第5回 ミュージックプラザ インドウさん

全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、九州地区から福岡市の天神地区にあるミュージックプラザ インドウ(さん、以下敬称略)をご紹介します。

 九州は、普段の市場調査でも、私の現地視察でも、書店やゲームとの複合店が最も多い地区だと認識していますが、昨今のメガヒットの減少およびヒット・ジャンルの多様化により、仕入れのセンスが非常に問われるようになったためか、なかなか思い切った入荷が出来ずに、特に九州地区では「CDは予約のみ受け付けます」という複合店が増えています。私は、現場を目の当たりにして「これじゃ、(予約できるほど認知度のない)新人が育つわけないやん……」と、非常にショックを受けました。是非、こういった状況を改善するためにも、ショップ発のヒットを業界全体で盛り上げていって欲しいな~、私も一緒に頑張りたいな~と心から思います。

 しかし、九州にありつつもここ天神地区は別で、今回ご紹介するインドウ以外にも、“音楽バカ”なら一度は訪れたいあのお店や、試聴スペースがゆったり出来るあのお店、韓流が充実しているあのお店、完売したはずの洋楽紙ジャケやアイドルBOXがザクザクしているあのお店、などなど私が地元民なら毎週ハシゴしたいほど良いお店ばかりです。それぞれのお店が刺激しあって、それがプラスに作用しているように感じました。

 そして、今回ご紹介するインドウは、生協など特販ルートへの拡売にも非常に積極的で、業界の活性化に貢献されているのですが、店頭の方も賑やかで楽しい!!

ミュージックプラザインドウ写真1
充実の演歌コーナー。氷川きよしだけじゃなく、昇り竜の山内恵介も大きくフォロー。ちなみに、私、インドウを“印藤”さん由来と知るまでは、インドゥ(「ロックンロール・ウィドゥ」の「ウィドゥ」風に)読んでいました(汗)。

1Fは、演歌や落語、J-POPがキッシリとある訳ですが、特に落語の品揃えはかなり早期からハンパない充実ぶり。カミングアウトすると、私はインドウさんから落語マーケットの凄さを知ったほどです。

ミュージックプラザインドウ写真2
ウワー~~!と飛びつきたくなるような落語コーナー。きっと、「クリアファイルや手拭い」が家に溢れかえっている常連さんが多いことでしょう。“『クリアファイル』や『手拭い』など”の“など”も気になる・・。

さらに、演歌カセットも綺麗に並べられていて……と、こう書くと、エルダーに偏りがちなお店かと思われるかもしれませんが、ブレイク前のアーティストや、正直旬を過ぎたアーティストもしっかりフォローされていて、例えばaikoと同レベルでたむらぱんをレコメンドしたり、「Perfect Sky」の大ブレイクから一段落してアピールしづらいであろうBONNIE PINKのオリジナル『Dear Diary』を、JUJUのカバーアルバムより猛プッシュしたりと、「いいものは良い! ちゃんと推薦します。だから聞いて下さい!!」という気迫が棚やPOPからこぼれています。これ、一度セールス枚数が落ちたら、次にベストが発売されない限り一切仕入れようとしないようなお店に、爪の垢でも煎じて飲ませて差し上げたいほどです(爆)。

ミュージックプラザインドウ写真3
左方のドリカムコーナー、レコメンド文の中心にアーティスト写真があって、なんだか手作り感が嬉しい。ちなみに右手前のサブちゃんの銅像は、全国を“巡回”されていまして、スパイ歴(笑)10年の私とは過去に富山や高知、浅草、札幌でもニアミスしており、一方的に親近感を抱いております(笑)。

だから、イベント等でドーピングされて上位が決まる全国チャートよりも、このお店に足繁く通った方が、意外と良い音楽が探せるのかもしれませんね。ちなみに、2Fはアニメ・声優・特撮コーナーがこの界隈では一番の充実ぶりで、こちらも頼れる存在です。次に、週間チャートを見てみましょう。

シングルTOP10 (2010/11/29~12/5)
順位 作品名 アーティスト名
1 SENCE Mr.Children
2 LOVE CENTRAL DREAMS COME TRUE
3 THE BEST BANG!! 福山雅治
4 いきものばかり いきものがかり
5 爆笑スーパーライブ(4) 綾小路きみまろ
6 SINGLE COLLECTION VOL.2 宇多田ヒカル
7 魔力 井上陽水
8 博多のよかうたよかここち (オムニバス)
9 ARE YOU READY? 斉藤和義
10 とげまる スピッツ

ヒット作が上位を占めるなか、注目は5位以下! 発売2週目の宇多田ヒカルの上に、発売7週目の綾小路きみまろの名前が! ミスチルとドリカムときみまろが一緒に売れるお店って、何て素敵なんでしょう! 7位の井上陽水、9位の斉藤和義もオリコンに比べると数十ランク上で、“めんたいロック&フォーク”といった土壌があるためか、福岡ってこうした男性ソロアーティストの人気が全般に強いですよね。

ミュージックプラザインドウ写真4
インドウオリジナルのCDコーナーとチャートコーナー。奥の予約コーナーでは、ジャニーズもクラシックもロックも仲良くラインナップされていて、これを見るだけでも“音楽に貴賎はない”とピースフルな気分になります。

そして、何より大きな特長は、8位の『博多のよかうたよかここち』。「黒田節」や「炭坑節」が収録されたオリジナルCDですが、発売から2年経過してまだ売れ続けていて、1店舗だけで累計2500枚を超えたそうです。確かに、♪酒は呑め呑め~とか♪月が出た出た~とか1枚持っておけば、町内会などどこかで役立ちそうですもんね。最後に、店長の西さんからオススメの作品をご紹介いただきましょう。

ミュージックプラザインドウ写真5
こちらがウワサの超ロングセラーCD。その横には陽水さんの限定シングル「能古島の片想い」も。

かりゆし 『味クーター』

福岡在住のウチナーバンドで、彼らの音楽を聴けばたちまち楽しい気分になること間違いなし! インストアライブでは道行く人までもその輪にまき込むパワーがあり老若男女幅広いファン層も特徴で、彼らの音楽を知らない方々にオススメしたいアーティストです。インドウでもかりゆしのオリジナルCDを製作し販売中ですが、まずはメジャー流通しているアルバム『味クーター』(PCCA-2599 ¥1500)をご堪能ください。

ちなみに“味クーター”とは、沖縄本島地方の方言で“中身がめっちゃ濃い!”という意味ですが、私は「お宅のお店も相当の“味クーター”ですがな!」とツッコミを入れたい! またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。日経エンタテインメント!の2010年1月号では、いつもの「月間音楽チャート診断」の他に、「年間音楽チャート診断」と「(売上的な)ガッカリ作品」の音楽編を執筆しています。年間音楽チャート診断は、6年連続9回目(←この表現、紅白出場回数みたいで好き(笑))の担当で嬉しい!紅白と言えば、店頭の紅白コーナーの隣には、ちょうど紅白ジャケットとなっている『COVER WHITE』『COVER RED』もコッソリ置いて下さいね♪(笑)