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ギモンなんでも調べますPOP総研

POP総研とは、「POPにまつわる、さまざまなギモンや事象を解明し、CDショップとPOPのよりよき明日を切り拓く」ことを目指しひそかに設置された、日本初のPOP専門シンクタンク(!?)である。

「どんなにくだらないことでも大マジメに調査する」をモットーに、鋭く、ときにゆるりと斬り込んでいきたいと思います。ちなみにPOP総研では、研究員&研究テーマを常時募集中です!

文:井上ケンタロウ(研究員)

第2回「POPは、いったいいつからはじまったのか? その2」

「POPの元祖、といわれる人がいるらしい……」

ある日、POP総研“起源”調査チームのもとに、そんな有力情報が舞い込んだ。
調査を進めたところ、どうやらユニバーサルミュージックで プロデューサーをされている、小澤芳一さんがその人なのではないか、とのこと。しかも、なんと会ってお話を聞かせてくれるというではないですか!

研究員ははやる気持ちを抑えつつ、小澤さんの待つ都内の某スタジオを訪れたのでした。

小澤芳一(おざわ・よしかず)

小澤芳一(おざわ・よしかず)
1962年生まれ。19歳のときディスクユニオンでアルバイトをはじめ、1984~98年までタワーレコードに勤務。バイヤー、店長のほか、TRICERATOPS、スガシカオ、Coccoをはじめとするバウンス・レコードでのCD制作なども行う。その後、音楽制作、アーティストのマネージメントなど経て、現在、ユニバーサルミュージックでチーフ・プロデューサーを務める。
★2009年 担当のアルバム
「イエスタデイ・ワンス・モア」Various Artist(3/25発売)
「In touch with Hanky Panky」Hanky Panky(4/1発売)
★2008年担当の推薦アルバム!
「Nelson Motown」Nelson Super Project(Now On Sale)
――小澤さんが“POPの元祖”と聞いて会いにきたんですが!(鼻息荒く)
言われたこと、ないなあ。なんでそう伝わったのかもわからない(笑)。
――あれ? そ、そうなんですか……。(と、今回もいきなり追い込まれる研究員)
でも、僕がタワーレコードいた頃の状況なら話せるけど。日本のタワーでPOPがつくられるようになったきっかけって、LPを置く棚の“アーティスト名が書いてある仕切り板”からだと思うんです。その文字が、日本では見慣れない独特の書体だったの。海外の店にはそういう文字を書いたり、POPをつくる「ディスプレイアーティスト」という人がいたんだけど、日本でも各店にその文字を書く人が置かれるようになって。で、彼らが凝ったPOPをつくるようになった、というのがはじまり。
――なるほど。第1回のPOP総研で、長門さんから、80年代中盤から後半にかけて、タワーレコードが大規模なディスプレイをするようになった、というお話を聞いたんですが。
そう、タワーの場合は、コメントカードよりディスプレイが先行してたなあ。大規模っていうか、かなりエスカレートしちゃってて、もはや大工状態(笑)。今でも覚えてるのが、旧渋谷店のころ、ピーター・ガブリエルかなんかのアルバムだったと思うんだけど、木で超巨大な水車をつくって店の真ん中にドーンと置いたの。そこまでやるか! と。それ製作した方は今もタワーに在籍していますよ。
――もはや完全にディスプレイの域を超えてますね...
たしか「つくるのに3週間かかった」って言ってたからね。しかも商品(LP)が届いてからつくりはじめるから、できあがったころには発売からかなり時間がたってて(笑)。タワー以外でそんなことをやっていたのは、自分たちのディスプレイ製作チームを持っていた大阪のミヤコレコードさんくらいかな。当時、レコード会社から送られてくる、ポスターとか切り文字が入った「ディスプレイキット」っていうのがあったんです。でもタワーは国内盤を売ってなかったから、それがない。素材はジャケットだけで、そこからどうふくらましていくか。キットを使うようになってからも、切り文字の側面に色を塗ったり陰影をつけたり……。「画一化したディスプレイを打破する」っていうのがタワー的発想だったよね。
――で、どんどんエスカレートしていった、と。
