「CDショップの未来を語る」対談・後半(2020年9月)
<対談>
山野楽器 EC営業課 仲西正代さん(CDショップ大賞実行委員長)
平安堂 物販事業部 秋澤加代さん(CDショップ大賞実行委員)
聞き手:CDショップ大賞事務局長 高安紗やか
<前半>と<後半>に分けてお届けしています。
前半に続き、後半をお届けします。
<後半>
日々の膨大な情報をインプット
―お二人ともジャニーズファンではないじゃないですか。ジャニオタでもないでしょ?
でも、ジャニーさんがこう言ってた、椎名林檎さんがこう言ってた、中居くんがこう言ってたっていう外からの声もキャッチしながら、あの曲がいいよねって知ってるわけじゃないですか、そういう膨大な情報を自分の中にインプットするのって長年の積み重ねじゃないですか。お二人ともどうされてるんですか?
仲西:もう自然に身についちゃってるんじゃないですかね。
秋澤:そういう感じですね。でも取捨の中の一つかもしれないんですけれど、私、改めてHey!Say!JUMPの顔、全員わからないなって思いました。本当はインプットされてなきゃいけないんでしょうけれどね。
仲西:顔と名前は覚えようという意識はありますよ。あと誰なんだろうっていうのは音楽を売るのに知らないのは許されないんじゃないかっていうのは自分の中であって、それは覚えなきゃなっていう意識はありました。今はちょっと膨大すぎてなかなか難しいですけれど。
嵐とか、SMAPとかテレビに出てるグループは自然に見てて覚えられますけど、今、ジャニーズとかって新しいグループも人数も多すぎて…(笑)。Travis Japanとか、何人組とか。でも意識してます。
秋澤:ネットの記事もそうですけれど、特にテレビを見ているときは楽しみつつ、半分どこかで仕事モード?
仲西:確かに。明日どのぐらい話題になるかな?って常に意識はしてますね。
秋澤:CMもなるべく見るようにして、「何、この曲」とか、「このCMこの曲使ってるんだ」とか、頻繁に使っている曲とか。
仲西:あと(今の部署では)事務所でラジオをつけているんですけれど「またこの曲かかっているね」とか「話題になってるね」とか。
―日頃の商品知識などを色んなところからインプットしつつ、テレビ・ラジオもチェックして補完されていると思いますが、SNS関係はいかがですか?
秋澤:一応、twitterのトレンドサイトはチェックしますね、あとテレビを見終わってからもチェックしますね。反応出てるかなとか。あと、Amazonさんの急上昇ランキング。
仲西:それは見ますね。
秋澤:あれは絶対、見ますね。
仲西:あれは、リアルタイムで見ますね。
秋澤:24時間の上昇度合い、ランキング、単純な総合順位とは違う..。
仲西:売り場にも直結してて、それを見て私たちが思うのと同じレベルでお客様も自分でYouTubeとかチェックして「いいなぁ」と思ってCD買おうかなとかっていうのに繋がっているんだと思うんですね。試聴がわりにYouTubeとかiTunesとか使っている人が多いって聞くんですよね。
―Spotifyとか、Amazon Musicとか、Line Musicとか色々あるじゃないですか。プレイリストだったりとかチェックしたりしますか?
