第32回 HMVイオンモール秋田さん

 全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第32回は(株)ローソンHMVエンタテイメントの店舗から秋田市のHMVイオンモール秋田(さん、以下敬称を略します)をご紹介します。


こちら入口。従来のHMVと比べるとやや小ぶりですが、所狭しと様々なコーナーが宝箱を詰め込んだように展開されています!それでいてオシャレに見せるのがHMV流。

 今更ながらHMVが初登場!実は、スタッフの方々の音楽知識のレベルの高さから、わざわざ紹介しなくても良いのではと考えていました。しかし、考えてみれば、数年前、セントラル・バイイングで個性がなくなったとか(実際、5年ほど前、ある地方のHMVでそこではどう考えても1,2枚しか売れないCDが印刷されたコメントカードと一緒に事務的に平積みされているのを見てゲンナリした記憶があります)、渋谷店の閉店で元気がなくなったとか、業界内での評判がやや否定的だった時期があったように思います。

 しかし、最近はそんな噂など払拭されるくらい、各店が個性的になっているので、今回是非とも紹介してみたいと思い、東北地方にある小さめのお店、秋田市の南東部・御所野にあるイオンモール秋田にしたいなと思いました。ここは、以前WAVEだったお店で、その前は建物内の位置は異なりますが、同県横手市(かまくらの本拠地&高橋優の出身地!)に本店のあるカシワヤ楽器だったのです。様々な事情でお店の形態が変わり、その度にお客様も変わっていくという、それだけで訪問するたびに一人勝手にドラマを描いており、私自身少なからず思い入れがあるのでした。


日に日に充実&増殖していくK-POPコーナー。次世代の男性グループや女性ソロなど、輸入盤の取り扱いが豊富!


ファミリー向けの店舗を大いに意識したキッズ・コーナー。とにかくDVDが豊富、再販制度が適用されないことからか“10%OFF”など割引制度も充実。


インストア・イベント登場アーティスト・コーナー。「お世話になったアーティスト」って言葉、良いですね。こういう東北でよく目にする謙虚な姿勢、大変勉強になります。


なんと早々にもCDショップ大賞のノミネート作品が一覧に!素晴らしい。。。あ!黒川泰子さんも忘れずにね(微笑)。

 まず、この秋田店は、K-POPの充実っぷりがハンパないのが目に入ります。ヒットチャートをかなり先取りしていて、もうここに通うだけで勉強になるはず。首都圏の人の中で、「あぁ、それって職安通りに行けばもっと詳しいよ」って時々イジワルを言う人がいますが、東京に行けない地方のお客さんにそれをいち早く示すことが出来るのが凄いのです。知っているだけじゃなくて、それを現地で実践しているのが見事!HMVは全店的にK-POPに詳しいですが、さらに、ここ秋田店では、インストア・イベントの予復習コーナーも充実。謙虚な方が多い土地柄でしょうか、“わざわざ秋田まで来て下さった”という感謝が感じられます。他にも、“来日”ならぬ“来秋”アーティスト・コーナーとして、近日にLIVEのあるアーティストの関連CDコーナーもあって、LIVE情報自体がCDコーナーになっているというのも面白いと思いました。さらに、第4回CDショップ大賞の告知も早々にあり、お客様だけじゃなく、業界の人が見ても、うれしい!たのしい!大好き!な展開になっています。


こちらアニメ・コーナー。HMV流にアニメを選ぶと女性ボーカル中心になるのか、ふむふむ。


メタルコアのコーナー。ショッキング・ピンクのHMVがドス黒く豹変!やる気を感じます。


輸入盤1000円コーナー。さすがHMVと言わんばかりの充実ぶりです。他のCDが高く見えそうで心配でもありますが、そこは音楽の良さもアピールしているから大丈夫。

 他にも、アニメやメタルコア・コーナーなど音楽自体の良さもしっかりとアピールしていて、以前にもまして音楽に貪欲なお店になったなぁと感心します。

 その一方で、輸入盤1000円コーナーも充実。これはHMV全店の名物とも言えますが、ここ秋田店はその割合が特に多く、しかもお店のメインのスペースに置いてあったように思います。他にも、DVDの“どれでも3枚コーナー”や、旧譜CDの“3枚で20%offコーナー”、さらにはインディーズの“100円ワゴンセール”など、価格で勝負する部分もしっかりアピール。考えてみれば、同じ建物の1Fにある大型スーパーではオールジャンルで安売りされている訳ですから、そういう視点でCDショップにいらっしゃるお客さんにも凄く魅力的に映ると思いました。しかも、この限られたスペースで、様々なニーズに応えようとする懸命な姿にも心打たれます。

