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アーティストの音楽との出会い!My First Record 第1回 奥田民生 好きな音楽の基準は、「自分で演奏できること」だった

あのアーティストが、生まれて初めてレコードのこと、CDショップとの思い出、エピソードなどを語ってくれます。

今の自分へと続く、あの頃の自分が初めて買ったレコード。そして初めて足を運んだレコードショップ。どんなアーティストにもある“原点”を探る、『マイファーストレコード』。記念すべき第一回に登場したのは、1月に3年半ぶりのフルアルバム『Fantastic OT9』をリリースした奥田民生。ユニコーンからソロへ。今年でデビュー21年目を迎えた彼にとっての「音楽の入口」とは?

撮影 渡辺誠 文 朴順梨

ビートルズは、ギターで弾きたかったから

「最初に買ったレコードは何かと聞かれても、実は記憶がないんです。うちの母上がレコード鑑賞が好きだったので、歌謡曲とか演歌とか、ポール・アンカみたいな昔のポップスのヒットシングルとかが家にあったので、それをステレオでかけて遊んでたんです。でも自分の金で買ったものに関しては……まったく覚えてないですね。

輸入盤を初めて買ったのは中学生の頃で、それはチープ・トリックだったんですけど、当時は状態が良くないものも多かったせいか、レコードが曲がっててにおいも臭くて(笑)。「輸入盤ってこういう感じなんだぁ。もう買わん!」って決意しました(笑)。その後は友達から借りたりしてるうちに、レンタルショップも出来ましたからね。僕は「レコードをたくさん集めて嬉しい!」みたいなのはなかったんですよ。レコードもステレオで聴くより、カセットに録音して自分の部屋で聴いたほうがいいと思っていた。そうなるとね、買っても借りても一緒だったんです」

同じ町内で育った西城秀樹をはじめ、歌謡曲も洋楽も幅広く聴いていた子供時代。物心ついた時には、既に傍らに音楽があった。中でもお気に入りはビートルズ。それも初期のアルバムが好きだと語る。

BEATLES「With The Beatles」
BEATLES
「With The Beatles」

「ビートルズは当時も今も、2枚目の『With The Beatles』や3枚目の『A Hard Day's Night』みたいな、初期の音数が少ないものが好きなんです。「オーケストラが入ってるのはイヤだ」とか「キーボードは入ってなくてもいい。ギターとベースとドラムだけでかっこいいのがいい」と思っていたから、後期のものはややこしくてよくわからない。

BEATLES「A Hard Day's night」
BEATLES
「A Hard Day's night」

そうやって考えてみると好きな音楽の基準は、「自分にもできるかもしれない」だったんでしょうね。最初はギターも下手でコードの押さえ方も知らないので、簡単な曲しか弾けないから、聴くのも簡単な曲がよかった。僕は知らないミュージシャンを探し出すことでも新しいジャンルを知ることでもなく、ギターを弾くのが好きだったんです。演奏するために、音楽を聴いて覚えてたんだと思います」

POPに何度ダマされたことか!

「子供の頃によく通ったレコード店は、広島市民球場の真ん前にあった『第一産業』っていう、今の『デオデオ』の大きな店。日曜の夕方にね、そこで『サテライトNo1』っていう広島ではすごい人気があった、柏村武昭さんの番組の公開放送をやってたんです。それをよく見に行ってて、その時ついでに楽器やレコードを見てました。

デビュー当時は事務所が六本木にあったので、WAVEにはやたら行ってましたね。でも「東京のレコード屋はすごいなあ」とは思ったものの、そんなにCDを買ってた訳じゃなくて。ディレクターから教えてもらったブラックミュージックやワールドミュージックを聴いたり、トッド・ラングレンやXTCを「あ、面白い」って思って集めたりはしましたけれど、同時に「何を買っていいかわかんない」とも思ってましたね。だから店頭のPOPを鵜呑みにして買ってました。今思うと、なっちょらんもんも多かったね!(笑)あれにダマされて何枚買ったことか!(笑) POPは本当に大事ですね。今でもPOPを見て買うことが多いですよ。こっちはド素人ですからレコードに関しては。ジャケ買い的なことも時々したんですが、ジャケ買いも成功した試しがないですね。でももう40を超えたので、最近は「これはきっとダメだ!」ってものはさすがにわかるようになった(笑)」

苦労して店頭で手に入れたからこそ、いいアルバムは輝く

1回の滞在時間も購入枚数も「相当なもの」だが、CDショップに足を運ぶのは、今では年に4回程度なのだそうだ。滅多に訪れない、その理由とはいかに?

「今の仕事をしてなかったら、もっと色々なCDを探して聴きたいと思ってたと思います。でも僕は聴くことだけが特別な訳じゃなくて、音楽に関わっていれば聴くのでも演るのでも、そこには同じ喜びがあると思っている。知ることには喜びを感じる性格ではないし、既にいい音楽はたくさん知ってますからね。

とはいえCDショップって「宝の山だ」みたいなイメージがあるので、行くこと自体は好きですよ。わざわざお店に行って買えば、包装を開ける時のドキドキが味わえる。そしてそれが、一番気分が盛り上がる瞬間だよね。聴いた途端に「ガックシ」みたいなこともよくあるけど(笑)。そういうのも含めて苦労をして手に入れたからこそ、いいアルバムが輝くんですよ。なのにそれを「簡単に削除」ではイカンという思いはありますね。

記録メディアはCDではなく、例えば小さなカードみたいな形態に変わるかもしれないけれど、それを売る店は、この先も絶対に必要だと思うんです。行って買ってきたものとネット経由で飛んできたものでは、“持っている喜び"が全然違うと思うんですよね。それとあくまで今現在の状況ですが、音的にはアナログのレコードとCDがベストで、それに比べるとデータは音質が落ちると思うんです。比べて落ちるなら、落ちないものの方がいい。とはいえ僕らは、その時代にある記録メディアでリリースするしかないんですけど。

僕自身はアナログで録った時の、実際の演奏とはちょっと違って高音のキンキンしてた部分が削れたりしているみたいな、人間味がある音が好きなんです。そういう、自分が聴いていて気持ちがいい音を作り続けたい。音楽がどのメディアにのるかは時々に応じて変わっても、もともと僕は演奏するのが好きなわけで。だから生で音が伝えられる、ライブにこだわる。それは何があっても、絶対に変わらないですね。……CDショップのためのサイトで言うことではないかもしれませんけど(笑)」

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