ただ、さすがに水車はムダだってことで(笑)、店の壁にディスプレイ用の場所を定型でつくって月代わりで変えていく形になったの。ただ、場所か壁なので、その下に必ず商品を置けるわけじゃない。そこで、個別の商品が店内のどこにあるかをわからせるためにコメントカードが出てくる、という流れかな。LP時代のカードって、たいがいジャケットを覆い尽くさないくらいの大きさだったんです。それがそのうち書ききれなくなってLPの上にはみ出していく。やっぱり人目につくようにしたいから、ダンボールに書いてみたり、写真貼ったり、形も不定型になって、だんだん派手になる。
――そういうコメントカードをつけはじめたのはいつ頃からですか?
80年代前半はまだ、プロデューサーが誰で、ゲストが誰でっていうクレジット系が多かったかな。もちろんパイド・パイパー・ハウスさんとかCISCOさんとかでは、すでにやっていたと思うんだけど。それが80年代中盤から徐々に、バイヤー独自のレコ評に変わっていったよね。
――形式的なものから、個人の思いが入った「レビュー」になったんですね。
その頃って、タワーの中でも、どこの店がいい音楽を先に見つけてチャートをにぎわすかっていう、バイヤー同士の戦いがあったわけ。そういう戦いが繰り広げられた結果が、エスカレートしたコメントカードだったりディスプレイだったりしたんですよ。
――そのあとから現在まで、POPに変化ってありますか?
大きくは変わってないんだろうけど、だんだんと画一化してきてる気はするよね。パソコンが発達して簡単にコピペできるっていうのも大きいと思うけど。でもそういうPOPは、情報としてはいいけど訴えかけないんだよね。やっぱり手描きじゃないと魂が入らない。字なんか下手でもいいわけ。“一生懸命売りたい” “届けたい”って気持ちが重要だから。
――今、POPを描いているショップ店員さんに伝えたいことは?
僕がよく言ってたのは「好き嫌い」「売れる売れない」「売る売らない」、3つのバランスをうまくとること。まず、好きか嫌いかを判断する。で、次に売れるか売れないかを確認して、最後にそれを自ら選んで売るか売らないかを決める。どんなに嫌いなアーティストでも、売らなくちゃいけないときもあるんだから。いいものが必ず売れるわけじゃないし、悪いものが売れないわけでもない。だから音楽って難しいんです。
――それは、大型店で働かれていた小澤さんならではの意見ですね。
売れるものをただ売るだけなら、バイヤーに能力はいらないじゃない。ときには、自分の力でゼロだったものを10、20にしていく、それが楽しみのひとつなんですよ。そういえば僕、いまだにコメントカードがきっかけで連絡取り合ってるお客さんいるよ。
――え、どういうことですか?
僕が推薦してるものは自分の音楽観に合うからって、カードの文字を探してずっと買ってくれてたの。で、1年くらいしてから、「これ書いているの誰ですか?」って質問されて、いまだに会ったりしてる。バイヤー冥利につきるよね。
――すごい! ステキな話ですねえ。では最後に、小澤さんにとってPOPとは?
店に入ってきたお客さんに、売りたい商品、気になってる商品を気づかせる「見せるプロモーション」。あとは「バイヤーの愛や魂のこもっているもの」かな。
予想どおりというか何というか、今回も「POPの元祖」にたどり着くことはできませんでした。でもそれより、こういう興味深いお話を聞けたということが重要なわけでして……。と、軽く開き直ったところで、2回にわたってお届けした「POPの起源を探る」を締めくくりたいと思います。長門さん、小澤さん、本当にありがとうございました! 
さて次回は、ある国の音楽に特化したCDショップのPOPを見にいく、「POP世界紀行」をお届けします。お楽しみに~!
※ちなみに、当総研において「POP」とは、「店頭のCDまわりのコメントカード(リコメンドカード)を中心としたディスプレイ」と定義します。

研究レポート

  • ★大規模ディスプレイは、レコード棚の「手描き文字の仕事」からはじまった。
  • ★コメントカードは、バイヤーの魂がこもった「レコ評」である。
  • ★POPとは「見せるプロモーション」だ。
  • ★ショップ店員3箇条、「好き嫌い」「売れる売れない」「売る売らない」。
  • ★ときに、POPが結ぶ友情もある。

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