第22回 金澤文苑堂TSUTAYA金沢店さん

 全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第22回は、石川県金沢市の金澤文苑堂TSUTAYA金沢店(さん、以下同チェーンは「文苑堂TSUTAYA」、同店は「TSUTAYA金沢店」と呼びます)をご紹介します。


CDセルや書籍、ステーショナリーコーナーのある1Fと、巨大なレンタルコーナーと併設されたおやつコーナーの2Fをつなぐ大階段もこのように有効利用されています。ちなみに24時間営業は昨秋から始まったそうです。


おもちゃコーナーも豊富で、お揃いで可愛い水玉兄弟もご満悦。やっぱりお店の賑わいには、子供の捕獲(笑)が重要です!

 金沢市と言えば、大正3年に創業した老舗のヤマチクが拠点としていた所で、残念ながら2009年に倒産となり、全国行脚する中でも大好きだったお店だっただけに(その辺の経緯は、お時間があればコチラをお読み下さい。)、私もショックでした。しかし、このヤマチクなき後も金沢の音楽文化を支えているお店の一つが、文苑堂TSUTAYAです。ヒップホップ~レゲエ系のCDの都道府県別データを見ると、石川県のシェアが通常よりも突出していることが度々あり、「えぇ~、兼六園で“Yo~Yo~”とかやっちゃうの?」などと、物凄い浅はかな先入観を持っていましたが、特に金沢周辺って、整備された広い国道や県道が多く見晴らしも良く、それでいて、北陸地方ってフェーン現象で、太平洋側よりも暑くなることしょっちゅうあるんですよね!そんな環境で、この文苑堂TSUTAYAがロードサイドにドカーン!とあれば、もう買うっきゃないっしょ!という図式なのだと思います。


HAN-KUNやGOKIGEN SOUNDの取り扱いも、首都圏のお店に比べてかなり優先度の高い取り扱い。音は湘南っぽいですが、金沢で聞くのも爽快です♪


こちらも、古都・金沢のイメージを覆すほど元気なレゲエ・コーナー。この暖色&ブラックを使い分けるセンス、勉強になります!ここで人気は“ガチ×アゲ×レゲエ×ミックス”CD。CDショップに関わる人たちは、「ガチ、アガりますよね!」とか普段からこの言葉に慣れ親しむべし。

 こちらTSUTAYA金沢店は、金沢駅を中心街から真逆の方向、北西に2kmほど進んだところにある巨大複合店で、お店の北側にある高速道路の向かい側にはヤマダ電機の超大型店があり、こちらも過剰に仕入れた商品を超特価でワゴンセールをやっている大胆なお店なんですが、音楽ファンが足繁く通いたくなるのは、やはりTSUTAYA金沢店でしょう。正直言いますと、私、洋楽については、オリコンのいわゆる左ページ(TOP50)に入るようなものしか知らないレベルなのですが、こちらで試聴体制が取られているレゲエやヒップホップ、クラブ系は、オリコンで200位前後のものがザラにあるのです。それが、加藤ミリヤやJUJUクラスと肩を並べているのですから驚きます。それでいて、洋楽でも、日本人に馴染むようなものをセレクトしていて、私が見学している時も、軽自動車に乗って(←ここ重要)、会社帰りに気軽に立ち寄ったであろう、普通のキレイなお嬢さんがレゲエ・ミックスのCDを颯爽と買っていらっしゃいました。


ネットでは取り扱いの難しいジャニーズ勢もこの通り大きく出ているのがリアルショップの良いところ。しかも、「げんきのRED」と「しあわせのYELLOW」の2種類を選べるのもリアルショップならでは。


派生ユニットのCDや関連書籍、写真集も完備していて非常に丁寧なAKBコーナー。とりわけ注目は、一人ずつ切り抜いたメンバーの写真コーナー!これ、手が込んでいます。忙しいお店なので、きっと夜なべの成果だと思われ(感涙)。

