第19回 勝木書店SuperKaBoS新二の宮店さん、

 全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第19回は、福井県福井市にある勝木書店SuperKaBoS新二の宮店(さん、以下敬称略)をご紹介します。

 ここ福井県は、親子孫3世代で同居されている家庭が多いということや、保育園が充実しているということから、夫婦共働き率が全国一だとよく言われますが、実際に福井市内のいろんなお店を巡っていると、若いママさん世代のスタッフの方をよく見かけます。そして、そのお蔭なのか、CDショップも明るくて掃除が行き届いている所が多いようにも感じました。確かに、男性店員だけだと、棚がきちんと整備されてラインナップも充実しているのに、どこか雑然としちゃうのかも・・・。(でも、そんな雰囲気がお宝発掘のワクワク感を演出するので、それはそれで良い場合もありますよね♪)


1Fが書籍全般、2FがCD、DVD、GAME、コミックなど、よりエンタメに特化した造りに。この階段の途中に早期予約特典(ポイント還元率が15%!)がデカデカと書いてあり、ついつい上ってみたくなります。(エレベーターもあります。)


隣に中古CDコーナーが併設されていることもあり、このDVDセールも目立っています。

 勝木書店は、そんな女性スタッフが多く、清潔なイメージの複合チェーン店なのですが、この新二の宮店は、本、ゲームに負けじとばかりCDもかなり充実していて面白い作りとなっています。複合店というと、一般に強力な新譜と、それ以外の旧譜との落差が激しいお店が多いですよね。売れないものを1枚売るよりも、100枚売れるものを110枚、120枚と売った方が、労力も少なくて済むし、利益も大きい。複合店ゆえに、CDだけにかまってられないし、利益面でその最大効率を求められるはずなのに、このお店はCDにも愛情があるのがお店のそこかしこから感じられます。(私がタワーレコードを好きな最大の理由って、効率だけじゃない所ですので。あ、福井県内にはタワレコはありませんので、おとなしく勝木書店新二の宮店へどうぞ♪)


クラシック&ジャズ・コーナー。マニア向けからライト向けまで幅広いラインナップ!


しかもこの座るスペース。お店の広さがムダになっていないのがお見事!

 まず、「これ、いいな~」と思ったのが、奥手にあるクラシック&ジャズのコーナー。最近は100曲入りとかヒーリングとかお手軽な作品のみ仕入れるお店も多いですが、こちらはコアなものまでかなり充実のラインナップです。しかも、ゆっくり座れるスペースがあるのもいい!私が訪れたのも平日の昼間でしたが、いかにも音楽通なシニア層の殿方お二人が、CDジャケットをくつろぎながら見比べていらっしゃいました。
 
 次に、洋楽を中心とした紙ジャケット・コーナーも充実。福井県の人口は約80万人、福井市は約27万人・・・とは思えないほど限定盤がザックザク。こちらは、ミドル世代の洋楽通のみならず、若い世代の男性にも人気だそうです。もし、売れ残ってしまったら、併設されている中古コーナーでバーゲンしちゃえばいい、みたいな腹積もりがあるのかどうか分かりませんが、とにかく、まずは広い選択肢をお客様に見せる、というスタンスがなんとも素晴らしい。紙ジャケは、ビートルズとクイーンだけじゃないんだぞ、と。

洋楽、邦楽の紙ジャケが大量にあるこのコーナー。見ているだけでも目の保養になります!

