- 第10回
- 清 竜人

今の自分へと続く、あの頃の自分が初めて買ったレコード。そして初めて足を運んだレコードショップ。どんなアーティストにもある“原点”を探る、『マイファーストレコード』。記念すべき(まだ、早い?)第五回目には、4ピースロックバンド、フジファブリックを迎えた。今年に入って、2年2ヶ月ぶりの3rdアルバム『TEENAGER』を久々にドロップ。現在は続く4枚目のアルバムを鋭意制作中だ。そんな彼らの想い出の1枚とは……。
撮影 渡辺誠 文 梅原加奈

- ウルフルズ
- 「バンザイ」
山内総一郎(G. :以下、山内)「中学2年生のときだと思います。初めてCD買ったの。当時、住んでいたマンションの近所にTSUTAYAがあって。CDの自動販売機があったんですよ。その自動販売機でウルフルズの『バンザイ』を買いました。レンタルじゃなくて、買ったっていうのは、たぶんそれがはじめてですね。たしか、ラジオで『ガッツだぜ!!』を聴いて“かっこいい!”って思って買ったんだと思う。何度も何度もくり返して、聴きましたね」
金澤ダイスケ(Key.:以下、金澤)「山内くんと違って、僕の地元にはCDショップがなくてですね……。演歌専門のCD屋みたいなのしかなかったんですよ。だからCDって、友達から借りて聴くものって感じで、買ったものは全然覚えてないですね。……でも、その頃はCDショップにすごい憧れを抱いていたのを覚えています。家から1時間半くらいかけたところにならあったんですよ、CDショップが。そこに、出かける時はデパートだとか遊園地だとかにでかけるような気分だった。石丸電気の中にあるお店で、高校生の頃は1時間半かけて通っていましたね、ひとりで。試聴したり、いろいろ見たりして、時間かけて行った分、じっくり見て回ったのを覚えています」

- 広瀬香美
- 「ロマンスの神様」
志村正彦(Vo&G.:以下、志村) 「僕が初めて買ったCDは広瀬香美さんの『ロマンスの神様』です。テレビとかでみて、流行っていたから買ったんだと思う。中1くらいの時ですかね。昔の縦長の8cmシングルで。僕も金澤くんと同じように地元が山梨の田舎だったんで、デカいCD ショップなんかなくて、電気屋さんの隅にコーナーがあるようなCDショップが唯一のお店で。そこに友達と自転車で30分くらいかけて通っていて。足繁くチェックしていましたね」

- リンドバーグ
- 「FINAL BEST」
加藤慎一(B.:以下、加藤)「僕は、なにかしらのリンドバーグですね」
志村「なにかしらのリンドバーグ? リンドバーグのなにかしらでしょ?(笑)」
加藤「僕も縦長のシングルで。リンドバーグをテレビで見て、それで買ったとかだと思うんですけど。なにかしらのものを(笑)。近所にあったCDショップで買いました」
金澤「……なんか、みんな(CDショップが)近くていいねえ」
北関東から関西までそれぞれの地に育ち、CD原体験も個人ごとに大きく違いをみせるフジファブリックのメンバー。そんな4人が共通したCDショップ感覚を持つようになるのは、上京後の話になる。

- 志村正彦(Vo&G)
志村「東京に出てきたのが18歳の頃。そこで出会った外資系のCDショップの存在は大きかったですね。知らないアーティストは、とりあえず試聴機で全部聴いてみる、みたいなことをしていました。それまでは、CDのジャケットをみて、とか雑誌の前評判を読んで、とかそういうことでしか判断ができなかった。でも、試聴機から音楽を知ることができるっていうのは、大きかったですよね。そこからいろんなものを吸収していった感覚がある」
金澤「確かに、渋谷のタワレコみたいに大きなCDショップは衝撃的だった。ひとつのビル全部がCDショップだけでできているっていうのがね。試聴をして、そこで偶然いいCDに出会ったり、みつけたりできるっていうのは、すごいことだと思います。そういう機会っていうのは、大型ショップだからできることだと思うから」