秋澤:今時、ガラケーなんで基本的にはしないですね、ただたまに、月に1回程度ざっと見るっていう感じですかね。今、オリコンさんがそういうのをまとめていらっしゃるので、オリコンさん見てればいいかな、というのもあります。
仲西:SNSで10代とか20代とか若い子の会話とか見ていると、どういうことを今喋っているとか、結構面白いんですよ、さりげなく「こういうの流行っているの?」とか聞いちゃったりして(笑)。参考になってます。
今こういうのが流行っているんだな、とか思いながら、その人たちがいいね!とかしたのもタイムラインで流れてくるので、あぁ、今、こういうのをいいね!してるんだな、とか。藤井風さんもCD出るタイミングで皆、すごく騒いでいたので、改めて内容聴いていいなと思ったりとか、
秋澤:意外と、びっくりする位、若い子のファンが多いんですよね、藤井風さんって。結構、中学生とか聴いてたりするんですよね。それがびっくりしたんですよ、私。80年代から90年代っぽい音作りだから、40代とか、Nulbarichとか聴いている子達が聴いているのかなと思ったら、中学生?!って。
仲西:親も聴いているとかなんですかね、結構、親子で聴いている人が多いなって思います。
仲西:SNSでカバー曲だったり、いろんな人に聴いてもらう機会、藤井風さんとかもそうなんですけど、YouTubeでカバーしててすごく評価されたりとか、そういうのも最近関係しているような気がしますね。
秋澤:さっき一瞬思ったのが、うちの場合はジャニーズのベスト、新旧含めて割と動きますよっていうのは、例えば、専門店だとCDを買いに行こうという人しか来てない訳ですよね、おそらく。うちの場合、幸いなことに本、買いに行きましょうっていって、あぁCDあるんだ、ちょっと…っていう“昔、聴いていたけど今は聴かなくなった”、それで思い出して買ってくれる。そこはメリットだと思うんですね。
だから絶対、少年隊のベストは欲しい!(少年隊『少年隊35th Anniversary BEST』発売発表前)
―SNSが発達して、視聴して買いに来るという現象もありつつ、今後、嵐不在のCDショップの未来はどうなっていくんでしょう。
秋澤:キンプリとSnow ManとSixTONESに頑張ってもらうしかないんですよ。
デカジャケ需要
仲西:飾っておけるようなジャケット、LPサイズとか。最近多いじゃないですか、レコードサイズ。
秋澤:多いですねー。すんごい多いんですよ。
仲西:レコードが売れているっていうのも言われていますが。
秋澤:いわゆるデカジャケット。
―そういうの、ちょっと..って思ったりしません?
仲西:お客様からも「今までずっとプラケースで揃えて棚に入れてたのに入んないから困る」って言われたこともあります。
―よく、レコード会社の営業の時、CDショップ店の店長から、特殊パッケージとかやめて欲しいんだよなーとか、よく言われたんですよね。
仲西:陳列がしずらいですからね、ダミーケース(見本品)作ってやってますけど…。
秋澤:ダミーも特殊すぎる、出来るだけ完璧に現物に近いものは売れるんですよ、完成度の高いものは。普通の形にしちゃったら売れないから…大変。
仲西:縮小しちゃうと全然…。嵐の時もそうでしたけれど、LPサイズだったんで、現物を置くとガンガン売れてたんですよ。CDのサイズに縮小したダミーケース(見本品)で置いてもイマイチで、手にとって「やっぱり欲しい」ってなるんだと思うんですけどね。
アナログレコードの需要
―いっそのこと、レコードがCDを凌駕するような形になって、LPレコードの中にCDかレコードかどっちか入っているか、もしくは一緒に入っているかっていう形でまた1980年代の棚とかに戻るとか…
仲西:レコードにダウンロードカードがその中に入っているとか。
―それって日本でもありえますかね。
仲西:もうやっている人いますよね?
―はい、それが普通になるのか。
仲西・秋澤:どうなんですかね….
仲西:変わっていきたいけど、そんなにいっぱいは…。
秋澤:難しいなー。
―アナログレコードって、私、レコードストアデイの事務局もやっていましたので、今、あの頃と違ってレコードも売れてきていますし、一般的にいろんなアーティストがレコードを出すようになってきていると思うんですけれど、もう一方ではCDの生産量も頭打ちになってきたりしているじゃないですか。そうなってくると、CDってそもそも大量生産するために、ある意味あって、でも大量生産する必要がそんなになくなってきた今、1万枚売れたら結構ヒットっていう感じになってきていると、じゃぁ、レコード作った方が良くない?っていう感じになってきたりしないのかなって。お店としてもじゃあ、レコードの方が売れるんだったらレコードもうちょっと置いておこうか、という流れになってたりしないですか?
秋澤:少なくとも地方はまだそこまでじゃないですよね。ただ、確かにアナログ需要はあるので、中古LPセールっていうのを催事としてはやります。そして、すごく売れます。
―それは若い人も買っていきますか?