 さらに、個人的に最も驚いたのが、“永遠の名盤コーナー”と称するスペースで、こちらにカルト歌謡や、C級も含めたアイドル歌謡、紙ジャケ多数のニューミュージックなど、レア・タイトルが山盛りになっています。“永遠の名盤”と書かれると、オフコースとか、山口百恵とか、YMOとか置かれていそうで、ヒネクレ者の私などはスルーしがちなんですが、ここでは、深津絵里のアイドル時代のCD(消費税3%時代のパッケージ!)や、中森明菜でも『Regeneration』シリーズなるコアなファンでもあまり持っていないようなCDが未開封で陳列されていて(どちらもコレクター・アイテムなのに定価販売)、この何気なさにチビりそうになりました。ただ、カルト歌謡に関しては、ジャケットが素敵で仕入れていても、生産中止のものが多く補充できなくて残念ということです。こういった愛あるお店の声、メーカーの方も耳を傾けていただきたいです。


こちら、アイドル、ニュー・ミュージックなどの永遠の名盤コーナー。実は製造中止のタイトルがそこかしこに平然と並んでいたりします。半径200km圏内の歌謡マニアは一度訪れるべし!


こちらカヴァー・コーナー。ちなみに、大人向けのセルフカバー企画『PORTRAIT~SELF COVER BEST』もございます。実はこの下にカルト歌謡がすごいことになっているので、詳しくは店頭で!

 次に、最近のシングル・チャートを見てみましょう。

勝木書店SuperKaBoS新二の宮店 シングルTOP10(2011/6/20~6/26)
順位 作品名 アーティスト名
1 Flower 前田敦子
2 花唄 GReeeeN
3 マル・マル・モリ・モリ! 薫と友樹、たまにムック。
4 DESIRE 加藤ミリヤ
5 soiree 原田悠里
6 Everyday、カチューシャ AKB48
7 こだま ケツメイシ
8 ボーン・ディス・ウェイ レディー・ガガ
9 DIFFERENT SE Dir en grey
10 メルシールーe.p ねごと

 1位は、あぜ道をゆっくり四駆で走るような不安定な歌唱が特長でもある前田敦子で、2位以下も一見、変わった感じがなさそうですが、GReeeeNと加藤ミリヤが共にTOP5入りしているのは、都内では殆どないかも。それでいて、演歌の原田悠里も、ガガ様のアルバムのみならずシングルも、もはやビジュアル系では括れないほど深遠なDir en greyも、フルアルバムでの大ブレイク必至のねごともTOP10入りしていて、音楽の面白さがオールジャンルから伝わってきます!握手やハイタッチの特典を除けば、注目されている音楽って見えてくるもんですね。「今、シングルなんて終わってる」とお嘆きのレコード・マンをよく見かけますが、こういうお店の現場を何店か回れば自ずとお客様の声が聞こえてくると思いました。最後に、販売促進担当の丸山直子さんに地元コーナーからとっておきの1作をご紹介いただきましょう。

ヒナタカコ 花筐 -ハナガタミ-
 
 地元福井県出身のピアノ弾き語りシンガーソングライター、ヒナタカコさんの2ndアルバム。

 当店でもインストアライブを開催していただき、CDなど全く興味のない書籍目当ての年配のお客様にも感銘を与えていました。実際は福井弁のまったり天然お姉さんなのですが、いざマイクを持つと鳥肌モノの迫力ある歌声とその表現力に心奪われること間違いなし。なつかしい情景が思い浮かぶようなやわらかい唄から、涙を誘う報われない愛の楽曲まで、癒し効果も備えたアルバムです。


お店の中でもPOPの数が圧倒的に多いヒナタカコ特設コーナー。こういうのってリアルショップの味が出ていますね。


福井といえば大御所・五木ひろし!そこに、今回のヒナタカコも追加され、このオールジャンルっぷりが、このお店の良さを端的に表わしています。

 ヒナタカコさんは、HYの仲宗根泉や休業中の絢香にも通ずるような説得力のある美声ですね!インディーズのアーティストでば、ロックが圧倒的に強いですが、こういった女性SSWのブレイクも大いに期待したいです。こうした素敵なアーティストをプッシュしている新二ノ宮店は、やっぱり素敵!またお邪魔させて下さ~い♪

 

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。最近は、SING LIKE TALKING『Empowerment』の力強さで心を元気づけたり、面影ラッキーホール『typical affair』のあまりに悲惨な女性像で心をドロドロにしたり(笑)しています。自分をかき乱すほどの衝撃って、やっぱり私には音楽が一番です!