John Coltrane「OM」

 このコーナーを読んでくれていた皆さん、お久しぶりです。存在すら知らなかった皆さん、はじめまして。 このコーナーでは徒然なるままにオススメ盤を紹介しています。

 本日紹介するのはJohn Coltrane(ジョン・コルトレーン)が後期に発表したアルバム「OM」です。


John Coltrane「OM」 (XAT-1245564708)

 このアルバムに出会ったのは某店舗の『ご自由にどうぞ』箱にて。ジャケットも初見で知らないアルバムだったけれど無料で手に入るとは今日はついている、と即ゲット。ところが同行していた友人に「ずっと探していたアルバムでどうしても譲って欲しい」と言われ、他にも『ご自由にどうぞ』を数枚確保していた自分は優しさを発揮し譲った訳です。穏やかながら美しいジャケットが気になり後で調べたところCDは廃盤、中古は結構なプレミアが付いている状況でした。ところが数ヶ月後に後期コルトレーン作品のSHM-CD再発(8月リリース)が発表。「ふっふっふ。勝ったぞ、「OM」!だけど限定じゃないから来月に回せばいいか」という考えがいけませんでした。SHM-CDは全て限定生産な訳で注文する頃には軒並み販売終了の文字。結局、土壇場で業の深さを発揮、片っ端から在庫確認して無事手に入れることが出来たのでありました。後日、友人には「OM何とか手に入ったよー、やっぱSHM-CDは違うねー。買い直したほうがいいよ。(もう入手困難だけど)」などと本当は音の違いも分からないくせにチャーハンを食べながら報告したとか、しなかったとか。

 日々、CD再発される過去の名作群。どれを買おうか悩んでいる間にも、どんどん廃盤になってしまいます。購入する側にも計画性が求められるシビアな状況では、ついつい紙ジャケや限定表記のものを優先しがちですよね。そんな時、今回の話を思い出して欲しいです。「SHM-CDは全て限定生産」、これ大事。それから、いざというときはスマートな優しさよりも醜い業の深さをさらけ出そう。

 ・・・「OM」について書かなければ。

 傑作を多く残しているジョン・コルトレーン。本作はフリー・ジャズに傾倒していた後期に発表されており、創造主への感謝をテーマとした1曲のみを収めた宗教色が強い内容です。儚く幻想的なジンバブエのピアノ:ンビラ、暗く沈んだベース、幽玄な雰囲気を醸し出すフルート、パワフルなドラム、情熱的に呻き続ける2本のサックスが絡み合うアンサンブルは、混沌としたエネルギーに満ち溢れています。時折登場する「オーム」「オーム」といううめき声は夢に出てきそうなほど鮮烈。タダモノでは無いオーラを放つジャケット通りの傑作です。 (柴田 一良)