第38回 ブックセンター湘南佐沼店さん

  全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。第38回は宮城県登米市のブックセンター湘南佐沼店(さん、以下敬称を省略します)をご紹介します。

 私が、ブックセンター湘南を知ったのは、かれこれ8年前にあるアーティストのCD購入者アンケートの回答をまとめていた時で、宮城県から応募の購入店欄に「湘南」とあるのを多数見かけて、これはデータの入力エラーか、はたまた「サザンやTUBE、あるいは加山雄三ファンの嫌がらせか??」と驚いて調べたというのがキッカケです(ちなみに、加山さん、最新作若大将・湘南FOREVER』『で、サザンの「希望の轍」やTUBEの「湘南My Love」をカバーしています!)。で、全国の大半が誤解しそうな店名でありながら、地域で大人気のお店とはいったい!?と気になっていたので、取材させていただきました~。


入口の看板では、「本」>「レンタルCD/DVD」>「セルCD/DVD」なイメージですが、決してセル・コーナーは手抜きされていません!


こちら、CDコーナーのほぼ全景。限られたスペースの中で工夫して各コーナーを華やかにされていることがよく分かります♪


J-HIP HOPコーナー。「ブックセンター」という名称から想像できぬほど、質・量ともにコア寄りに超充実!私も勉強になります~。

 入口だけ見ると、「あぁ、きっとCDはジャニーズとAKBとK-POPと、あとはどこでも売れそうなベスト盤だけサクサクって置いてあるんでしょ」とか、性格の捻じ曲がった人(=私)から言われそうですが、実際に中に入ってみると、限られたスペースなのは予想通りとしても、その中でJ-POPあり、アニメあり、ヒップホップありと、様々な工夫を凝らした展開に驚きます。これは、スペースが削減されつつある全業種のリアルショップの方にも参考になるでしょうし、また努力の密度というものが測定できるならば、間違いなく全国上位レベルだと思われます。

 特に、ヒップホップ系のインディーズ天国っぷり!実は私、オリコンやサウンドスキャンで上位入りした作品の中で、自分が全く予習できていなかった作品を時々お店でジャケットや音を勉強するようにしているのですが、都心では仕入れすらされていない作品も多いのですが(いえ、自分も知らなかったくらいなので、お店を責めるつもりは毛頭ございません)、こちらのお店を見たらゴロゴロしているじゃありませんか!!やっぱり、この手の音楽の売れ方を勉強するには、広大な地域のお店の情報が大変タメになると実感いたしました。なんたって、お店紹介の「最寄駅」の欄に「くりこま高原駅から車で30分」 とあるように、東北にはこういった人気店が沢山あるので、凄く面白いのです!


AKBコーナーですが、他のお店と比べるとDVDのアピールが強めですね。総選挙で中ランクにいるメンバーのサインとメッセージがあるのもリアルです。


K-POPコーナー。BIGBANGと2NE1の巨大なPOPから、エイベックスの地方勢力の強さを見せつけられます(微笑)。


CDショップ大賞のコーナーも豪華な飾り付け!


なんとももクロちゃんのコメントと、サイン色紙も展開!大賞セールス効果は、こんな一つ一つの努力から結実しているのですね。


アニメコーナーの最下段に、注文書やらPOPやらを上手く切り貼りしたと思われる告知コーナーが素敵。確かに、注文書だけに良いイラストやら、コンパクトなタイアップ情報載っていますよね。


4/30付のオリコンで、TOP10に「C」マーク(日本コロムビア)が5つも並ぶと言う何十年ぶりの快挙に大貢献したアイドルマスター・シリーズ。通販でまとめ買いしている人も多いけど、どちらも同じ定価販売ならお店でステッカーゲットした方が賢明です。

 それでいて、予想通り置かれていたAKBやK-POPのコーナーでも、POPやポスターでよりゴージャスに見せるなど、予想を上回る気配りがなされています。また、ひねくれた人間(=私)がスタッフならば、「うちはブックセンターだからCDショップ大賞なんて名前の賞、関係ないもんね」とかボヤきそうですが(笑)、こちらブックセンターでもCDショップ大賞はガッツリ展開中!ももクロちゃんの切り抜きの丁寧さからも、その愛情がひしひしと伝わってきます。東北地方ってとりわけ広いためか、実は商品全般のネット通販利用率が非常に高いのですが、だからこそお店のメリットがいっそう問われ、それゆえこんな風に頑張っているお店が多いのかもしれませんね。勉強になります!

