第18回 五番街さん

 全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第18回は、東京都豊島区池袋の東武百貨店プラザ館7Fにある五番街(さん、以下敬称略)をご紹介します。

 先日、CDはネット通販でしか買わないという人に、CDショップに行かない理由を尋ねたところ、「だって、あいつら俺より(音楽情報を)知らないんだもん。 そんなのネットでサクっと調べて、定価より安く買った方がラクっしょ。」と返されて、にこやかに話を聞きつつも(こういう時は本音を聞き出すことが大事)、「確かに自分が好きな情報だけなら簡単に手に入る時代だなぁ」とか「受動的に得た情報からでも素敵な音楽に出会えるのに・・・」とか「良い店や人にめぐり合えなかったんだなぁ」とか様々な思いが心をよぎりました。これからも微力ですが、リアルショップの魅力をリスナーの方々に、また他のショップの店員の方々に伝えられればと思います。


こちら正面向かって右側の入口。同じ階におもちゃ売場もあるので、キッズコーナーも充実です。それにしても、ドラちゃん、デカっ!!

 そんな「CDなんてどこで買っても同じ」とか「行ってもつまらない」とかホザいている(←ここは敢えて見下し(微笑))人は、一度ここ五番街に立ち寄って見ると面白いかも。五番街は、百貨店内のフロアの一角にあり、決して大型店ではありませんが、その中身がとっても濃ゆいのです。
 

 お店の特徴として「大人向け」だと認識している人は多いでしょうが、それ以上に驚くのが“完全常備主義”。つまり、多少マイナーなアーティストであっても、発売されている限り、売れているのもさほど売れていないのも仕入れるというスタンスなんです。私が最初に訪れて一番驚いたのが、EMIから発売されてきた洋楽コンピレーションのブランド『NOW』がなんと、‘93年の『NOW 1』からシリーズすべてがズラリと揃っていたこと。思わず「こ、これ、“NOW”と違って、“THEN”やんけ!」と、心の中で叫んでいました。コンピってベスト的なものを除けば発売から数ヶ月で急激に売上げが下がるので、たとえ人気ブランドでもどのCD店でも数作しか置かないのですが、明らかに補充している綺麗な棚にビビりました(※現在はメーカーの都合により廃盤の抜けがあります。)。確かに、売れないCDまで置くのは非効率的ですが、ここまで徹底していたら「この店ならきっとある!」という信頼を勝ち取れますよね。


おそらく店内の“さだまさしシェア”が日本一の五番街。ご本人のお墨付きで、毎回飛ぶように売れています。


中島みゆきの場合、PC配信で曲ごとにチョイスする人が多いせいか、最近はベスト盤と最新作しか置いてないお店が増えていますが、ここでは全アルバムが揃っています。とにかく“売っているもの、一通り”、これ五番街の基本。

 そして、次の特徴として、いつもソムリエさながらにスタッフさんが立っているので、お客様が、うろ覚えでも親切に探してもらえます。私は、色々なお店で店員さんを試すために(笑)「このCD、ないですか?」とよく質問しているのですが、「あぁ、棚になければないっすね~」(←さまぁ~ず・大竹の演技風に)と答えたりとか、すぐにパソコンに頼っては、例えば「2億4千万の瞳」を「2億6千万の瞳」(これ実話。でも、この方が事実に近い)とか「クリスマス・イブ」を「クリスマスイブ」とか、お客さまの間違ったタイトルやナカグロの有無がわからず検索しきれない店員とかいて、対応が悪い時は、二度とこんな店来るもんか!と、わざと宇多田ヒカルの棚に倉木麻衣のCDを差し込んで店を出たりしていましたが(笑)、五番街ではそんなことは一切ありません。どの店員さんもテキパキしていて、特に、白髪の紳士・永田信夫さんは、この方こそ生き字引ではないかと思うほど、演歌・歌謡曲やフォーク系に非常に強いので驚きます。(肩ごしにいつもお客さんとの会話を聞いては勉強しています(笑)。)
 
 しかも、五番街にないようなCDを尋ねられた時は、「あぁ、それならば(連絡通路を渡った隣のビルにある)6階のHMVをご案内します」といった説明を聞いたことがあり、こういう場合、何日かかろうがお取り寄せを迫る店員が多いなか、別のお店を紹介するとは、なんてお客様目線なんだと感心いたしました。“損して得取れ”の実演講習かと思ったほどです。ちなみに、五番街には購入者を対象に、「おたのしみカード」なる2000円の商品お取替券プレゼントの抽選券があり、これが意外と当選するので、DVDやDVD付CDが定価でも、ポイントと金券足せばかなりお得に感じます。この辺の感覚も、前述の事柄に通じるものがありますよね。


百貨店内という場所柄、韓流&K-POPはかなり早期から展開。「東方神起、こちらです」のメガ文字もいい感じ。


紀伊国屋書店の名画DVD。このレーベルって気になるタイトルが多く、五番街のイメージにもピッタリですね。

 さらに、大人のフォーク、J-POP、韓流、映画などが充実しているお店は全国にもありますが、ここの特徴は、自社レーベルを含むライトなクラシック系の作品も非常に充実しているということでしょうか。クラシック系を徹底して置いている専門店や、はたまたライト向けに『イマージュ』とか『ベスト100』とか数作だけ置いてあるというお店は多いのですが、ライト向けが大量にある、というのはかなり珍しいと思います。その日の気分に合わせてあれこれ環境音楽(リラクゼーションミュージック)を楽しめるのがいいなと思いました。


こちら、五番街の名物CDといってもいいほど、よく売れているヒーリング系。「大幅節電」なんて旬で切実な話題を持ってこられたら、買うしかありません。商売お上手!