 次に、アルバム・チャートを見てみます。

HMVイオンモール秋田 アルバムTOP10(2012/1/8~1/14)
順位 作品名 アーティスト名
1 EXILE JAPAN/Solo EXILE/EXILE ATSUSHIKARA
2 <スーパーガール KARA
3 ゴールデン・アルバム ゴールデンボンバー
4 Re:package Album 『GIRL’S GENERATION』 少女時代
5 BADDEST ~HIT PARADE~ 久保田利伸
6 21 アデル
7 FAME MONSTER レディー・ガガ
8 ファンキーモンキーベイビーズ 4 FUNKY MONKEY BABYS
8 BURUNDANGA FACT
10 FOR THE GOOD TIMES LITTLE WILLIES

 ゴールデン・ボンバーが並みいる強豪に交じって発売2週目でも3位!ここで3位ということは、かなりファミリー層にも浸透しつつあるのかも。そして、6位、7位、10位にHMVらしく洋楽の強さが出ています。ガガ様はリミックス盤の方が売れていて、これも低価格効果が出ているからでしょうか。アデルは、きっとグラミー・ノミニー特集を展開された効果でしょうね。いずれにしても、お店あってのチャートを見ると嬉しくなります。最後に、オススメ作品について、HMVの15年選手、店長の福田正義さんからコメントをいただきました。

HYRO DA HERO/『BIRTH,SCHOOL,WORK,DEATH』

「RAGE AGAINST THE MACHINE再来!?」そんな衝撃とインパクトが、鼓膜を越え脳に直撃するニューカマー!ベースが元AT THE DRIVE-IN、現MARS VOLTAのポールだから、特徴的なベースラインだけでも音楽通なら堪らないはず。リミッターをブッチ切ったようなハイテンション・ボーカルもキテます!素直に“かっこいい”と思える音楽に出会いたいと思っているアナタ!いま、出会えますよ!


福田店長はじめスタッフ自ら顔出しの名盤コーナー。低価格の中からオススメされているので、試し買いしやすいです♪


こちら店長オススメ・アーティスト。この面陳からもハンパない注力度合いがよく分かります。

 
 “鼓膜を越え脳に直撃” “リミッターをブッチ切り”・・・素晴らしいキャッチフレーズの連続ですね!(メモメモ) そういえば、社名だけでなく、ポイント制度も“Ponta”に変わりました。でも、今までのメンバーズカードと同じポイント還元とはいえ、コンビニなどでも使えるPontaで5倍、10倍って凄くないですか?(←「すごく」の「ご」にアクセント(笑))もともと女子に人気のHMVがますますモテそう。しかも、秋田店はコアな音楽もたくさん紹介しているので、野郎ども(笑)も安心です。私も勉強しにいかなければ!またお邪魔させて下さ~い♪

 

Twitterはつのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。先日、雑誌に依頼され井上ヨシマサさんの取材に行きました。ミポリンの話題も沢山出ましたが(ゴシップ・ネタではなく、純粋にアーティストとして育てる時の心得などです)、やっぱり一番大きかったのはAKB48で作家として約20年ぶりに復活されたエピソードについて。単にブームに乗ったのではなく、血のにじむような直し作業を経て各ヒット曲が作られているというのが知れて良かったです。こうした作家の方々の苦労を、私たちメディアやショップ、そしてリスナーも共感できれば、自ずと音楽ビジネスは健全な方向に少しは向かうと思いますが、いかがでしょうか。