- 第10回
- 清 竜人

今を生きる誰にとっても、原点はきっとある。そしてアーティストの場合、それはかつて足繁く通った、CDショップなのかもしれない。
『マイファーストレコード』の第7回に登場するのは、かのピチカート・ファイヴのリーダーでありDJでもあり、数々のアーティストをプロデュースしてきた小西康陽氏。さらに今回は組合員の行達也氏(mona records)も参加。いつもと趣向を変えて、インタビュー形式でお届けします。
撮影 渡辺 誠 文 朴 順梨
行:小西さんって、どんな子供だったんですか?
小西:普通のテレビっ子。『シャボン玉ホリデー』とか、渥美清さんが出演していた『泣いてたまるか』ってドラマとか、大橋巨泉さんと前田武彦さんの『ゲバゲバ90分』が好きで、テレビ漬けでした。で、小学校高学年の時に、洋楽のトップ30を紹介する『ビートポップス』っていう、これも大橋巨泉さんが司会で、ミュージックライフの編集長だった星加ルミ子さん、音楽評論家の木崎義二さんと藤村俊二さんが出演する番組と出会ったんですけど、これが大きかった。
行:最初に買ったレコードも、洋楽でしたか?

- ピンキーとキラーズ
- 『涙の季節』
小西:邦楽でピンキーとキラーズです。いつ買ったかは記憶が曖昧なんですけど。でも大ヒットしたデビュー曲の『恋のバカンス』じゃないんですよ。多分ね、その後の『涙の季節』か『七色のしあわせ』のどちらか。自分の小遣いで買いました。
あのね、ピンキーとキラーズってメチャメチャかっこよく見えたんですよ。ファッションを含めて、醸し出すイメージがね。野宮(真貴)さんは1つ年下なんですけど、彼女は中学に入ってすぐ買ったのがフィンガーファイヴで。「なんかよくわからないけど、アキラさんの大きいサングラスがすごくかっこよく見えた」って、僕と同じことを言ってた。今思うと、ピンキーとキラーズとフィンガーファイヴが合体したのが、ピチカート・ファイヴだったのかもしれない(笑)。“ピ”がついて“ファイヴ”がつくし(笑)。
行:その時代その時代で、傾倒していたジャンルってありますか?
小西:ありましたよ。中学から高校は熱狂的なシンガーソングライタ-マニアで、高校から大学の時はすごいソウルマニアで。
記憶に残っているのは、高校時代に当時ヒットしていた『ホテル・カリフォルニア』を聴いて、「こういう音楽はつまんない」と思ったんですよ。それで違うジャンルを探し始めたら、ソウルに行きついた。でもある日ソウル買いをぴたっとやめて、ニューウェーブを買うようになったりして。わかりやすい人間だなあ(笑)。

- アル・グリーン
- 『Take Me To The River』
でも、飛び石になるアーティストって必ずいるんです。例えばジェームス・テイラーを聴いていると、彼がソウルのアーティストをカバーしていたりするから、「あ、ジェームス・テイラーってソウルが好きなんだ」ってわかるんです。そこでオリジナルを聴くようになったり、トーキングヘッズがアル・グリーンの『Take Me To The River』のカバーをやってるのを聴いて「いい!」って思ったりとか……。そんな感じです。
行:よく通っていたレコード店の思い出、何かありますか?
小西:僕は幼稚園と小学校を恵比寿で過ごしたんですけど、ほとんどのレコードを家の近くにあった、今はなき、りんどうレコード店で買ってたんです。ビートルズのホワイトアルバムもそこで買った。
でも当時はレコード店に行って色々探すというよりも、「○○ください」って、指名買い。探し買いするようになったのは中学に入って札幌に転校してから。すすきのにあった玉光堂って店に行ってたんですけど、親が行きつけだったせいか、大型店なのにツケがきいたんですよ。親に「月に2枚アルバムを買っていい」と言われていたので、毎日通って何枚も視聴させてもらって。
ずっと通っていたので、中3になる頃には店員さんが個人的に、廃盤になったアルバムを貸してくれたりしてました。自分で音楽をやりたいと思うようになったのもこの頃。はっぴいえんどを聴いたのがきっかけだったけど、どんな音楽をやるかはまだわからなくて。でも何かをやりたいと思うようになって。
行:レコード店に行くのは好きでしたか?
小西:好きに決まってるじゃないですか(笑)。人見知りだから自分から店員さんに話しかけたりはしなかったけど……。
行: CDショップと中古レコード店、最近行くのはどっちが多いですか?

- Perfume
- 『GAME』
小西:9:1で中古レコード店(笑)。新譜に興味がないわけではないけど、ネットで買っちゃうんですよね。僕はレコードとかCDとかをパッケージで聴くクセがついちゃっているので、ダウンロードとかはしないけど。Perfumeの『GAME』は、Amazonで買った。だって店で買ったら「小西さんがパフューム買ってる」って言われるだろうし(笑)。そういう意味でも最近、CDショップに行かなくなりましたね。
行:約15年前の、CDショップブームを一番盛り上げた男が!
小西:当時はまだネットがないから、CDショップがコミュニケーションの場になってたよね。お客さんだけじゃなくて、アーティストも来てくれて。POPも「今これを買わなきゃ!」って気にさせるものも多くて、よくダマされたよ(笑)。
行:最近のPOPってすごくきれいに切り貼りして、「手がこんでるでしょ、どう?」みたいなのが多いと思う。
小西:それ、僕は言ってないからね(笑)。でも店員さんに面白い人が減ったのと、音楽の送り手の方が売れるものしか作らなくなったことが、CDショップがつまらなくなった理由なのかもしれない。
いつの時代もバカ売れするメガヒットがあるでしょ? 以前のレコード会社はそれが1つあれば、あとは遊ぶことができたのかもしれない。「『ブルーライトヨコハマ』が売れちゃったからさあ、あとは好きなの作ろうよ」的なことができたと思うんだけど、今は各レーベルが独立採算制になったりしてるから、おいそれと遊べないだろうね。でもそれこそ、小室哲哉さんみたいなメガヒットを出す人こそ、売れないけど面白いってものを作って欲しかった。10万枚以上売れたアーティストは、ダメなアーティストを探してきて紹介するとか、ディレクターも10万枚以上売れたら、ダメなレコードを必ず1枚作ることみたいな、そういうのがいいかもね。
最後にCDショップに行ったのはもう何年も前のことなんですけど、その頃って店がうるさくて。音楽もうるさいし、訳のわかんないPOPが2重も3重にもついてて、視覚的にうるさかった。情報が溢れすぎてて、何を勧めたいのかが全然分からない。でもそういう賑やかなショップを必要としている人達は、今後はケータイでダウンロードにシフトするかもしれないよね。そうなったらCDショップが、以前の静かなショップに戻るかもしれない。それだったら通うな。ちょっといいセレクト本屋みたいな感じの、エプロンも黄色とかじゃなくてシックな色で、店員さんは男性も女性も全員メガネ。そうなったらメガネ店員さんに会いに行くね。
行く:メガネレコードでメガヒット?
小西:……(笑)








