第29回 中央図書TSUTAYA桑野店さん

全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第29回は、福島県郡山市の中央図書TSUTAYA桑野店(さん、以下敬称を略し、「TSUTAYA桑野店」と呼びます)をご紹介します。

 前回が秋田県、そして今回が福島県と東北が続いておりますが、東北贔屓になることをどうぞお許しください。実際に東北を訪問してみると、日本海沿岸の秋田県や山形県のお店でも壁に大きなヒビが入っていたり、福島県内の原発から50km以上離れた飲食店でも「“人災”以降、客足が途絶えてましたので閉店することになりました」なんて貼り紙があったりを目撃したので、出来る範囲で応援したいなと思ったのです。(次回以降はまた他の地域にもお邪魔します。)


こちら、桑野店名物でもある大画面×ピックアップCDの特集コーナー。地元小学生のボーゼンと立ちすくんでしまう姿、ナイスです!


レディー・ガガに「先着でポスターあげちゃうわよ~」って勝手(笑)に喋らせているのがベリーナイス!それにしても、ガガ様は、ジャケットを並べるだけでも七変化が楽しめるのですね。日本のアーティストも、見習って欲しいです。

 そして、今回訪問した郡山市も、以前に比べたらオバちゃんの観光客が随分と減っていたような気がしました。でも、駅や観光案内所の方たちは、老若男女問わず、これまで通りに働いていらっしゃるようでした(もちろん、若い女性も元気に働いていらっしゃいます!)。

 郡山駅から西北西に4kmほど離れた場所にあるこちら桑野店は、書店とカフェとTSUTAYAが複合し、またそのTSUTAYAもレンタル&中古がかなり精力的で、そういったお店は一般的にセルの比重が下がってしまうせいか、CD販売に消極的なお店も少なくないのですが、ドッコイ、こちら桑野店は、中古よりもむしろ新品コーナーが元気!

 最も目を魅くのが、この複数のビジョン(家庭と比べれば十分の大画面)をドドドーンと並べて、注目CDを並べている所でしょうか。写真では、仙台発のアイドルユニット、Dorothy Little Happyが大きく飾られていますが、他にも地元で活動する男性シンガーソングライター、ave(エイブ)など、AKB48や芦田愛菜ちゃんと同格に大画面で紹介されていて、もし自分が小学生だったら、「あ、これはヒット作だからちゃんと聴かなきゃ」と思うはず。だって、店頭で大きく紹介されていたら“何らかの基準では評価されている人”という感じがするじゃないですか。こうやって地元愛を確実に刷り込むって重要ですよね。」


人気シリーズ『Perfect!』の最新盤と、TSUTAYA限定の“紙アゲ”(!)ミックスCDの特集。桑野店は、全般に“2枚買い”を意識した作りになっています。


R&BシンガーのSAYのサイン入りポスター。確かに、このお店の応援を見たら、“ありがとうございます!!”って【!】を2つ付けたくなる気持ち分かります。他に、DJ PMXのサインも有り。


仙台を中心に活躍するDJ ASARI推薦コーナー。この可愛いリスちゃん、トレードマークなんですね~。それに気付かせるPOPがナイス!集めたくなりそう♪


クラシック・コーナーに、オルゴールとかヒーリングとかが面陳されているのも、このお店のジャスティス!

 そして、やっぱりTSUTAYAの郊外店と言えば、欠かせないのがR&B、ヒップホップ、レゲエといった作品。この辺のヒット感は、山手線付近でウロウロしても全く把握できません。私自身も、こうした現場の空気から勉強させてもらっています。駅から歩いたら40分くらいかかるけれど、空気も良いから、ちょっと長めの散歩程度で来れるなぁという、車なら5分程度のこの場所でも、東北地方では“郊外のお店”として駐車場がいっぱいになる点も、都心部とは感覚が異なります。また、クラシック・コーナーもコアなものよりも女性に人気がありそうな、生活に溶け込むタイプの作品が多く、これを見て“郷に入って郷に従え”という諺を思い起こしました。


幅広い年代に人気再燃している久保田も激オシ中。隣に三浦大知くんを置くのもナイス!彼のCDが初TOP10入りしたのも、こうしたお店のお蔭だと思います♪


大ヒットしているKARAの隣に、『THE BEST OF K-POPカバー伝説』を陳列する大胆さ!カバーを肯定的に捉えているお客様目線あっての展開だと思います。


特集の棚は、TSUTAYA特性を活かしてR&B猛プッシュですが、こういった試聴コーナーでは、斉藤和義さんとかback number、ONE OK ROCKとロングヒットで好評な作品をきちんと推薦されています。

