山野楽器・水嶋がおすめするこの1枚!

 山野楽器・相模大野ステーションスクエア店の水嶋亮太が2011年上半期発売の作品の中でおすすめするのは!!!

sleepy.ab「Mother Goose」

sleepy.ab「Mother Goose」
(PCCA-03352 ポニーキャニオン)

 札幌出身の4人組バンドのsleepy.abのメジャー2ndアルバムとなる「Mother Goose」。絵本の表紙のようなジャケットが印象的!sleepy.abといえばボーカル成山の憂いのある特徴的な声が魅力の1つで何とも病みつきになる。今作もその声を十二分に活かした作品になっている。空間を自在に操る浮遊感のあるギターに、確かな素養を感じさせるリズム隊もばっちり顕在。

 
 シングル曲であったM-2『君と背景』は雪どけの季節のイメージで作られた曲で、窓を開け放ったような開放感に包まれている。イントロから光射し込む朝のイメージを感じさせる。もう1枚のシングル曲はM-4『かくれんぼ』は一転して、窓を閉めきったような閉塞感のある曲になっている。 sleepy.abらしい冬を感じる静寂さと、凛とした美しいメロディのバラードとなっている。M-5『Maggot Brain』はゴリゴリのロックテイスト。激しめのアプローチのベースとドラムが耳にずっしりと響いて心地良い!リズム隊によって曲のイメージを形作っている。sleepy.abの中では異色だが、アルバム全体の中の1曲としては全く浮いていない。成山のボーカルが入る事で様々なタイプの楽曲もsleepy.abとして成立してしまうのが面白い。こうし た起伏がアルバムをより1つの物語として成り立たせている気がする。M-9『トラベラー』も今までにないエレクトロ的な要素が入っていて、1つのアクセント的な楽曲となっている。宇宙旅行のようなイメージのPVも秀逸。M-7『シエスタ』はサボりたい気持ちを歌にした楽曲ということで、ホッと癒させれる一曲。歌詞にも昼下がりという単語が出てくるがほんとにそのくらいの時間にかけながら昼寝したい楽曲!仕事の合間や休みの日の午後などに聴いてフッと息を抜いてみて下さい。そして美しいメロディーのインスト曲M-11『アルフヘイム』で物語の終焉を迎える。終盤に入るコーラスが雪のしんしんと降る人のいない異国の街並みを思わせる。最後の曲でありながら、もう一度聴きたくなる想像力を膨らませるエンディングとなっている。

 寓話的に日常を描いた歌詞と、透明感や浮遊感をまとった、あなたを夢路へと誘うsleepy.abらしさ溢れる楽曲達、進化、そして深化していく世界観に、新たな可能性を提示してくれる楽曲と、まさに様々な要素の詰まった『Mother Goose』というタイトルがしっくりくるアルバムに仕上がっている。まったりと夢心地で聴くのももちろんだが、様々な音の遊び がやり過ぎない程度に随所に散りばめられているので是非じっくりとそういった部分も味わってもらいたい作品。何度聴いてもいいです!

 まだ1年の半分ですが、今年の一番と言ってしまっても過言ではない名作。是非一度聴いてみて下さい!そしてライブも圧巻です。驚く程に築き上がった世界観に酔いしれます。