鉄道コーナーはCDとDVDの両輪で。そういえば、私の友人でも音楽マニアと鉄道コレクターの相関って非常に高いです。ネットの注文でも即日無料発送が少なそうなラインナップなのも素晴らしすぎ!

 次に、最近のアルバムチャートを見てみましょう。

五番街 アルバムTOP10(2011/6/6~6/12)
順位 作品名 アーティスト名
1 ここにいたこと AKB48
2 JAPANESE SINGER 平井堅
3 サウザンズ・オブ・スマイルズ Vol.3 オムニバス
4 GIRLS’ GENERATION 少女時代
5 soiree 高橋真梨子
6 アンダルシア
~イル・ディーヴォ・ラヴ・ソングス
イル・ディーヴォ
7 GOLDEN☆BEST キャンディーズ
8 ボーン・ディス・ウェイ レディー・ガガ
9 VOCALIST & BALLADE BEST 徳永英明
10 演歌名曲コレクション14
~あの娘と野菊と渡し舟~
氷川きよし

 
 全国チャートでは10倍以上離れているAKB48と平井堅が、ここでは僅差で売れているのも特長ですが、さらに特筆すべきはアジア各国の支援活動を続けているフォークシンガーの田代ともやさんが、呼びかけて作った、環境メッセージ・アルバムが、3位にランクインしていること。今の時代だからこそ、より心に響くのだと思います。その他も、演歌(カセットテープの陳列も綺麗で探しやすい!)からクラシック、ナツメロまで幅広くランクインしていて、「最近は何を聞けばいいのか分からない」という人は、とりあえず店頭を覗くと良いと思います。ちなみに、キッズ向けの絵本やアイドルものも多いので、親子で訪れるのも大有り。最後に、販売促進担当の石黒正彦さんにオススメの1作をご紹介いただきましょう。


演歌歌手の岩本公水(いわもと・くみ、と読みます。この際覚えましょう)さんの陶芸作品も展示。確か長期療養されていた時に始められて、はや10年以上の腕前です。…と、もはや何を置いても許される五番街!


『熟恋歌』を企画された富澤一誠さんが総監修されている大人の音楽 キャンペーンのJ-POP商品もご覧の通り充実。石黒さんが私に気を遣って『PORTRAIT BLUE』と『PORTRAIT RED』も並べて下さっています(汗)。

せきぐちゆき「素顔~愛すべき女たち~」

 「痛い 痛い 痛い 心がーー」の強烈なフレーズではじまるせきぐちさんの久々のフルアルバム。シングル「道」や地元の栃木を歌った『うたうたの唄2』のやさしく癒されるイメージはこのアルバムには少ないかも知れませんが、ロックでダークで魂ゆさぶられる楽曲は原点に戻ったともいえる、おすすめの一枚です!冒頭の「化粧」はYouTubeで見ることができます。夢に出てきそうなくらいの怖さもありますが(笑)ぜひ、せきぐちワールド楽しんで見てください。


常設されているせきぐちゆきコーナー。この明るい笑顔と、オカルトチックなジャケットのギャップが強烈。


こ、こんなに並ぶと圧巻、というか壮絶(汗)。でも、本当に意欲作なので、似たような“そこそこの”J-POPに飽きた人は聴くべし。

 私も、彼女の作品で解説を書いたことがありますが(詳しくは、ココをご参照下さい)、とにかく明るさと暗さのコントラストが半端なく大きいので驚きます。でも、それだけ実直な人とも思えます。ちなみに、LIVEのMCと歌のギャップも同様で、そういう点からも中島みゆきファンにも椎名林檎ファンにもオススメ。普通じゃない(微笑)五番街だからこそ、彼女の良さがアピールできるのでしょう!またお邪魔させて下さ~い♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。コンピ史上初(大げさ(笑))の“オリジナル歌手によるセルフカバー集”の男性編『PORTRAIT BLUE』  女性編『PORTRAIT RED』発売中。やや伸び悩んでいますが、大人向けの落ち着いたアレンジやボーカルばかりなので、オリジナル至上主義の人でも楽しめると思います。『RED』で個人的オススメは、天才・塩谷哲ピアノ演奏による今井美樹「PRIDE」、本格ラテンに振り切った中森明菜「ミ・アモーレ」、バラードだと歌詞がさらに沁みる岡本真夜「TOMORROW」あたり。この機会によろしければどうぞ♪