第24回 ミヤコ塚口店さん

全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第24回は、兵庫県尼崎市のミヤコ塚口店(さん、以下敬称略)をご紹介します。


この週は、AAAと東方神起が猛プッシュされていました。それでいて、奥の方では、楽器で出来た手のジャケットが印象的な山下達郎が1か月以上も大きく展開。ロングセラーの秘訣、ここにあり!


塚口店は、お店の大半が通路に面しており、境界もこの通りガラス張りでとっても明るいです。ちなみに、9月中は『STAR WARS』の早期予約で25%オフ!さすが、大阪本社の会社は商売上手!

 最近、アルバムの強力作品が少なくて、ヒット・チャートでも上位の売り上げ枚数の低さにドキドキします。私は、この要因が、シングルの売れるアーティスト、もっと言うとファンの子が1人で何枚も買うアイドルに注力しすぎて、アルバムの売れるアーティストを音楽業界全体で育ててこなかったことにあると思うんですよね。もちろん、アイドルの中でもアルバムも売れるスター達は、楽曲を浸透させているから良いのですが、それ以外はイベントや初回盤の種類数だけで売り上げが決まっているような状態で、音が聞こえてきませんもん。やっぱり、これを打開する為には、音楽を発信しているCDショップって重要だと思うのです。CD店で作品がプッシュされていたら目的以外でも良いな~と思えば買いますもんね。

 さて、そんな激変する状況でも、全ジャンルのオススメ作品が網羅されている関西の老舗、ミヤコ。ずっと昔から、総じてどの音楽ジャンルも、またどの年代向けもバランスよく置かれているイメージがあります。これって、言うのは簡単だけど、いざ実行しようとしたらかなりの商品知識が必要ですし、やっぱりこれが出来るのは、伝説のバイヤーであり、現在は店舗の統括をされている福嶋恵介さんの存在が大きいような気がします。


Hey!Say!JUMPと加藤ミリヤとの間にある細長いスペースの活用(EXILE)にも、匠の技が光ります。


近年は映像商品もこの通り、派手に展開。ブルーの棚はブルーレイを意識させるための工夫でしょうね♪


そしてこちらは、業界での通称「どれ3」コーナー。細かいツッコミですが、「いまだけ」ではなく、「いつも」3000円で人気のコーナーです。

 そして、ミヤコ塚口店は、阪急神戸線の塚口駅南口・さんさんタウン3号館にあります。北口は昔ながらの“もやもや”な街で、ある意味驚き(でも、『もやもやさまぁ~ず』ファンの私は行ってみたい)ですが、南口は、1Fのダイエーに自転車で通ってくるオバちゃんでごった返しています。

 そんなオバちゃんが元気な場所柄か、バンドやヒップホップ系は、ちょっと潜んでいますが(でも、それでも、通常の棚にそこそこ置いてあるのがミヤコ・ブランド)、ジャニーズやK-POPの人気が非常に高いのが店頭のプッシュ具合からも分かります。

 さらに、これは意外だったのですが、音楽に強いだけでなく、近年は映像商品もかなりプッシュされているようで、強力作品は早期予約で割引、あるいはポイント加算、セール品のコーナーも拡充されていて、モノが売れない時代をただ嘆くのではなく、“だったら、どうするのか?”という打開策が読み取れて、本当に頭が下がります。私が行った時も「3,000円お買い上げごとに500円のクーポン券進呈」キャンペーン中で、この還元率、ハンパないと思いませんか?他にも、20%offのワゴンが常設されていたり、レアな初回盤はちゃんと目立たせていたり、とそこかしこにお客様目線をひしひしと感じます。ちなみに、このさんさんタウンは、昭和後期に出来たこともあり、施設の一部が老朽化していて、ミヤコと同じフロアながらテナントの入っていないスペースもあるので、そういった危機感を、よりリアルに持っておられるのかもしれませんね。でも、このミヤコのスペースは、まさに音楽の都のごとく、キラキラっと輝いています。


