- 第10回
- ハスキー・中川さん
さあ!1発目は北海道です!北海道といえばカニー!羊ぃ―!寿司ぃ!ラーメンっ!!
・・・えーと、すいませんでした。仕事やりましょう。
そう、CDショップ業界で北海道といえば満場一致で、今回ご紹介する石川さんという女性なのです。自分が大阪でCDショップに勤めだした15年ほど前、北海道最大のチェーン店“玉光堂"の邦楽担当責任者だった石川さんの名前はすでに全国にその名前は轟いていたワケで、いわば伝説の人みたいな感じだったのですが、そんな石川さんが玉光堂で30年(!)を勤め上げたのち、2005年にオープンさせたCDショップが“音楽処(おんがくどころ)"です。大型チェーン店の進出と、昨今の音楽配信の浸透で、街の小さなCDショップがますます窮地に立たされてるこの時代に、なぜ敢えて独立店舗を構えるという賭けに出たのか?お話を聞いてきました。
音楽処(通称オンドコ)は札幌市内の目抜き通りにあたる狸小路に面した地下1階にあります。約60坪ほどの店内ではCDとDVDが販売されており、その3分の1が地元北海道で活躍するインディーズ・アーティストの自主制作のCDなのです。入ると石川さんを含めて2~3人の女性スタッフが笑顔で迎えてくれます。ちょうどボクがお邪魔した時にどこかのバンドのファンらしき女の子がスタッフと親しげに話しているのを見たのですが、もうインタビューする前からこの店のスタンスが窺える光景でした。で、まあ時間もそうないのでさっそく本題に。
“今、CDショップに元気がない"とよく言われますが、ボクが思うに、つまりはショップの店員(=バイヤー)に元気がないんじゃないか!?と。鼻息荒く話すボクに石川さんも(多少引きながら)同調しつつ、彼女がこの業界に入った頃の雰囲気と今を照らし合わせて語ってくれました。
『最初、入った頃はある種ミーハーなところがあって、このアーティストに会いたいとか、こんな音楽に埋もれたいとかっていうのは(今の若いバイヤーたちと)いっしょなんですよ。ただ、入ってみて、実際は厳しい世界なんだってことを実感しましたね。お客さんに相手にされないとダメなんだっていう。私がレコード屋で働きだした頃って、今みたいに検索の端末とか試聴機とか無かったから、例えばお客さんが有線で聴いたワンフレーズの歌詞をメモしてきて「この曲を探してるんですけど」みたいな感じで聞かれるんですよ。そこで「わかりませんねえ」では済まない。だから入荷したモノは全部聴いてましたよ。CD屋で働くってことは、自分の偏った感覚っていうのを一度、破棄して、一通り聴いていく中で、それぞれの魅力を見出していく作業が大事なんです。そうするといろんなお客さんとも会話ができる。今、いろんなアーティストとお付き合いできているのも、ジャンルを問わないでいろいろ聴いていると、そのアーティストの中に自分の好きな音楽を見つけることができるから。だからどの音楽も好きなんです。「どのジャンルが好きなんですか?」って聞かれると、逆に困るぐらい(笑)』

- 店の至るところに歳んやらポスターやら。よく見るとGacktのサインもありました。スゲェー
なるほどね。確かに店頭に並んでいる作品を見ても、ジャンルにあまり統一性は無さそうです。っていうか完全に。これぐらいの規模だとジャンルを特化させることで顧客を確保するのがセオリーなのかもしれませんが、そういった垣根を取っ払ったところにも石川さんのこだわりを感じることができますね。にしても、お店に入って物凄く気になるのは、あちこちに貼られたサイン入りポスターの数!そう、彼女の元には数多くのミュージシャンが訪れるんです。吉川晃司や堂島孝平といった有名アーティストから、そうでない地元のストリート・ミュージシャンまで。例えば、それが大型チェーン店の責任者だった時のことなら、まあプロモーションの一環として、無くもないなという話なんですが、こんな小さな店に(失礼)みんなが押しかけてくるのはいったいどういうことなんでしょう?(ウチにも来て!)

- 全部で100枚聴ける試聴機。
『人として付き合うってことが大事だと思うんです。ミュージシャンも人だから。例えばお店だったら、アーティストたちが作ってる音楽、作品に思いを込めて売らないと売れないと思う。だって1枚だろうが気持ちがないと仕入れないじゃないですか。その積み重ねでお店は成り立っているワケで、そういうアーティストが店に来てくれたり、インストアで演奏してくれたりするってことはスゴいことなんだっていうのをお互いが感じれる場所があって、その中でアーティストは成長していくんだと思います。だからビッグネームだからって特別扱いとかしないですし、むしろ注目されてない駆け出しの子たちの方が精神的にも弱かったりするから、大事に扱ってあげたりしますよ。「今回の曲良かったね!」とか「また北海道来たら遊びに来てねー」とか。そしたらまた会える子には会えるし、いい意味で(売れて忙しくて)会えなかったりする子もいるだろうし。中には悩みを打ち明けてきたりする子もいるから、励ましてあげたりとか、そういう人としての付き合いがあるから、例えば売れたときにも楽しく会話ができたりするんですよね。至って純粋なことだと思うんです』
ちょうど今回、お話を伺いにお邪魔した時もAIRがインストア・ライヴ(!)をやってたんですが、石川さんのスゴイところは、そういったアーティストたちとの付き合いが長い!(笑)。人望の成せる業です。って考えると石川さんって人気スナックのママみたいな存在かも・・・いや、失礼!ホステスさん!平井堅がデビューしてから8年間、売れなくても「素晴らしいアーティストだから」という理由で、ずーっとコーナーを作って店を上げて応援してきたというエピソードが象徴的です。

- ファンの人が自由に書き込めるノート。最終的にアーティスト本人に手渡されます。インターネットの時代にこのアナログ感がいいですよね。
最後に、CD屋さんとして心掛けていることを聞きました。
『こうやってCD屋の景気が悪くなってくると店は売るモノを選ぶじゃないですか。となると、結局ヒットものがバァーっと前面に出ますよね。そういうのがダメなんですよ(笑)。ヒットものはね、ただ置いておくだけで売れるんですよ。だからヒットものの横に何を置くのか?自分たちが売りたいモノは何なのか?自分の中でも常に意識してるんですが、要するに“売りたいモノ"と“売れるモノ"と“売っていかないといけないモノ"の3つのバランスが大事だと思うんです』
いやあ、重みが違うわ、重みが。石川さんの爪の垢を煎じて飲み干したいですよ。「人と人の繋がり」と「自分たちの意思」というのが軸にあるんだなということを痛感した石川さんのお話でした。石川さんは店の他に“オトキタ"という北海道のインディーズを応援するプロジェクトにも参加しており、コンピレーションアルバムの制作やFMラジオのパーソナリティーなど何だか幅広い活動を展開しています。これからも彼女の活躍に目が離せませんね!では、仕事も終わったのでお目当てのラーメン屋へ向かうとします☆
(20分後)
て、定休日・・・
- ミュージックショップ音楽処
- 〒060-0061 札幌市中央区南1条西4丁目プラザ7F 自由市場内
営業時間: AM 10 : 00~PM 8 : 30
TEL 011-221-0106 FAX 011-221-0161
URL: http://www.ondoko.jp MAIL: office@ondoko.jp







