第7回 玉光堂さん 札幌ポールタウン店

 全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、北海道で展開されている玉光堂(さん、以下敬称略)の札幌ポールタウン店をご紹介します。

 “北海道はでっかいどう!”(←さっき「北海道」って検索しようとしたら、その候補上位にこの言葉が!どうやら同名飲食店が人気のようですね)。……私、こんなダジャレを言う中年になるまい、と心に留めながら数十年生きてきましたが、実際に北海道でCDショップ巡りに行き、あるお店から次のお店までの移動でバテそうになる度に、この言葉が脳内ループしてしまいます。

 それだけ北海道は、土地の利用の仕方が贅沢で、例えばコンビニ1軒でもその数倍の広さの駐車場があったり、「KFC、すぐそこ」の看板の下に(左5km)とか平気で書かれていたり、隣家が密接している京都市出身の私からしたら、魔法の国のように感じておりました。

 そんな広さから、大型ショッピングセンター(SC)の開発も本州より断然早くから行われていて、玉光堂も北海道で人気のポスフール内の出店もあるのですが、それとは対照的に市街地で所狭し(と言っても、本州では標準的です)と頑張っておられるお店も多いのです。

 しかも、玉光堂の場合、それがとても魅力的! まず、入口が華やかな所が多く、それを見るだけでも、いま旬の作品が何なのかが伝わってきます。ちゃんと数えた訳ではありませんが、店頭でPV放映などビジョンを表示している割合も他と比べると断然高いような気がするし、他にも手書きの熱いコメント付きPOPなどからも、物凄く音楽への愛情が伝わってきます。

 しかも、お店ごとに少しずつ特色は異なるのに、どのお店も“J-POP=大衆音楽”というのを念頭に、「いずれ天下を取ったるどー」的なポピュラリティーのあるアーティストを見つけるのが上手いように感じました。

 そして、その中でも最も驚いたのが札幌市内の大通とススキノを結ぶ位置にある地下街にある「玉光堂ポールタウン店」です。お店の狭さもさることながら、その通路は新品CD店の中では全国一狭いのではないかと思います(つのはず誠調べ。間違っていたらすみません!)。しかも、その通路のそこかしこに、試聴機用のヘッドフォンがブーラブラ! 大量の面出し&ブレイク理由を分析したコメントが目白押し! 狭さを感じないどころか、楽しさを感じさせる作りとなっています。

玉光堂写真1
決して広くないのに、更にあれこれとプッシュしていて狭くなった入口。新譜も旧譜も、アイドルもミュージシャンも、みーんな仲良くお客さんを待っています(微笑)。

 さらに驚いたのが、タワーレコードで大量に売れそうなロック系のアーティストも、電気街や地元商店街で大量に売れそうなAKBやジャニーズのようなアイドル系も、ドン・キホーテで大量に売れそうなEXILEや加藤ミリヤのようなアゲアゲ系も、しっかり置いてあるのに、お店の一角には“演歌・歌謡曲は当店にお任せ!”的な雰囲気もあり、驚きました。なんと欲張りなお店だこと!!

玉光堂写真2
この1m幅の通路に、ヘッドホンが数十個!これなら遠慮なく聞けます(笑)。ちなみに、右手前のJ-POPオムニバスコーナーにある『COVER WHITE 男が女を歌うとき』は、僭越ながら私が企画しておりますが、無理矢理ねじこんだ訳ではありません(汗)。

 同店を開発した玉光堂の店長リーダー有馬さんによりますと、“午前中はカラオケにいそしむ演歌・歌謡曲ファンの情報交換・発信基地として、夕方から夜はススキノ直近という場所で人気のアーティストのショップ”として人気だそうです。私は、過去2回夕方前と夜間しか来ていなかったので、早い時間の“別の顔”を知りませんでした。そういえば、東京・中野に昼夜で別メニューの超人気店がありますが、それをCDショップでも実現してしまうとは!! リアル・マーケティングの真髄を見せられました。

玉光堂写真3
話題のシングルのみならず、アルバムも積極的に陳列。そうなんです、演歌のアルバムって、意外とコンセプチュアルで、ベストテン世代以上なら聞きたくなる作品も意外と多いのです。さすがのポールタウン!

 次に、週間チャートを見てみましょう。

シングルTOP10 (2011/1/3~1/9)
順位 作品名 アーティスト名
1 トイレの神様 植村花菜
2 流星 コブクロ
3 哀愁のシンデレラ 北原ミレイ
4 ありがとう いきものがかり
5 雪は、バラードのように・・・ チェウニ
6 みちゆき舟 岩本公水
7 I Wish For You EXILE
8 人生みちづれ 天童よしみ
9 また君に恋してる/アジアの海賊 坂本冬美
10 RE-MAINTENANCE CNBLUE

 全国的に急上昇した1位の「トイレの神様」ほか、2位、4位、7位、8位、9位に紅白効果が表れています。これは、効果が出るものと期待してきちんと陳列しただけでなく、お客様から“ここへ行けば、昨日流れていたあのCDが買えるはず”という信頼が得られている証拠だと思います。昨今は他の入手手段も発達している為か、事務的に並べられていて、全然売れていないCD棚もよく見かけますので。きっと玉光堂の店員さん達は、店先で「♪らーらーらら~って言う曲のCD、買いたいんだけど……」といった質問のシャワーを大量に浴びておられることでしょう(実は、私過去に10回ほど、店員さんの横から口出ししたことがあります)。

玉光堂写真4
2ヶ月前の旧譜から来月発売の新譜、更には5年前のベスト盤も、参加したトリビュート盤も紹介。紅白歌合戦の出場回数「6」の文字もご丁寧!前出の有馬さん曰く、「コブクロへの愛情はどこにも負けません!」とのこと。異議のあるショップの方々、是非とも道場破りを♪

 最後に、現在の店長さんである高津さんよりオススメの1枚をご紹介いただきましょう。(ちなみにコメントカードはスタッフの平山さんによるものです。)

ゴールデン・ボンバー 『ゴールデン・アワー下半期ベスト』

 最近、V-ROCK系がとっても好調な当店。そんな中でもゴールデン・ボンバーは要注目!! 先日発売された『ゴールデン・アワー下半期ベスト』は、V系でありながらも耳馴染みしやすい曲が多く、特典のDVDには、“笑撃”映像が収録されていて、CDもDVDも両方楽しさ満開です。

玉光堂写真5
こちらがウワサの「きんばく」。アーティスト写真の切り抜きも細かいです。こういう点に女性スタッフの方の美意識が出ますよね!

 ニコニコ動画から話題が勃発したこともあり、ネット通販の売上が圧倒的なゴールデンボンバーも、ポールタウン店の賑わいに交わればリアルな売れ行きに様変わり。なんだか勉強させられることだらけです。またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。先日、若手アイドル・グループのLIVEに見学に行ったら「私、ご飯が炊けるようになりました!」の一言に、会場中が熱狂。彼女が30年後、同じ台詞を言った時の周囲の冷たい反応を想像し、何だか複雑な気分になりました。そう考えると、“永遠の少女=松田聖子”はミラクルな存在ですね!