桑田佳祐、鈴木雅之、小田和正、アンジェラ・アキ・・・下のダイエーを思いっきり意識した展開が見事に奏功しています。ヒットチャートよりもお客様を見ているのがよく分かる。


オムニバスは、ソニーとユニバーサルの寡占状態。・・・と思いきや、ヒゲの女性が愛らしいトイズの『Sunshine!~J-POP COVER in ELECTRO/R&B 』も。これ、関西でよく見かけました。あと、コーナー下部の『男と女がクロスする。』は、私めが企画した『COVER』です。オバちゃんに大人気の作品なので、大正解です(笑)。

そして、ダイエーの上にあるという条件からか、ベテラン・アーティストを多数、しかも期間も長く展開されているのも大きな特長です。「フォーク、ニューミュージック、昭和のアイドル」コーナーも、「一般J-POP」とほぼ同じスペースで展開されているので、テレビやラジオでうろ覚えで聞いたものを、店員さんに尋ねてもかなりの高確率で見つかると思います。これも、リアルショップならではの強みですよね。

最新のアルバム・チャートを見てみましょう。

ミヤコ 塚口店 アルバムTOP10(2011/9/19~9/25)
順位 作品名 アーティスト名
1 SMAP AID SMAP
2 # AAABEST AAA
3 メリは外泊中 (サウンドトラック)
4 どーも 小田和正
5 <ラブ・ソングス/td>

シェネル
6 Rockin’ the World SPYAIR
7 かりゆし58ベスト かりゆし58
8 Ray Of Hope 山下達郎
9 GO BREAKERZ
10 アイム・ウィズ・ユー レッド・ホット・チリ・ペッパーズ

 3位に、グン様主演の『メリは外泊中』のサウンドトラック!オリコンでもTOP50前後を何十週とうろうろしていますが、やっぱりこういうお店がしっかりと支えていたのですね。そして、小田和正は発売から5か月が経とうとしていますが、まだ4位!木曜10時ドラマに主題歌が使われたことも大きいのでしょう。さらに、SPYAIRのブレイクぶりも見られ、バランスの良さはチャートからも一目瞭然ですね。
最後に、店舗エリアマネージャー兼塚口店店長の正木達也さんにオススメ作をご紹介いただきましょう。

長渕剛/ シングル『TRY AGAIN for JAPAN』

 あの名曲「TRY AGAIN」が日本中を元気にしてくれる!!

 以前からアニキは被災地をとても心配していて、現地にも何度も足を運んでいる。みんなを想う気持ちが、復興支援ソングとして蘇った!!前向きに、出来る限り明るく、笑いのたえない日本にしよう!
カップリングの「お家へかえろう2011」も(以前NHK紅白でも歌い、波紋を呼んだが)メッセージ性の強い楽曲で、もう一度日本という国を立て直したいといった意気込みが感じられる素晴らしいメッセージソングです。


そして予約コーナーもカラフルで素晴らしい!これ、見ているだけで幸せな気分になれます♪


ミヤコでは「韓流」のみならず、既に「華流」までフォロー!こちらもカラフルで、顔と名前を覚えるのに頼りになります~。

 どうですか?このオススメ文も、熱がこもっていて良いですよね。“アニキ”って呼んじゃう所にも好感が持てます。そして、その下の告知コーナーも、カラフルで、なんだか楽しみたいがために予約コーナーに通えそうです。そして、その情報の近くに、ポイントやポスターなどの予約特典が書いてある訳ですから、主婦層なら尚更飛びつくはず!(笑) やっぱり、マーケティングは倹約と人情に長けている関西のオバちゃんに学ぶのが一番かもしれませんね。またお邪魔させて下さ~い♪

 

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。先日、あまりに声の存在感が圧倒的で店頭で試聴買いをしました。その人の名前は、女性シンガーソングライターのナキミソさん。買ってからレーベルを見たら、グッド・ミュージックで知られるmona records。帯を見たら、映画『モテキ』にも出ていらっしゃるとか。小谷美紗子や浜田真理子、タテテカコあたりが好きな方は是非お聞きください♪