 次に、アルバム・チャートを見てみます。

ブックセンター湘南 佐沼店 アルバムTOP10 (2012/4/9~4/15)
順位 作品名 アーティスト名
1 shamannippon-ラカチノトヒ- 堂本 剛
2 DJ KAORI’S J MIX 5 (オムニバス)
3 Prayer 藍井エイル
4 BIRTHDAY ClariS
5 OZBUM~A:UN~ OZROSAURUS
6 GO!GO!LGYankees!! LGYankees
7 COVERS BENI
8 ひゃくLOVE mix (オムニバス)
9 hachimitsu e.p. NIKIIE
10 Westup-TV DVD-MIX 05 (オムニバス)

 前回の岩手県「エムズレコード」に続き、こちらもTOP10に3作のオムニバスがランクイン!東京では好調なお店でもTOP10前後というDJ KAORIが、ここでは2位!やっぱ、キャオリ姐さんの実力を知るには、地方回りすべし!また、8位の『ひゃくLOVE mix』は、ユーミンの「天国のドア」やジュンスカの「白いクリスマス」から、最新人気の泣け歌まで、50曲×2枚のノンストップ・カバーCDで、どんな人も“LOVE注入”されてしまいそうなある意味キケンな商品(笑)。

 
 ヒップホップ系が強い一方で、アニメファンに人気の新人、藍井エイルとClariSのアルバムが3位と4位だったり、女性シンガーソングライターとしてブレイク間近なNIKIIIEが9位だったりと、若手の女性アーティストも売れていて、興味深いチャートになっています。その女性ボーカルファンにもヒップホップ・ファンにも人気のBENIも7位とロングヒット中でこれも納得。今年は、BENIみたいに幅広いファンに受ける作品が沢山出ればいいなと思います。その為にも、複数のチャネルからファンを広げていく、すなわちロングヒットに大貢献されるリアルショップって重要ですよね。最後に、同店の店長、菅原友博さんからオススメの作品についてコメントをいただきました。

SO-TA / 『SO-TA』

 地元仙台を拠点に精力的に活動を続けるレーベル、NO DOUBT TRACKS所属アーティスト、SO-TAの2ndアルバムをご紹介。透明感のある甘い歌声が特徴的で、ラップ的な唱法からバラードまでこなす才能豊かなシンガーですが、こういった歌い手って国内では数少ないので新鮮ですね。本作ではレーベルメイトはもちろん、意外な人選の外部ゲスト(舞花!jyA-Me!)も主役を盛り立てていて良い感じです。

 どこを切ってもハイライトなんですが、個人的にツボだったのが③「世界で一番のキセキ feat. LGMonkees」です。疾走するビート上で、人とのつながりを爽やかに歌い上げる好曲で新緑の季節のドライブに合いそうです。他、再結成も話題になっているPRINCESS PRINCESSの名曲⑫「M」のカヴァーなんかもあり。お店で見かけたらぜひチェックしてみて下さいね!


CDショップ大賞の東北ブロック賞を受賞した熊谷育美も全作品猛プッシュ!こういう熱烈な感じ、リアルショップならではなので、私も見ていて嬉しい!ちなみに、どの作品も既に発売中です♪

 SO-TAの声は、LGYankeesのタフな男声も、舞花のようなパワフルな女声も、爽やかに中和する感じで、かなりの逸材ではないでしょうか。NO DOUBT TRACKS出身ということで、宮城で突出して売れていますが、声が良いのでカバーを聞いてもらえれば、その才能が分かりやすいかも・・・と思っていたので、菅原店長ご推薦のプリプリ「M」は、さすがの心遣いです!!他にも、熊谷育美も大推薦中。宮城県で好調なアーティストが多いのは、こういったお店の熱意によるのだと確信いたしました。またお邪魔させて下さ~い♪

 

つのはず・まこと。1968年京都府出身。地元国立大学理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic
 先日、音楽コンシェルジュの福島“ふくりゅう”龍太郎さんと2時間ほどお話ししたのですが、その時に公式インタビューを担当された米津玄師(よねづ・けんし)のアルバム『diorama』が余りに素晴らしくて、ちょっと眩暈が。私のようにニコ動発のアーティストに疎くても、90年代ポップロック好きにまで広がりそうなので、これは大ヒットするはず。それにしても、音楽マーケッターとかチャートアナリストとか名乗って最新の市場を追っているのに、執筆や監修のお仕事は70年代・80年代の歌の上手い元女性アイドル関連ばかりという私はいったいどうよ??と、今更ながら反省しました。以降、多少無理してでも、音楽で若作りしようと思います♪