- 加藤慎一(B)
山内「渋谷のタワレコは、初めて行った時に“ここ、まるごと欲しい!”って思ったね」
加藤「階によってジャンル分けしてあること自体がすごいとも思ったし。ジャンルで分けられていることに、まず驚くみたいな感じで」
金澤「ディスクユニオンなんかメタル館とかプログレ館とかあるからね。そりゃ、驚くよね」
志村「当時、僕は高円寺に住んでいて新宿のタワレコによく通っていたんですよ。そこにピンク色のモヒカンみたいな変な髪型の店員さんがいて。東京のCDショップは、服装も髪型も自由なんだなって思っていたんです。で、それならイケるだろうと、面接に行ったら落ちてですね……」
金澤「え? ウソ!?」
山内「むっちゃ暗そうやったのかね?」
志村「音楽に関わる仕事をしたいなって思って行ったら、落ちちゃって。その頃は、ライヴハウスでもバイトをしていたから、勤務時間が合わないとか、そういうことだと思うんですけど。でも、ショックでしたね。そんな想い出があります(笑)」
インディーズ時代を経て、2004年にメジャーデビュー。そのデビュー当時からコアな音作りにこだわってきた彼らだけに、ネットによる音楽配信がもはや常識となった現在でも、CDで音楽を聴くことの“意味”を見出し続ける。

- 金澤ダイスケ(Key)
志村「僕らは音楽を作っていて、CDを出しているじゃないですか。自分たちの曲は当然、すごくシビアに聴くことができるんです。どの音がどれくらいのレベルで出ているかとか、細かいところまで聴くことができる。そうやって聴くと、一度データに通して圧縮をかけるのと普通にそのままCDで聴くのとでは、もうびっくりしちゃうくらい音が違うんですよ」
金澤「CDは音がいいですからね。インターネットで買うと音がものすごく劣化して、耳が痛くなることもある。CDで買うほうがいいかなって思いますよ」
志村「大きな声で“あまり圧縮しないで!”って言いたくなるくらい違うんです。フジファブリックは、まだレコードをだしたことがないんですけど、レコードも出したい。アナログというのは、またCDとも違っていて。マスタリングの仕方も違うし、CDには出せないダイナミクスもある。ブラジルの音楽とかジャズとかクラシックとか大きな音量で聴くものに適しているんです。そういう音の違いを僕たちより若い世代の子にもっと知って欲しいし、聴いてみて欲しいですね」
山内「今でもアルバムを出せば、みんなでCDショップに見にいくよね」
金澤「ポップとか、その店ごとにキャラがちがうというか、コメントが違っていて、面白い。店員さんともおしゃべりできるのでそれが嬉しいですね」

- 山内総一郎(G)
志村「僕が面接を落ちた新宿のタワレコは“日本一フジファブリックを応援している”と言ってくれていて。大きく展開してくれていて、いつもありがたいです。最近はインストアライブとかってあまりないんですけど、新宿では3回くらいやっています。インディーズのころと、あと3年前に新宿タワレコの7周年記念でライブをしたんです。タワレコの屋上でやったんですけど、大雨が降っていたのにお客さんが多すぎて、演奏が始まった瞬間に前倒しになっちゃって、大混乱になったんですよ」
山内「雨の中“台風”という曲をやって盛り上がりすぎた。スタッフが“やめろ、やめろ!”ってなって。なんか、ちょっとかっこよかった……(笑)」
金澤「止められるのとか、そんな経験ないもんね」
志村「ロックアーティストっぽい感じで(笑)。で、危ないから演奏を1回、中断して。“今日はみんな危ないから前じゃなくて上に飛んでくださいね”って言ったら、今度はビルが揺れた(笑)。これは、貴重な体験でした」
志村さんによる意外な面接落ちエピソード、さらに強烈なインストアライブ体験を語ってくれたフジファブリックの想い出の地、タワーレコード新宿店。インディーズ時代から彼らのことをよく知る当時のタワーレコード新宿店副店長、現mona records店長の行達也さんに、あの頃を振り返る想い出話を訊いてみた。そのお話はこちらから、どうぞ!