 そして、上のPOPを見ても分かりますが、TSUTAYA金沢店の特長と言えば(文苑堂TSUTAYA全体の特長かもしれませんが)、アーティスト写真をリアルに切り取ってパネル展示されている点です。キレイにくり抜くことも出来ると思うのですが、このハンドメイド感がやけに目につきます。お店にCDを探しにやってくるということは、異国のサイトでサクサクっと無料(爆)でダウンロードしようというのではなく、温もりとか情熱とか何かしら人間味のあるものに惹かれる人だと思うのです。ですから、この切抜き作戦は上手いな~と、私自身マンマと引っかかり(笑)、ここに1時間近く長居してしまいました。


大人向けのCDも豊富なのが、このお店の良いところ。達郎さんも、ご覧の通りモヤモヤと切り取られています。


エスカレーター側面を独占する『STAR WARS』初ブルーレイ化の予約コーナー。お客様の考えを先回りして、あからさまにネット通販をライバル視したようなプライスオフっぷり。 

 ここまでを見ると、ヤンキー系やアイドル系など若者向けの作品が多いように思われるかもしれませんが、こちらは大人向けの作品もTSUTAYAの中ではかなり多い方だと思いました。山下達郎や久保田利伸など旬の作品、TSUTAYA全店でキャンペーンされている999円作品、演歌・歌謡曲系はアルバムも多数など、メーカーにより充実度にややバラつきはあるものの、総じて大人が楽しめる良いお店です。

 最新のシングル・チャートを見てみましょう。

TSUTAYA 金沢店 シングルTOP10(2011/8/6~8/12)
順位 作品名 アーティスト名
1 Everybody Go Kis-My-Ft2
2 BEAUTIFUL DAYS HAN-KUN
3 Cry DiVA
4 メキ☆ラブ 超新星
5 君だけは離さない 超新星
6 Hello ナオト・インティライミ
7 マル・マル・モリ・モリ! 薫と友樹、たまにムック。
8 君が辻 サーターアンダギー
9 リトルダンサー SPEED
10 Independence CHEMISTRY

 TOP5は、ジャニーズ、AKB、K-POPが独占かと思いきや2位にHAN-KUNが殴りこみ(笑)!ランキングを揺るがすほどの店頭POP、素敵です!ちなみに一般的な購入者アンケートでも、「店頭コーナーを見て、試聴して買った」という回答は非常に多いのです。局所的ヒットは、まずは店頭の力の入れ具合が重要ということでしょう。ナオト・インティライミは、着うたではTOP10の常連で、CDの全国チャートではTOP20クラスですが、ここ金沢店では「マル・モリ」並みに好調で6位、彼も店頭の試聴や推薦文で伸びるタイプですよね。また、SPEEDやCHEMISTRYなどミリオン・ヒット時代から一段落着いたアーティストをしっかりと売り続ける姿勢にも好感が持てます。それだけ、アラサー以上のリスナーに優しいということでしょうね。最後に、同店のCD担当チーフ、山田慶太さんにオススメをご紹介いただきましょう。

シェネル 『ラブ・ソングス』

 新世代のR&B歌姫がJ-POPの名曲を“せつなキュン”カバー!着うた1位で話題の大ヒット「ベイビー・アイラブユー」(TEE)をはじめ、「SAKURA」(いきものがかり)、「Sunshine Girl」(moumoon)、「Everything」(MISIA)、「For You」(lecca)等、最新のJ-POPから永遠の名曲まで、洋楽・邦楽の境界を越えたカバー・コレクションです!

 ちなみに、同店では洋楽部門ダントツの1位。なお、金澤文苑堂のサイトではCDに限らず、書籍、映画、DVDなどエンタメ全般においての注目作をスタッフの方が分かり易く説明されていて、こちらも勉強になります。またお邪魔させて下さ~い♪ 

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。70年代の記憶の実力派アイドル、伊藤咲子『COMPLETE BOX』が8/31に発売になります。実は私自身、そんなに詳しいファンではなく、まだ業界に入っていなかった20年前、ある親友が強制的に(笑)大プッシュしていたことから耳タコになった知識をもとに、企画・監修したのでした。ご本人取材でも「あらぁ~、よくそんな事を知っていますね!」と驚かれるほどで、内心「いえ、知っていたのは私ではありません・・・」と恐縮しまくりでした。40年も生きていると、意外な所から人生のご褒美があるものですね♪