秋澤:いえ、年配の方ですね。コレクターって感じですね。単純にアナログを再生する機器がまず普及しない限りは。だからパッケージとしてLPジャケットがあって中にミュージックカードが入ってるみたいな、ダウンロードカードが入ってるみたいな、そういう形ならまだ分かるんですけど。
―ある意味デカジャケットっていうもの自体がお部屋に飾る特典みたいな…。
秋澤・仲西:そうそう。ポスターの代わりですよね。
仲西:特典が最近減ってるんで、結構、今ポスター喜ばれてるんです。一時期持って帰るのが邪魔だって減ってたんですけど、最近はポスターの特典自体があまりないんで、結構大きいのが欲しいっていう人多いらしいんですよね、飾りたいっていう。なんかレコードだと形がいいんで飾るとかっこいいじゃないですか。
秋澤:ポスターよりも場所取らないからね。
―ドラマとかCMとかでも最近、アナログレコードが使われたり、飾ってあったりすることが増えましたよね。
仲西:インテリアになりますもんね。
―山野楽器さんではアナログレコードの取り扱いが増えてたりしますか?
仲西:催事をやっているお店ではそれなりに人も来ますのでやった方がいいんじゃないですか?という話は聞きます。
秋澤:都内でもアナログレコードで成功しているところって実はそんなにないのかな?
ディスクユニオンさんは元々ずっとやっていますから別として。
― 一般的になるっていうことは、ディスクユニオンさんだけじゃないところでも、一般的に売っているっていう形にならないとなかなか広まらないですよね。どこのお店でも置いてあるっていうことが広まっていくっていうことだから、この先、嵐以降、嵐活動休止以降のCDショップの未来を考えると、さっきおっしゃった嵐に代わるジャニーズさんの新人なのか、あと、もう配信やっていないレーベルとか、もうほとんど解禁しているから限られていますよね。中島みゆきさんとか、山下達郎さんとか…
秋澤:配信のための配信で聴かせる、音も全部作り直さないと達郎さんは。一番その状態でいい環境で聴ける音をまず作るところから始まりますよね。今度はアナログレコードを出したりするんじゃないですか?(※この対談後、3点のアナログ・リリース発表。)今度、浜田省吾さんもアナログレコード出しますものね。それだったらファンの人は喜んで買いますよね。滅多にうちは店頭でアナログレコードを扱っていないのでそんなに予約は入らないんですが、今回は早いなぁと思って。
仲西:世代もあってるし、ドンピシャっていう感じですかね。
―昔、私の世代は学生時代にアナログレコードを買っていて、そこからCDに変わっていってという時代でしたが、またアナログレコードに戻っていく。でも若い子たちはアナログレコードがオシャレだとか。
仲西:でも不思議ですよね。一時期、MDがありましたよね。あんな小さくて持ち運びも楽だったはずなのに全然普及しなかったじゃないですか。
秋澤:いつの間にかなくなっちゃいましたよね。
仲西:あれ、全然売れなかったですよね。小さくなればなるほど、みんな買おうっていう意欲がなくなっちゃうんですかね。なんかこれだったらいいやっていう感じなんですかね。なんならUSBくらい小さくなるのかな、SDカードとかになるのかなって思ってたんですけど、全然でしたし。でもアナログレコードは出せば売れてたりとかもしてるわけですし。
―お二人の話を聞いていると、よく言われているのが「もうCDは終わりだ。これからはアナログレコードでしょ。」っていうのとか、実際の店舗ではアナログレコード取り扱いしてないんだけど。「もう、配信でしょ。CDはオワコンでしょ。」っていう話だったりとか。すごくマイナスなイメージがあったりしますよね。
でも、CDショップの方達はCDを売ってるけれど、極端な話、CDがなくなっても…。
仲西:CDじゃなくても、音楽を売る店舗になると思うんですよね、私は。
―全然悲壮感とかという感じじゃないですよね。
仲西:アナログレコードジャケット1枚でいいから、それを展示して、カードが後ろにあってそれを、“はい”って渡す方が、CDで作るより全然生産もできるじゃないですか。店舗で音を提供するっていうのはもちろん、音質も求められると思いますし、もちろんそれにあった再生機器も。
―それこそAmazonでパッケージ買ってダウンロードすれば済む話にもなっちゃう…
仲西:シリアルコードいれてとか。
CDショップに行く意味
―そこでお店に行く意味っていうのが、より求められていくのかなって。改めてお店ならではのエピソードってありますか?
