第8回 カミヤマサウンドステーションさん

 全国のスゴいお店をご紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、千葉の南房総にある館山市のカミヤマサウンドステーション(さん、以下敬称略)をご紹介します。

 私は、春休みと夏休みと冬休みを利用して……いえ、私の休みではなく、学生さんの休暇中を利用して、早い話が“青春18きっぷ”を利用して(笑)、首都圏を中心にショップを巡ることがあります。ちなみに、東京からの一番遠くまでの日帰りは長岡市で、偵察時間よりも往復乗車時間の方が長かったです(苦笑)。(あぁ、土合駅で下車して地上に脱出してみたかった……。)それで房総半島をぐるっと1周した時に、あまりに空気が美味しくて、また見晴らしも良くのどかなので思わず途中下車したのが館山駅でした。

 しかし、目に入ったCDショップについ入ってしまうという音楽マーケッターの悲しい性、いえ楽しい性でお邪魔したのがカミヤマサウンドステーションでした。お店の周りのどこに止めても怒られなさそうな広い駐車スペースも、なんだか平和なムードを漂わせていました。

 しかし、一歩お店に踏み入れると、そこはまるで百貨店の催し物会場のように、各ジャンルにこだわりのコーナーがそこかしこに作られていて正直もの凄く驚きました。

 まず、ヒップホップやレゲエ系は洋楽・邦楽問わずかなり多く、移動手段が車メインの地域のヤ○キー様御用達ゆえに大変重要だと教えられます。また、ジャニーズ系はCD・DVDのみならず、ポスターやらワッペンやら花盛りで、これまたその必要性の高さがうかがえます。(そう言えば、CDショップ大賞のノミネート作品って、これらのジャンルがほとんど無いですよね…。)

 さらに、町にご高齢の方も多いこともあって、演歌や落語コーナーもあるのですが、この演歌コーナーが、お店の一角にさらにお店があるような構造で、その中にくつろげるスペースもあったりと、その本気っぷりに感動してしまいました。店長の上山立巳さんによると、ダイジェスト盤をお客様と聞いては、やれキーが高いだの、歌いやすいだのと、議論するそうで、車で30分~1時間かけてのお客様も多いそうです。

カミヤマサウンドステーション1
お店の一角にお店が!!椅子に座ったら、お茶でも出てきそうな和やかな雰囲気です。人口密度から想像できないほどのカセットの充実度に驚き!

 あと、お店を見ていてジャズやクラシックのナイスプライス・シリーズとか、名盤シリーズとか、紙ジャケット・シリーズとか、BOXセットとか、方々から“目指せ!コンプリート収集!!”と叫ばれているかのような品揃えに気付きました。

カミヤマサウンドステーション2
撮影用にキレイに並べて下さったためか、レコメンド文「な、なんと1100円!」が、な、なんと隠れています。でも、このコンプリート感、部屋に持って帰りたい~♪

 当時、ヤフオクで6万円前後で取引されていた限定BOXが定価の2万数千円で普通に置いてあったほど……。限定マニアの方は、カミヤマでチェックなさると良いかもしれません。トドメに、楽器コーナーにはギターや楽譜のみならず、尺八や祭り笛まで常置されていて、ここには“音楽の10人の小人が棲んでいるんじゃないか? ”と思いそうな雰囲気に、私もつい財布の紐を緩めてしまいました(笑)。

カミヤマサウンドステーション3
洋楽最新ヒットも網羅。と、その上に半年前発売の『ラガ・バッシュ!』のレコメンドが。いつでもアゲアゲなお店というイメージを加速させます。

 次に、アルバムチャートを見てみましょう。

アルバムTOP10 (2011/1/10~1/16)
順位 作品名 アーティスト名
1 ガールズ・トーク KARA
2 いきものばかり~メンバーズBESTセレクション いきものがかり
3 Hoot 少女時代
4 COSMONALT BUMP OF CHICKEN
5 V.I.P. HOT R&B HIPHOPⅦ V.A.
6 LOVE SONGS 浜崎あゆみ
7 THE LABORATOR NITRO MICROPHONE UNDERGROUND
8 SONGS OF LOVE KG
9 ドーワップス & フーリガンズ ブルーノ・マーズ
10 You can’t catch me 坂本真綾

 ジャニーズ系同様にK-POPアイドルも好調なようで、そこにNITROやKG、オムニバスの『V.I.P.』なども加わり、キラキラ&ギラギラ系の音楽が人気だという印象を受けます。ちなみに、常時よく売れているのが、カミヤマ限定発売の『六軒町祭囃子』というCDで、どうやら全世代で賑やかな音楽がお好きなようですね(微笑)。

カミヤマサウンドステーション4
これがカミヤマ限定CDの『六軒町祭囃子』。その横のSound Horizonの限定盤に「限定!急いでください」のプレートもナイスですよね。

最後に、店長さんよりオススメをお尋ねしたところ、様々な作品について一言ずつコメントいただき、それが面白かったので、ほぼそのまま掲載いたします。

キース・ジャレット『ケルン・コンサート』、オスカー・ピーターソン『プリーズ・リクエスト』
…ユニバーサルミュージックの完全限定1100円シリーズですが、超お買い得のためか売れています。

カラヤン&ベルリン・フィル『ドン・カルロ』
…クラシックのDVDですが、2枚組¥3,500(定価¥4,200)でバリューの高さからか、満足いただいています。

青春歌年鑑 戦前編・戦後編 各シリーズ
…このシリーズの中では意外に高回転で、昔の音源はほぼ全部収録されています。(注:確かに、現在は収録NGのアーティストが多くて網羅できないですよね。)

カセットテープ 久保幸江「トンコ節/ヤットン節」
…歌カラテープの中で、息長く売れています。他店でも、是非置いていただければ。

 これらのコメントからも隠れヒットを発掘し、そしてそのノウハウを惜しみなく他の店員にも伝えたいという姿勢が垣間見えますよね。ちなみに、上山さんによると、常連のお客様から新鮮な農産物や海産物をいただくことも多いとか!!商売ではない部分で、どれだけ信頼されているか、そして愛されているかが分かるエピソードに心打たれました(涙)。またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。前々回の“2010年よく聴いた5枚”にはうっかり入れませんでしたが、のあのわの2ndアルバム『MAGICAL CIRCUS』がたまらなくクセになる作風ですよね。CDショップ大賞のラインナップでは、バンド系はなぜかインディーズが中心、しかも女性店員が多いせいか、男性バンド中心ですが、メジャーのレコード会社で、女性ボーカルのバンドも盛り上がってくるといいなと思います♪