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POP総研とは、「POPにまつわる、さまざまなギモンや事象を解明し、CDショップとPOPのよりよき明日を切り拓く」ことを目指しひそかに設置された、日本初のPOP専門シンクタンク(!?)である。

「どんなにくだらないことでも大マジメに調査する」をモットーに、鋭く、ときにゆるりと斬り込んでいきたいと思います。ちなみにPOP総研では、研究員&研究テーマを常時募集中です!

文:井上ケンタロウ(研究員)

第4回 「“書の鉄人”にPOPを習いに行ってきた」

さて、お久しぶりの更新となります。

これまでPOPの歴史をゆるりと紐解いてまいりましたこのコーナーですが、
常々、せっかくならお店の方々にも役立つPOP講座
みたいなものはどうだろうか? と思っていました。

すると、「筆でPOPを描く“書の鉄人”がいるらしい」という情報が!
その方は、ビクターエンタテインメントのフカミマドカさん。
かつてWAVEのバイヤーとして、関西に「筆文字POP」を広め、
店を辞める際には、われらが実行委員長・行達也さんにその権利を譲った(!?)方だとか。

というわけで今回は、新たに研究員として加わってもらった
新星堂のヨコオユウヤさんとともに、
フカミさんにPOPを習いに行くことにしました。
(ついでにPOP勝負も!)

 