秋澤:マニアックなものをお探しのお客様にブルースのCDを勧めたりとか、あとはエアロスミスを探している方に、ちょうどスティーヴン・タイラーの新譜が出たんですって言ってもう1枚買っていただいたりとか、とかありますね。
―CDショップに行かないと、なかなか自分では探せないことがありますよね。思い出せなかったり、新しい出会いも難しいかもしれないし。
秋澤:ウィズコロナでどういう業種が減っていくか、衰退していくかっていう中に接客業、接客員っていうのが出てたんですよ。あー、確かにそうかもしれないけれど、だからこそ逆にいうと私は、こういう言い方しちゃいけないんだろうけど、CDっていう業態に限らず、接客業こそ本当にどの業態でもいいけれども、(接触機会を減らさなければいけないからこそ)より接客技術、スキルじゃなくて、笑顔もそうだし、対面スキルを上げる、対面感受性を上げる、そのことは本当に必要だろうし、そうしていかないとなかなかショップっていうのはどの小売にしても厳しくなっていくだろうなっていう気はします。
知識っていうのは、私がよく担当者に言ってるのは、簡単に言ってしまうと発注なんかは私が代わりにやってあげます、売り場の棚を作るのと接客は、絶対私にはできないから、そこを頑張ってください、POPを作るものそうだし、もしくはPOPも作ってあげる、こういうのを作って欲しいっていうのをちゃんと言ってくれれば、それに合わせて作ってあげるからって。ただ、作ったものをちゃんと設置して欲しいし、あとはプラスアルファ、そこで私がやってる分、例えばそこで少し余剰が出来るんだったらそれは自分でPOPを作ってもいいけれど、あとはとにかく棚を触りなさい、棚を触ってないと、それってお客様に絶対バレるよって言いますね。
仲西:そうですよね。
CDショップの棚
―棚を触ってないとというのは….
秋澤:入れ替えもそうですし、面をどうするとか、当然お客様はそんなの気にしてないから、棚にバラバラに入れたり戻したりするじゃないですか、それが整ってないと。
仲西:面陳列を変えるとするじゃないですか、テレビで取り上げられたとかいろんな理由で。すぐ、売れるんですよ。さっき秋澤さんもおっしゃてたように、手を加えると、ちゃんとピンポイントで売れていくんですよ、一瞬、万引きされたのかな?って思ってしまったりするんですけれど(笑)、さっき売れましたよって報告受けたりして。結構そういうことがしょっちゅうあるんですよね。だから小まめに面陳列を変えたりしてたんですけれど。やっぱり生きているって言うか、置きっぱなしの状態のままにしないで動かした方が生きてきます。
秋澤:そうですよね。別に埃かぶってるわけじゃないんですよ、掃除してるわけですから。ただ不思議と動いているのが伝わるのかなと思うくらい。
―お客さんにとっては気づきなわけですよね。
仲西:たまたまその人の目に入っただけなのかもしれませんけれど。
―先ほども話に出てましたが、YouTubeやサブスクも視聴していると自分の好みばかりが出てくるけれど、お店って別に自分の好みじゃないものもあって、面陳しているのがパッと目に入ると、例えば聴いてこなかったけれど、案外聴きたいと思っていて買ったりとか。
探して欲しい
仲西:そう言うのありますね。POPに「糸」を収録って書いてあると、「今、映画やってるな」って思い出して買っていかれたりとか。あと、お店に来るもう一つの理由って、「探して欲しい」って言うのがすごく多いんですよね。鼻歌で歌ってくださったりとか、歌詞で、歌詞というかストーリーで「こういう感じの曲なんだけど、どの曲か思い出せないから探して欲しい」とか。売り場の若い子ってその点、ネットとかで調べるのは私たちよりも上手でピンポイントで探し当てたりするんですよね。
秋澤:探し方はやっぱり若い子はうまいんですよね。
仲西:そういうのもお店だからこそ、接客だからできることですから。
秋澤:その場で歌われたりとかね。