 次に、桑野店をぐるりと見渡して思ったのが、2枚を併せて買ってもらおうと提案する作品が絶妙だということ。例えば、久保田利伸を買っている人は、80年代から活躍してきたベテラン好きか、テレビで発売を知ったベスト・ヒット好き、あるいはMISIAやJUJUといった実力派ボーカル・ファンだと思うんですよ。一般のお客様は、多分、隣に置いてある三浦大知くんの認知度もかなり少ないだろうけど、彼のリズム感やキレのあるボーカルは、久保田ファンならきっと気に入るだろうし、そんな久保田の隣にあるのなら、試しに買ってみようかなと思う人も少なくないと思います。ちなみに、この組み合わせはAmazonの上位にもないし、言われてみれば納得するけれど、ちょっと予想外という、いわばコロンブスの卵型だと思います。だから尚更に素晴らしい!

 次に、アルバム・チャートを見てみます。

TSUTAYA桑野店シングルTOP10(2011/11/21~11/27)
順位 作品名 アーティスト名
1 あなたへ/Ooo Baby EXILE/EXILE ATSUSHI
2 Sexy Zone Sexy Zone
3 最初のメール フレンチ・キス
4 ずっと aiko
5 ペラペラペラオ Not yet
6 Acid Black Cherry
7 歩いていこう いきものがかり
8 ゆきのいろ ポルノグラフィティ
9 酔わせてモヒート ゴールデンボンバー
10 BTD INFINITE

 EXILEは全国的な順位よりも+1ポイント、他にもSexy Zoneが+9ポイントと、お茶の間のスター達がかなり強いようですね。東北地方は、家族連れで行動するパターンが多いことも関係しているのかもしれません。上記展開から、もっとB-BOY系が強くなるのかなと思い、桑野店TSUTAYA RECORDS主任の根本雄市さんにお尋ねしたところ、「一般のごく普通のお客様に向けて発信することを最重視しているのでチャートは普通な感じです。その上で提案したい商品も沢山売ってやる!とスタッフが頑張ってくれています。」とのことでした。これだけ個性的なお店なのに、上位は“普通”の結果になるって、ある意味凄くないですか?やはり、それは基本が出来ている何よりの証拠だと思います。ひぇ~、けっこう!(←“参りました”の意味です。) 最後に、オススメ作品について、根本さんからコメントをいただきました。

FIRE DOG 69 『RADIO HITS J-POP PUNK COVERS』

 福島県いわき市出身のロックバンド!JANGA69が別バンド名義でリリースしたカバーアルバム。新旧のヒット曲をメロディックなパンク・アレンジで再現!AKB48から、FUNKY MONKEY BABYS、加藤ミリヤ×清水翔太まで、もう何でもアリ!そこらへんもパンクならでは!
 
 疾走感溢れる高速大暴れのシンガロング・チューンから超感動美メロ・チューンに直情的ハモりのコントラストが冴え渡る!!カラオケのように、聴きながら一緒に歌うのがオススメ。とにかく気持ちいい!


FIRE DOGの推薦コーナー。このワンちゃんのPOPの暴れっぷりからも、お店の熱意が伝わってきます!

 轟音に負けることなく突き抜けるボーカルが良いですね。確かに、これなら一緒に歌いたくなりそう!(ただし、公式サイトを見たところ、来年までのツアーで解散することになったようです。あららら・・・。)ともあれ、こんな素敵なお店があるので、福島のミュージシャンは幸せですよね。お店の皆さん、これからもライトなお客様もコアなお客様も元気にしてあげて下さい。私も元気になりました。またお邪魔させて下さ~い♪

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。今年、43年間の人生で、おそらく最も渡辺美里の曲を聴いたかもしれない。別に、周年記念盤でも、ベスト盤でもないし、80年代後半あたりは「何?この正義感まるだしの歌詞と歌声?」とかむしろアンチだったのに(大人げない・・・)、今年のアルバム『セレンディビティー』には物凄くハマっています。多分、この人の100%前向きなのが苦手だったけれど、そのひたむきな姿勢こそが今の日本に期待しているベクトルと一致しているのだと思いました。大江千里から末光篤、斎藤有太(「新月」名曲!)まで新旧のアーティストを自然に取り入れているのも見事だし、私のような食わず嫌いだった方にオススメです♪