小澤芳一(おざわ・よしかず)
書の鉄人
フカミマドカ(写真右)
1991~96年まで、WAVE梅田店、心斎橋店、クアトロ店でバイヤーを務め、筆で描く独自のPOPを確立。その後、WAVEを退社し、ビクターエンタテインメント(株)と業務提携、くるり、つじあやの、キセルなど数々のアーティストをビクターに送り込む。現在、ビクターの新人開発部署、ADグループのA&Rディレクターとして新人発掘を行うほか、複数のインディレーベルのプロモートなどを手がける。
★「colla disc presents LOST TREASURES 2000-2009」発売中!
インディレーベル「colla disc」の10周年記念変則ベストがビクターエンタテインメント(株)から! レーベルがメジャーデビュー! でもワンショットのみ(笑)! 詳しくはcolla disc my spaceにて。
研究員
ヨコオユウヤ(写真左)
新星堂大和鶴間店勤務、そしてPOP総研・主任(?)研究員。毎週20枚程度の手描きPOPを描き上げるショップ店員。自らの活動“gisinanki”で、ライブイベント「WONDERFULWORLD」のオーガナイズも行う。次回は、12月25日(金)Zher the ZOO YOYOGIにて、音楽とアートに囲まれたクリスマスパーティーを開催! 詳しくは http://www.gisinanki.com/をご覧ください!!
――フカミさんが、筆文字ですごいPOPを書きまくっていた、という話を聞いてやってきたんですが!(いつもどおり鼻息荒く)
フカミ 僕が店員をやってたのは、90年代の渋谷系ブームの頃で、POP文化が華やかだった時代(笑)。入荷したそばから、商品が売れていくんです。だから、まずはどこに何があるかわからせる、というのが一番重要。そこで、早くてインパクトのある筆文字で書くようになったんですよ。
ヨコオ たしかに、ジャケットだけだと、どのCDがどこにあるかってわかりづらいんですよね。
フカミ 80~90年代にかけて、メディアがCDに変わったのも大きいと思いますね。レコードに比べてジャケットのサイズは小さく、よりわかりにくくなった。それでPOPの必要性が増したんじゃないかと。あと、手描きPOPの何がいいって“異物感”。普通のフォントばっかりの中に、手描きの文字があると目立つんですよ。ちょっと描いてみましょうか。
すかさずサラサラと描いてくれた全日本CDショップ店員組合のPOP! グレート!
フカミ お洒落なお店なのに、ダンボール箱のまま出したり、正月はPOPに「初荷」って描いて台車を置いておいたり……。そんなことばっかりやってたら、視察にやってきた某チェーン店の社長に、「日本の売り場は汚い!!」って言われたりもしましたね(笑)。
ヨコオ ちなみに僕は、ふだんこんなPOPを週に20枚くらい描いていて、新星堂の社内でも共有しているんです。
ヨコオさんがここ1年で描いた作品の数々!!
J-POPの分だけなので、実際はこれよりずっと多いそう。
フカミ すばらしい。だってわかりやすいもん。最近は、こういう写真を使ったPOPがほんとに増えましたよね。昔はカラーコピーなんてなかったからな~。1枚だけで面出しするなら、こういうちゃんとしたPOPがいいんですよ。
――やっぱりPOPつけると売り上げって変わりますか?
フカミ ぜんぜん違う。極端な話、何かしら書いてあるだけで。
ヨコオ 今までにこれは成功したな、っていうPOPありますか?
フカミ 当時、小室哲哉がめちゃくちゃいろんなアーティストをプロデュースしてて、それを集めて、POPに「小室ちゃん祭り」って一言だけ描いたことがあったんです(笑)。TRFとかの中にTMNの旧譜を混ぜたたりして。あれはすごい売れたなあ。
ヨコオ (笑)。僕はPOPって、接客の代わりだと思っているんです。ほんとはひとりひとりに説明したいんだけどできない。だからPOPに描く。
フカミ 平台で売るのか、棚で旧譜として売るのか。また、店内で何箇所も同時に展開するのか。それによってもPOPの描き方は変わってきますよね。
――POPを描くときに心がけていたことは?
フカミ バカバカしさ(笑)。とにかく目立つように。だって、お店に来て楽しいほうがいいじゃない。でも、人やジャンルによって描き方は違っていいんです。僕はバカバカしい感じだったけど、ジャズの担当なんてすっごい細かい字でマジメに描いてたし。
ヨコオ バカバカしいPOPがあると、お客さんとの距離が縮まりますよね。僕もJ-POPに限らずいろいろなジャンルを描くんですが、キッズものは字を大きく、アニメとかマニア系はすごい細かくとか、そのつど変えてます。
フカミ もちろん僕も、リイシューとかは「なめられちゃいけない」って、ちゃんと描きましたね。
――その場、その場に合わせた描き方があるんですね~。
ヨコオ たとえば、このスキマスイッチのCDって、「鋼の錬金術師」の主題歌にもなっていて、アニメのファンもめちゃくちゃ買うんですよ。だからPOPにイラストを入れると、鋼錬好きのテンションが上がる、とか。
フカミ 客層やお店の特性にもよるよね。僕が昔いた西武の中にあった小さなお店では、POPは大きく展開するものに描くだけだった。小さな店でやるなら、わかりやすいものにわかりやすいPOPをつけてあげること。あんまり無茶はしないほうがいいですね(笑)。
――ちなみに、描くのにどんな画材を使うんですか?
ヨコオ 僕は、いつもポスカと水性ペン、あとは筆ペンですね。
フカミ お、ポスカ派ですね。ただねぇ、ポスカはちょっと乾きにくいんですよ。WAVEのPOP用紙がインクが沈む紙だったっていうのもあるんですけど……。なので僕は、渇きが早い「プロッキー」。あと、こだわりとしては、筆ペンは絶対「ぺんてるの中字」。これが太さを変えられていいんです。
ヨコオさんはポスカを愛用。「太字で書いて、ボールペンで縁取るのが好きなんです。濃い色はドラッグストアっぽいので、淡い色で。枠をつけるだけで簡単にPOPっぽい仕上がりにできるのでオススメです」
フカミさんオススメの画材は、プロッキー各色と筆ペン「ぺんてる中字」(写真中央下)、蛍光ペンなど。「油性ボールペンとか、筆先がフェルト筆ペンはやめたほうがいいですね。慣れてない人が使うと字が下手に見えるから」
――POPを上手に描けないって悩んでいる店員さんに、アドバイスをお願いします。
フカミ 何もしなくても入荷したらどんどん売れていくものってあるじゃないですか。そういう商品の場合、まずは「浜崎」とか「EXILE」とか、名前だけでも書いておいたらいい。そこに何があるかすぐにわかるように。あとは、あんまり深く考えないこと!
ヨコオ 僕も昔は文字数とか数えてたんですが、さすがに毎週描いているので、迷わなくなりましたね。スペース空いちゃったら、ビックリマークつけとけばいいかって(笑)。
フカミ 下書きとかし始めると、「まだいけるかも!」ってなってキリがない。そういうヤツは、だいたいうまくいかない(笑)。
ヨコオ 時間ばっかりかかって、結局描くのが面倒になっちゃうんですよね。
――最後に、お2人にとってPOPとは?
ヨコオ パッケージだけじゃわからない、アーティストが伝えたいことを代弁してあげるもの。「アーティストとお客さんの架け橋」ですかね。
フカミ 手描きに限定しますけど、僕はやっぱり「無機質の中の有機質」。
ヨコオ ネットにはないリアルショップならではの魅力が、手描きPOPにはありますよね。ただどうしても、好きなアーティストなんかは自分の“好きすぎる気持ち”が出すぎちゃうことがあって。なので、“自分の想い”と“お客さんに伝えたいこと”を、4:6くらいにと思って描いてます。
フカミ まあ僕は、8:2で自分の思い優先でしたけどね(笑)。
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