第9回 フクロヤさん 二口店

全国のスゴいお店をご紹介してゆく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。今回は、富山県にあるフクロヤ(さん、以下敬称略)の二口店をご紹介いたします。

富山県というと、皆さんは何を想像されるでしょうか。実は私、米どころで中都市の多い新潟県と、金沢・香林坊周辺が100万人都市のように機能している石川県を足しげくチェックしたのに、その間の富山県は、蜃気楼とCDショップはあまり関係ないだろうから…、と後回しにしていました(ごめんなさい)。

しかし、実際に行ってみると、なんとも穏やかで日本人が求める日本的な街だと思いました。富山市内はライトレールやら市電やら路面電車がのどかに走っていて、また坂道も少ないので、春~秋はサイクリングにもピッタリです。ちなみに、富山市のレンタサイクルは無料(冬季は休止)なので、ドケチな関西人の私はそれで行くことを決めたほど(笑)。実際に、駅前から二口店へは、歌いながら自転車をこぎ15分ほどで到着。その間は、高い建物も人ごみもあまりなく、試しに詩吟(エロではありません)を大声でやっても迷惑にならないほどでした(都内でやると、○翼の街宣車と間違われます(笑)。)

このような穏やかな街にチェーン展開されているフクロヤですが、ひとたびお店に足を踏み入れ、ちょっと見渡しただけでも、そのレベルの高さにビビります。ジャニーズや女性アイドル系はリアルショップ御用達として、ロック、洋楽、クラシック、演歌など、どのジャンルにも目が行き届いているのです。さすが創業大正8年のフクロヤ、私はひれ伏すように、それでいて店内を舐めるようにチェックし始めたのでした(笑)。

まず、正面に推薦盤コーナーがあり、そのセレクトが決してチャート至上主義でない所に好感を持ちました。私が行った時は、スムルースが大きく展開されていたような。そして、奥には座って聞ける試聴コーナー、これも音楽ファンなら入り浸りしたくなります。

フクロヤ1
KAGEROとか、→Pia-no-jaC←とか、NIKIIEとか、蔡忠浩とか。お茶の間からしか音楽情報を得ないリスナーにも優しいお店だと分かります。

アイドル系や演歌系の展開は他店でも多いのですが、二口店で最もビビったのは、宝塚コーナーの充実ぶりでしょうか。東京宝塚劇場も近い山野楽器の銀座本店並みの充実度で、しかも貼られたポスター1枚1枚にも愛情を感じました。ジャニーズもそうですが、ネットで雑誌や新聞の切り貼りやVTRの再生をしたらこっぴどく怒られますが、店頭で同じことをしたらその場が華やかになるだけでなく、ファンからもメーカーからも喜ばれますよね。ここに、リアルショップの強みがあると思います。

フクロヤ2
コーナーの一角がヅカ尽くし! 商品ごとのコメントに、パネル、おまけに新聞の切り抜きまで! このスペースに入れば麗人たちがスッと手を差し伸べそうなほど。

また、クラシックの在庫も圧倒されます。近年、残念ながら閉店された隣県のヤマチクも相当に造詣が深く、またフクロヤ同様J-POPのネクストブレイクにも敏感だったので、この豪雪地帯と音楽偏差値(勝手に命名(笑))に相関関係があるのではと思ってしまいました。(あれ…、でも沖縄のアーティスト出現率は、全国平均を突出しているし、音楽が必要になるほど寒暑が際立っていればいいのか??すみません、中途半端な見解でした。(苦笑))

フクロヤ3
お店の奥にある試聴コーナー。試聴機No.2の「無限リピートで。」というレコメンド文もすごい説得力。

次に、アルバムチャートを見てみましょう。

アルバムTOP10 (2011/1/24~1/30)
順位 作品名 アーティスト名
1 SUPER GOOD, SUPER BAD 山下智久
2 Fantasia of Life Stripe flumpool
3 ガールズトーク KARA
4 ソメリスツ エイジアンシーズン
5 月と専制君主 佐野元春
6 KARA BEST 2007-2010 KARA
7 THE RED MAGIC AK-69
8 いきものばかり いきものがかり
9 奇蹟のニューヨーク・ライヴ ブラームス:交響曲第1番ハ短調 作品68 小澤征爾, サイトウ・キネン・オーケストラ
10 Remember the name Pay money To my Pain

注目は3位以下。この時期は豪雪でTV試聴が多かったのか連日騒動を取り上げられたKARAの強さが目立ち、さらに佐野元春のセルフカバーから、クラシックの小澤征爾、ハードなP.T.P. まで網羅されているなんて、ファースト・ゴロからフェンスぎりぎりのレフト・フライまで100本ノックされている気分です。二口店で1週間レジに立たせてもらうだけでも、もの凄く勉強になるはず。そして、4位は地元の音楽レーベル、オレンジヴォイスファクトリーの新人さんで、11月の発売からじわじわとロングヒットしているようです。なんとも伸びやかで響きのある声で納得。何かのキッカケで全国に広がるといいな~。小倉さんとか徳光さん(マングローブの方じゃないよ)とか好きそう。

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こちらは、クラシックコーナー。おそらく北陸1,2の品揃えでは。リスト先生も心なしか誇らしげ。

最後に、店長の丸山さんよりオススメの作品のコメントをいただきました。

キダ・タロー/『浪花のモーツァルト キダ・タローのほんまにすべて』

2010年生誕80周年、音楽活動60周年を迎える”浪花のモーツァルト”こと、キダ・タロー先生の作品集です。北原謙二さんの「ふるさとのはなしをしょう」、テレビのテーマソング「バラエティー生活笑百科」「プロポーズ大作戦」、CM曲「アサヒペン」また 富山でおなじみ野呂ひとみさんが歌う『日本海みそ』など、あれもこれもおなじみの100曲を収録。

フクロヤ5
aikoや安室ちゃんの前に立ちはだかるキダタロー・オブジェ。ボール紙に描かれた先生の似顔絵がメチャ上手!まさに至極です!!

ちなみに、これ関西ではバカ売れしていますが、関西以外の方が聞いても凄く面白いのです。それを、“富山の方なら『日本海みそ』からどうぞ”と、導入口を作って下さるところに感激! 勉強になります。またお邪魔させて下さい~♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品のヒットに携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。2月から調子こいて(笑)Twitterを始めました。とはいえ、別のアンケートで、「Twitterを始めてから、寝る時間が短くなった」という回答を多数見てしまったので、何でもドツボにハマりがちな私は、連載のお知らせにとどめたいと思います。偏った音楽知識が欲しい方は是非どうぞ(笑)♪