仲西:お客様にすっきりとした気分でお帰りいただくと言うか、そういうのも大事な仕事にしていく、お客さまと一緒にお調べして欲しいものを手にしていただくお手伝いができればなって。
―知識っておっしゃったように検索すれば出てくるわけだから、知識は限度がないし、どんどん新しいものが出てくるし、下手したらお客さんの方が知っている場合もあるし、追いかけごっこだし、でもそれよりもどう探してあげられるのかとか、どうお客様と一緒になって考えてさし上げられるのかっていうのがやっぱり大事なんだなって改めて思います。
CDショップ店員はプロだから
仲西:それはネットとか機械ではできないことですよね。『99人の壁』でも「音楽のプロ」って紹介されてお客様によってはCDショップ店員を「音楽のプロだから」って言われる方も実際いるんですよね。だから店員さんはもっと「音楽のプロだ」っいう「意識」に立った方がいいと思うんですけど、「バイトだし」とか、意外とそういう風に自分がプロとして見られてると思っていない人が多いと思うんですよね。
秋澤:特に演歌やクラシックやジャズって到底かなわないっていうときは(お客様の)お話を聞く。例えば「ボヘミアン・ラプソディ」が流行ったじゃないですか。女性ファンが懐かしくて昔を思い出して、映画の興奮が残ってどんなに素晴らしいかお話されるのを聞いて会話ができる、すごい気持ちよく帰っていただける、ちゃんと気持のいい接客ができるのがいいかなと。
―以前、ショパン(CHOPIN)を探しているお客様にSの棚を見てありませんと答えられた店員さんもいたという話を聞いたことがありますけれど、せめて聞いたことがある名前だから、あるはずだと調べて欲しかったなということもありますね。
仲西:そうなんですよね、せめて自分の店に何があるのかは知っておいて欲しいと思いますし、アーティスト名間違えるのが一番ダメだと思うんですよね。意外とあるので。よく注意します。せめてこの仕事している限り敏感になっていないと、名前だけは間違っちゃいけないから読み方を思い込みじゃなくてちゃんと調べて覚えて欲しいですよね。
―レコードメーカーはアーティストが自分のレコード会社の契約が終わったらそれでそのアーティストに関わるのは仕事上では終わりですけれど、売り場は関係ないですよね。アーティストがどこのメーカーに行こうがずーっとお付き合いが続いていくって、それってすごいことですよね。辞めるまではずっとですよね。ある意味そのアーティスト生命の一生のお付き合いですよね。
仲西:最近、SNSやオンラインでもアーティスト名の読みを間違われている方もよく見かけるので、敢えてアーティストやタイトル名に<読み>と書くようにもしています。
秋澤:うちもそうです。うちは複合店なのでCD売り場の担当者がいない時に他の売り場の人が接客応対することもあるので、わかりにくい読み方のアーティストはふりがなをつけて探しやすくしたりします。告知POPでも。
―なかなかメディアに出ていても、ふりがなとか書いてなかったりするから、しかもうろ覚えだったりして、色々ネットを調べたりしますよね。
仲西:当て字だったりすることもあるし、結構普通に疑いなく調べないで読んでしまう店員も中にはいるので、そういうことも含めて音楽のプロという意識でCDショップ大賞の投票にも挑んで欲しいんですよね。一般のお客様と同じレベルで選んでてはダメじゃない?って。正直。
―私は、CDショップ大賞の選考時に何かで線引きしないっていうのは、誰よりもお客様と接して、それは売り場じゃなくても売り場から伝わってくる熱もあると思うんですね、そういうこと含めてCDショップの人というのは、ダイレクトに感じているから、だからいかに音楽マニアの人たちが何か言おうが、「これはCDショップのプロの人たちが選んでいるんだから」っていう思いが私にはすごくあります。私は誇らしく思っているんですね。
