

しばた・かずよし。1973年、神奈川県生まれ。木更津博文堂のCD売り場でアルバイト店員として勤務すると同時に、CDショップ大賞実行委員としても日々活躍中。初めて自分で買ったCDは「ビージーズ」と「ドナ・サマー」のベスト盤。好きなアーティストは「LED ZEPPELIN」や「(ガブリエル期の)GENESIS」。HM/HRを聴いて育ち、極端なブリティッシュロック好きではあるものの、70年代までの音楽であれば、日英米問わず押し並べて好き。実は90年代以降のJPOPは5年前まで、ほとんど聴いていなかったというハンデはあるものの、やっぱり音楽は選り好みせず色々聴いたほうが楽しい、つくづくと実感中。ちなみに、携帯電話は携帯しない主義。