第2回 スクラムさん利府店

全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出るCDショップ”」。今回は、宮城県を中心に展開されているスクラム(さん、以下敬称略)の利府店をご紹介します。

私は、普段のCD購入者アンケートを集まった意見の全体を見るだけでなく、地域別とか県別とかでしつこく調べては、「あー、このジャンルはこの地域が強いんだな」などとひとり考えてニヤニヤしている変人(自爆)なんですが、東北地方の売上げを調べる時に、作品によって飛び抜けて売れるスクラムというお店の存在が数年前から気になっていました。それで、本部があるという利府店に仙台駅から30分、車を飛ばして行ってきました。(勿論、お店には内緒です。そうです、これは“一人ミステリーショッパー”ごっこなのです(笑)。)

 スクラム利府店は、イオン利府SC(ショッピングセンター)の2Fにあります。SC内のCDショップというと、ファミリー層をターゲットとした展開をしていて、正直“広さの割に面白さのない、品数だけで勝負しているお店”も少なくありません。もちろん、それで成功されているのですから、需要と供給のバランスが取れた“正しい”お店とも言えるのですが、なんというか個性のないお店が“正しい”と言われるのは淋しいことだな、なんて天邪鬼な私は思ってしまうのです。しかし、スクラムに行った時、私は2つの事で大変感心しました。

 スクラムに感心した1つ目の点は、アンダーグラウンドなヒップホップ系、R&B系のCDの品揃えが半端なく充実していること。今ではLGYankeesを筆頭に、Noa、BIG RONなど多数のネクストブレイク・アーティストがTOP50入りしていますが、そのかなり前から東北では大いに盛り上がっていて、それをスクラムが率先してきたことが分かります。他にも、EXIT TUNESのボーカロイド系やアニメ・トランスなども好調で、この辺は首都圏と地方のセールス・バランスが大きく異なっています。

スクラム利府店店内写真1
仙台を拠点として活動する謎(?)のヒップホップアーティスト、LGMonkeesもこの通り可愛く陳列。他にも、ブレイク前のヒップホップ系がかなり揃っています。

そして、地方のセールスの方が、首都圏よりも全国的な傾向に近く、またロングヒットが多いのです。音楽業界で働く人の中で、渋谷、新宿で数店見ただけでヒット傾向を語りたがる人がいらっしゃいますが、それはとっても危険なことだと思います。かく言う利府店を訪れた私も、「し、知らない……」といって、何枚かのチラシをもらいつつ、中でも特に興味のある作品を勉強がてら買って行きました。(日々勉強、勉強(汗)。)

 そしてもう1つスクラムのすごいところは、車椅子のお客様に配慮して、通路の広さが確保されていたり、陳列棚を見やすい高さに工夫されたりしていること。これはスクラムというお店が“障害者の方が自己の可能性に挑戦し、 健常者と共に働ける新しい職場を創造すること”(アビリティーズジャスコ株式会社ホームページより)を目的としていて、障害者の方も勤務されているので、そのようなバリアフリーな配慮も当然の如くされているという訳です。それは一般の立場から見ても、清潔で整理整頓されたイメージがお店全体から感じられてとても良い印象を持ちました。

スクラム利府店店内写真2
車椅子がスイスイ通れる通路。自ずと綺麗なイメージがありますね。

これは統計データを見たわけではなく、あくまでも私の目分量ですが、全国のCDショップを回っていると、街で遭遇するよりも遥かに高い確率で障害者の方、あるいはその付き添いの方や介護されている方をお見かけします。それは、体にハンデがあると、どうしても外出が少なくなって、内向的な趣味の一つとして「CD・DVD鑑賞」というのがあるのかもしれませんが、それ以上に「体に障害を持っているということは、人一倍“生きる”ということを意識されていること、そしてその心のエネルギー源として“音楽”が非常に大きな役割を担っているのでは?」と推察しています。

スクラム利府店店内写真3
ちなみに写真は本部の部長さんで、陳列やレジ打ちでお店にも出られるそうです。当然、レジの高さにも工夫がなされています。

アンケートをまとめている時も、「身の回りに悲しい出来事があったけれど、音楽を聞いて元気になりました」なんてご意見はしょっちゅうお見かけします。実際に、老人ホームでカラオケを取り入れるようになって認知症の程度が軽くなった、という研究例も報告されていますし、やはり音楽のチカラって、生きる上でとっても重要なんだなと思います。実際にスクラムの店頭で、車椅子の方たちが何人か集まって一緒に買い物をされていたりするのも見かけました。だからこそCDショップは、健常者/障害者のお客様を問わず、もっと日々のメンタリティーを支えるよう工夫していく必要があるのかな~とスクラムを見ていっそう学びました。

スクラム利府店アルバムTOP10 (2010/10/11~10/17)
順位 アルバム名 アーティスト名
1 Request JUJU
2 GLAY GLAY
3 ETERNITY~Love & Songs~ 倖田來未
4 The Best of Shogo Hamada Vol.3 The Last Weekend 浜田省吾
5 真夜中の動物園 中島みゆき
6 RAZZLE DAZZLE BUCK-TICK
7 Wildflower & Cover Songs ; Complete Best ‘TRACK 3’ Superfly
8 FLASH PLAYERS NO DOUBT FLASH
9 LIVIN’ LARGE BIG RON
10 僕の見ている風景

次に10月第2週のアルバム・チャートを見てみると、特長はここでも2つあります。まずは、浜田省吾の社会をテーマとした楽曲を集めたベストと、人生を問うような名作である中島みゆきのオリジナルが上位にランクイン。どちらも聞いた後に、生きるパワーが漲ってきます。

スクラム利府店店内写真4
自主制作CDの陳列コーナー。インストアイベントも活発で、アーティストの育成にも熱がこもっています。

そして、もう一つの特長として、NO DOUBT FLASHとBIG RONの2作がTOP10入り。同じ週のオリコンで、NO DOUBT FLASHが34位、BIG RONが23位ということを考えると、いかにスクラムがこれらのアーティストのヒットに大きく貢献されているかが分かります。最後に、スクラム利府店店長の相澤さんからお薦めのCDをご紹介いただきましょう。

RYOTARO 1stミニアルバム『The 1st…』  http://www.myspace.com/ryotarosendai

仙台のクラブシーンをリードするソロシンガー。甘く艶やかな歌声の中にも力強さとハスキーなロックテイストが溢れる独自のR&Bスタイルで、スクラムの大PUSHアーティストです。
店では試聴もできますのでぜひチェックしてください!

音楽って生きる上でとても大事。そんなことを教えてくれるお店です。またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。10月20日に発売された岩崎宏美さんのカバーCD5枚をまとめた『Dear Friends BOX』の付属ブックレットの執筆(約2万6千字)を担当。このカバーシリーズ、作品を追うごとにジャンルレスな魅力が増していて、本作はJ-POP、歌謡曲、ジャズ、クラシックのどの棚に置いても併せ買いしたくなりそう。是非、お試しあれ。