秋澤:大昔、ミュージシャンの子にCDショップは好きじゃない、店員が好きじゃない、って言われて。何でって言ったら、例えば今八百屋に行ったら、旬は何々だってちゃんと教えてくれる、自分の八百屋さんの商材は全て答えられるでしょ、CDショップ店員はそれないでしょ?って。それこそうちも一人で全ジャンル見てる状態だから余計そうなんですけれど、専門店は専門店で分業化されてるじゃないですか。邦楽の担当の人はクラシックのことは当然わからない、っていうことも生じるじゃないですか。だから嫌いだって。プロじゃないって。もう何年前かも覚えてないんですよ、飲みの席で1回しか会ったことのない人に言われて、すっごいショックだったんです。いまだに忘れないですね。そこまでのものは全員に要求はできないけれど、そこまでの意識は持ってなきゃいけないし、逆に持っていなきゃいけない反面、甘んじてもいけない、自分はプロだっていうことも含めて。そこに近づけるように最低限はやっぱり…特に立場的にお店の担当者じゃなくて本部でバイイングをやってるんだったら全部のジャンル、一生懸命知ってなきゃいけないんで、まぁもう聞きかじり程度で浅く広く、です。だからクラシックも聴いてるわけじゃないですよ、ジャケットで覚えるんですよ。雑誌で見て、このジャケットはこれだ、目で見て聞かずに。っていう感じですね。
―こういうお仕事って売り場以外の時間も、仕事みたいな。これって好きじゃないとやっていけないですよね。
秋澤:お店だけじゃなくて、チェックはしてますね。
手書きPOPについて
―POPって変わってきていますか?
秋澤:手書きPOPは全体的に減っている感じはしますね…単純に手が回っていないんじゃないかな。
仲西:ミウィ橋本店ではPOPや書くことが好きで採用した子ばかりなので、割と上手に書けるんですけれど、今、パソコンばかりなので手書きをしないというか、打ち込んで作るのは得意なのかもしれないですけれど。「字が下手なので書きたくないんですけど」という方も時々いて、全く書く意思がない子は採用はしないんですけど、POPを作る意味はお客様一人一人に声をかける代わりに、見て読んで購入につなげる「キャッチ」だからって説明したりします。
―CDショップでは当たり前のように昔からやっているPOP作成を、こういうことをすれば売れるんですっていうのを全く他の異業種が、今、この時代に伝えたりしているのを聞いたりします。
今は、コロナ禍で人の行き来が思う様になりませんが、お店の変化はありますか?
仲西:うちは楽器も置いているので、楽器をまた習いたいとか、お家で楽器を楽しみたいといった様に、楽器の需要が増えています。
秋澤:うちは書籍、CD、ゲームなどお客様が安心を求めにいらしている様な感触があります。
この後、CDショップ大賞の開催について色々意見を交わし、話が尽きず、あっという間の時間でした。お二人ともCDショップのプロフェッショナルとして今まで経験した中から、思うことも考えていることもたくさんあってもっと話をしていたいなという気持ちになりました。また、マイナスのことを考えるよりも、常に前向きに取り組み、邁進していく力が今の実績にも繋がっているのだなと思いましたし、何と言っても日頃の情報収集力。
頭が下がります。プロとして当然のことと言えばそれまでですが、やはり音楽が好きでやらずにいられない、好きだから突き動かされる、その気持ちがとても伝わってきます。
「CDショップの未来を語る」と題して、お話を伺いましたが、CDの売り上げが落ちてるから、CDショップの未来は悲観的に言われがちですが、この激しく変わりゆく時代の中において一つでも安定したものは逆にないのではないでしょうか。それよりも、何が自分たちにできる強みなのか、そこを考え、未来に向かって音楽の持つ本来の力を信じて前に向かって進みゆく、素敵な女性二人のお話を聞くことができました。
CDショップ大賞の投票ももう直ぐ!第13回CDショップ大賞もお楽しみに!
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