第10回 フタバ図書さん アルティ福山本店

 全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第10回は、広島県を中心として全国に展開されているフタバ図書(さん、以下敬称略)のアルティ福山本店をご紹介します。

 昨年後半に始まった本連載もなんとか10回を迎えることが出来ました~♪リスナーでもアーティストでもなく、CDショップを紹介するという、何とも変わった視点のためか、私の連載やCD企画の中でも、ひときわ反応が薄い(汗)のが不安ですが、時々Twitterやメール、更には事務局へのご連絡やらで、嬉しいお言葉をいただけるので、いつもよりテンション高め(笑)で頑張っています!!
 
 さて、今回は、まだご紹介していなかった中国地方からセレクトしようと思ったのですが、そうすると外すわけにはいかないのがフタバ図書。“図書”と名のつくお店なので、“書籍中心、ゲームソフトが充実”かと、誤解する人もいそうですが、実際は音楽面でもかなり熱いお店が多いのです。MEGA祇園中筋店やTERA広島駅前店で学校帰りの中高生が常連のようにタムロしていたり、福岡のGIGA天神店でどのジャンルにも試聴機があって、それぞれに聴いているお客さんがいたり、TERA広島府中店では、タワーレコードと新星堂の“エエトコドリ”をしたような雰囲気を出していたり(ちなみに、ここは広島市内ではなく安芸郡にあるので、市内だけで検索しても見つかりません)、と他店でもワクワクする状況を何度も目撃しております。しかし、GIGA,MEGA,TERAと付いたお店は広島以外も多くなってきたので、「知ってるよ~」と言われそうなので、それ以外の素敵なお店であるアルティ福山本店を紹介することにしました。

フタバ図書1
ジャンル分けや、レコメンドの組合せが絶妙な試聴コーナー。ちなみに、私が訪れた時にヒップホップ系に入っていたアーティストは、いずれもチャート圏外でしたが、その後大半がブレイク。恐るべし!!

 福山市自体は、その場所柄からか広島というより岡山っぽい穏やかな雰囲気があり、また広島市や岡山市より小ぶりな街柄からか、通りを歩いてみても街全体に控え目なイメージがあるのですが、アルティ福山自体は2年前にオープンしたということもあってか、店内はキラキラでツルツル、まるでパチンコ店かドン・キホーテか?と一瞬見紛う程でした。しかし、音楽コーナーを見てみると、手書きのレコメンドカードや詳細なタイアップ情報がフォローされていて、実に親切。しかも、試聴機では、単に“邦楽”、“洋楽”とかではなく、“女性R&B”、“男性ポップロック”、“戦闘系アニメ”、“学園系アニメ”、“ベテラン・ソングライター”、“ポップス系ヒップホップ”、“B-BOY系ヒップホップ”というようにこと細かく区分されていて、「むむむ、ここのお店の人、めっちゃ聞いてる!!」と、とても驚きました。

フタバ図書2
一見キレイにまとまっていますが、実はかなり詳細な解説が付いています。買ったついでに、このレコメンドカードも欲しかったほど。

 しかも、売れているものだけではなく、「ネクストブレイク」や「隠れた名作」もそこかしこのコーナーで紹介されていて、これって音楽が好きじゃないと出来ないな~と、感心しまくっておりました。そのキラキラなお店から、派手な作品だけを置くというのも一手だと思いますが、そうではなく店内がキラキラでありながらも、良い意味で泥臭い熱のこもったお店作りも出来るのだな~、そしてそれが他にはない個性に繋がるのだな~、と私自身もこちらのお店で勉強になりました。

フタバ図書3
キッズコーナーも充実。“これで僕もヒーローだ”の「POP」もナイス!こちらでお子様を釘付けにしつつ、大人は、お店セレクトの新しいアーティストを聞けば、若さを保てるはず♪

 次に、シングル・チャートを見てみましょう。

シングルTOP10 (2011/2/7~2/13)
順位 作品名 アーティスト名
1 狭心症 RADWIMPS
2 Each Other’s Way ~旅の途中~ EXILE
3 ULTIMATE WHEELS KAT-TUN
4 Distance 西野カナ
5 Pride SCANDAL
6 ミザリー 黒夢
7 バレンタイン・キッス 渡り廊下走り隊7
8 with you feat.Me BACK-ON
9 Why? 東方神起
10 WHAT THE HELL AVRIL LAVIGNE

 一見すると、突出した動きはないようですが、それでもEXILEよりRADWIMPSが上位にあるのは、お店全体の音楽へのこだわりからでしょう。また、渡り廊下走り隊が7位であるように、取り立ててアイドルが強くないのに、SCANDALが5位なのは、彼女たちが、実は音楽ファンにも支持されていて、それを店頭できちんとアピールされているからかも。某TV番組で、彼女たちがアイドル特集でパン食い競争に勤しんでいたからといって、音楽がいい加減だなどと決めつけてはなりません。個人的見解ですが、こういう先入観をいかに崩せるかどうかがショップの方の力量にかかっていると思います。また、10位のアヴリルのように洋楽シングルがきちんと売れる所からも、若い洋楽ビギナーをしっかり誘導されているのが推察できます。

フタバ図書4
かなり早期から展開されていたブルーレイコーナー。落ち込む映像市場をどれだけ支えるかは、このコーナーの工夫ぶりにかかっていそうです。

 最後に、音楽担当の遠藤祐司さんよりオススメの作品のコメントをいただきましょう。

winnie / Synchronized

 実はインディーズがよく売れるウチのお店。やりたい事をこだわってやってきた結果が出始めたのかと密かに嬉しく思っています。今回オススメするwinnieもたくさんのリスナーに聴いて欲しいバンドです。『男女ツインボーカル』『エモーショナル』『グッドメロディ』これらのキーワードにピンときた方は是非聴いてみて下さい。クオリティの高さに驚きますよ!CDショップに行けばそんな素敵な音楽と出会えるかも。

フタバ図書5
本文中にあるwinnieのみならず、fm802で猛プッシュされているandropも、本連載第1回徳島のディスクステーションAWAさんが「きっとくる!」とおっしゃっていた[Champagne]も(本当にキタ!)、熱々で紹介されています。あー、福山のロックキッズが羨ましい!

 そうそう、レコメンド文を書く時は、キーワードを分かりやすく示すのも大切ですよね。そうでないと、“どや、オレよう知っとるやろ??”みたいな印象で素通りされてしまいがち。その点でも、アルティ福山本店では、愛情をひときわ感じたのかもしれません。また、“やりたい事をこだわってやってきた結果が出始めた”という言葉にも重みを感じます。確かに、こんなキレイでファミリー層も多いお店で、ヒップホップもロックも深堀りできるなんて、予想外ですもの。でも、深く張った根っこだからこそ、採れる実も多いのでしょう(←やや演歌風(微笑))。勉強になります。またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。先日、TV番組『となりの子育て』で、良い部分を沢山気付いてあげることが、子供が自信を持ちのびのびと育つ秘訣だと放送されていました。これって、今の音楽業界にも言えることですね。私も褒めて伸びるタイプです!…浮かれるタイプでもありますが(笑)。