全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第14回は、東京都新宿区にあるムトウ楽器(さん、以下敬称略)をご紹介します。
ムトウ楽器は、高田馬場駅のロータリーの斜め向かいにあるお店で、私自身はジャズ・クラシックに詳しいお店として注目していました(ちなみに、クーポンや特典券利用で相当お得になるお店としても有名です)。そのムトウ楽器、創業はなんと1924年!! ヒトの平均寿命よりも長い年数にもさることながら、この間に流行する音楽も、主流となるメディアも大きく様変わりしてきたことを考えると、ただただ敬服せずにいられません。このお店のJ-POP、クラシック、ジャズ、演歌、洋楽、落語、キッズなど実に幅広いラインナップは、そのなが~い実績あってこそだと思います。
店頭奥から半地下に入ったジャズコーナー。ちなみに2Fはクラシックコーナー。共に、棚の色調もあって落ち着いて探せるようになっています。
そんなムトウ楽器ですが、昨年あたりから“TKB48シアター”として、積極的に展開されている点も興味深いお店です。勿論、大手チェーンでもAKBコーナーは年々拡大していますが、ここのプッシュぶりはもう半端ない状況なのです。例えてみると、そうですね…「もしも愛情のあるCDショップが、本気でAKBを売ったらどうなるか」を目の当たりにした感じでしょうか。店長の足立賢吾さんが自腹で購入したグッズなどをただディスプレイするだけでなく、自主的に衣装を作ってイベントを開催し、独自に“推しメン”を決めて選挙ポスターも作成、今では早稲田大学の学生さんも発売時に手伝って下さるとの事です。平原綾香のデビュー時同様に、早大の学生さんの自主的な応援も強力で素晴らしいですし、店長自らがメディアとなって発信していくという発想、本当に見事としか言いようがありません。
自前の衣装をまとった店長。当日はダンスも披露されるそうです。当初は、「店内に変わった人がいるんですけど…」という問合せがあったそうです(社長談)。
呆気に取られるほどゴージャスなAKBコーナー♪ネットでは映せない、雑誌でも載せられない、大切なものがきっとここにあるはずさ~~と思わず頭をよぎりました。(写真をクリック→拡大してご覧下さい!)
しかも、現代のアイドルのみならず、懐かしのアイドルコーナーも充実、ぶっちゃけ総出荷数100枚~200枚のCDも1枚は仕入れておられるのもよく見かけ、実際、オークションで既に高値取引されていても、ここで余裕を持って買わせていただいたことは少なくありません。また、演歌・歌謡曲やフォーク系アーティストの品揃えも良く、これはサラリーマンの乗降も多い高田馬場駅前という地の利も上手く活かしておられるそうです。近くの黄色い看板の古書店なんて、80年代に発売されたそれらの12曲収録ベストが定価3200円→2250円とかでセールされていますが、それならば20曲前後収録されて2000円前後で、リマスタリングもされた新品CDを買った方がよほどお買い得で、経済も活性化します。(CDの正しい値付けも出来ないくせに、やたらエコを前面に打ち出されても、モノに対する愛情が本当にあるのか疑問です。)
細かく黄色のインデックスがあるように、演歌の充実もムトウさんの魅力なのです。『エンカのチカラ』ほかコロムビアの演歌・歌謡曲の企画CDもかなり充実。
次に最新のシングルチャートを見てみましょう。
順位 | 作品名 | アーティスト名 |
---|---|---|
1 | さよなら傷だらけの日々よ | B’z |
2 | SCARLET KNIGHT | 水樹奈々 |
3 | POP MASTER | 水樹奈々 |
4 | まじですかスカ | モーニング娘。 |
5 | グレイテスト・ザ・ヒッツ 2011~2011 | マキシマム ザ ホルモン |
6 | 桜の木になろう | AKB48 |
7 | バンザイVenus | SKE48 |
8 | なぜか今日は | The Birthday |
9 | Silent Scream | GIRL NEXT DOOR |
10 | 週末Not yet | Not yet |
TOP3は全国的なチャートと変わらず。言い換えれば、どんなにブッ飛んだ(微笑)ディスプレイをしようと、メガヒットものはきちんと売れるということですよね。その意味で、経営陣の方には是非ともスタッフの方の自由な発想による自主キャンペーンを前向きに評価していただきたいです。そして、6位、7位、10位と“TKB48”(このお店のことです)で猛プッシュされているAKB関連商品がいずれもロングヒット中ですが、それと同時に4位に宿敵として紹介されることの多いモーニング娘。もランクイン。発売2週目でも4位、しかも通常盤がしっかりと売れるという点で、このお店がアイドル全般に愛情があることが分かります。
AKB48「桜の木になろう」キャンペーンでは“TKB48シアター”として電飾も自前で作成。ちなみに、仲俣汐里さんは今春早大に合格なさったそうです。本人もファンもこれを見て喜ぶだろうし、自然に口コミもされ…溢れ出る情熱が多くの人を動かすなんて、上手い、上手すぎます!
また、ホルモンやThe Birthdayの新作も売れているように、アイドル系とロック系って意外とファンが被っているんですよね。どちらもLIVE(生)ありきの存在(それゆえアクティブな年齢層も重なる)ということなのか、アイドル好きだと見くびられないようにロックで審美眼ならぬ“審曲眼”を磨いているのか、はたまたロックだけでは不足しがちな華やかさをアイドル的ルックスに求めているのか、詳しくは分かりませんが、双方の魅力を兼ね備えたSCANDALやAldiousがヒットしているのは事実ですし、CDショップ大賞も今後、より多面的に良い作品を広められればいいなと個人的に思います。最後に、足立店長よりオススメ作品のコメントをいただきました。
ゲイリー・ムーア / スティル・ゴット・ザ・ブルース
英国ロックシーンが生んだ孤高のギタリスト、ゲイリー・ムーア、作品が発表されたのは1990年、ちょうど大学入学のため上京した年でした。表題曲のむせび泣くようなギターを、夜一人、学生寮の一室で聴きながらビールをあける…。なんとなく大人な雰囲気に浸ったものです。
あれから20年。ジャケットに描かれたジミヘンに憧れる少年が、裏ジャケでゲイリー自身へと成長したように、僕自身も年を取りました。そして、今年2月、ゲイリー・ムーア突然の訃報…。
洋楽コーナーの奥手には、限定紙ジャケットコーナーも。邦楽の紙ジャケやカルト歌謡も結構あります。このオールジャンルっぷりが好き。
足立さんからは上のコメントと共に、「当店は大資本ではないので、日々闘っています。」という言葉に胸が熱くなりました。そうです、今CDショップの皆さんはエンタメ界全体の不況、大地震(特に東日本)、そしてリアルショップへの冷ややかな対応など何重にも闘っておられるのだとあらためて気づかされました。やれ「店頭の場所代」、やれ「コメント掲載料」と、なんでもカネカネカネの時代に、愛情1本で突き進んでおられるお店を経由してこそ、心の通ったヒットが生まれるのだと思いました。またお邪魔させてくださ~い♪