第4回CDショップ大賞2012授賞式 第2部パネルディスカッション~CDショップの未来を語る~

 大変お待たせ致しました!!リクエストを多数お寄せいただいておりました「第4回CDショップ大賞2012授賞式 第2部パネルディスカッション~CDショップの未来を語る~」をweb上で再現します。見逃してしまった方はもちろん、Ustream配信をご覧になった方ももう一度じっくり読んでくださると嬉しいです。

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■登壇者(敬称略)
総合司会:藤田琢巳
柴田一良(かけはしレコード元店員)
中島光英(山野楽器営業戦略部販売促進室)
伊藤 晃(スクラム大河原店 店長 東北ブロック長)
余 珠希(タワーレコード商品本部邦楽部)
伊藤 威明(HMVイオンモール与野店 関東ブロック長)
大畑 亨(フタバ図書CDVスーパーバイザー 九州ブロック長)
野々口 敏之(新星堂 商品部部長)
行 達也(mona records店長)
金田謙太郎(ヴィレッジヴァンガード下北沢店CD担当)
ピエール中野(「凛として時雨」ドラム)
ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
臼井孝(音楽マーケッター)

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第4回CDショップ大賞2012授賞式第2部パネルディスカッション
~CDショップの未来を語る~

鈴木: これからCDショップ大賞第2部の「CDショップの未来を語るパネルディスカッション」を始めたいと思います。私はCDショップ事務局長、ミュージックソムリエ理事長の鈴木と申します。今日は全国のショップ店員さんと、今の音楽業界をリードするプランナー、マーケッター、ライター、アーティストの方々に集まっていただいて、ディスカッションを繰り広げていただきたいと思います。それでは総合司会の藤田琢巳さんお願いします。

藤田: J-WAVEのナビゲーター藤田琢巳と申します。今日は12名というパネリストをお迎えして、忌憚なきご意見をお聞きし、激論を繰り広げていただきたいと思います。またこの模様はUstreamでも中継しておりますので、皆さんにも参加いただきまして、CDショップの未来を語り合っていけたらと思います。まずは、CDショップを取り巻く現状をご覧ください。


音楽ソフト生産金額と店舗数の推移
※店舗数の推移は、日本レコード商業組合加盟店様のデータを元に一般メディアで紹介されたデータにつき一例になります


CDシングル生産金額

※参考として他に「アルバム生産金額」「有料音楽配信金額の推移」「ミリオン認定作品の推移」の各グラフと、「2011年オリコン年間チャート CDシングル」「2011年オリコン年間チャート アルバム」をご紹介しました。

藤田: まずはパネリストの皆さんお一人ずつ、今ご覧いただいたデータをもとに、ご自身の立場でこの10年間を振り返っていただきたいと思います。

柴田: ディスクユニオンで働いていた10年前は、お客さんは非常に景気が良かったと思います。その後、2、3年前に博文堂(?)で働いていた時は全然様子が違っていましたね。それから、ディスクユニオンの時には島ごとにどのCDを置くかという選択は、自分たちで考えるプロセスがありました。博文堂の頃には自分が売りたいのはこれだというよりは、売るものが決められていました。クリエイティブな面で発揮する場所が減ってきたように思います。

中島: (グラフを見て)CDが売れなくなったのは、CDを買っていた人がCDを買わなくなってきたのかなと感じました。音楽っていうのは若い人たちが引っ張っていくものだと思うんですけど、今の若い人たちはCDを買わなくてもいろんなルートで音楽が聴けるようになったし、音楽を聴くツールがPCやモバイルに変わってきたから、CDを買うという行動に至らないひとつの原因を作っているのかなぁという気がします。ウチ(山野楽器)は、今までは年配のお客さんがCDショップに来ることが目立たなかったんですけど、最近は大人の人たちがCDを買いに来ています。もしかしたら若い人たちが減ってきて、大人の人たちが目立つようになったのかもしれないですね。

伊藤(晃): この10年でお客さんの店内の滞在時間が短くなったんじゃないかと思います。それは今日はこれを買おうと目的がはっきりしているからだと。10年前は、CDショップのコメントだったり試聴機だったりを使って、2枚3枚と複数枚買う方が多かったんだと思います。今は買ったらすぐに帰ってしまう。厳しい言い方をしますと、おもしろいお店作りができていないことがあると思います。

余: ウチ(タワーレコード)は比較的、若いお客様が多いんですけど、最近は若いお客さんよりも30代、40代のお客様の数のほうが増えてきたなっていう感覚がありますね。昔からタワレコが好きで通ってきてくれた方が、年を重ねても買いに来てくれていて。若い方は減ってきてはいないとは思うんですけど、以前ほど若いすべての方がCDを欲しい、音楽が聴きたいという感じではなくなってきてるのかなと。でもライブやフェスには若い方がたくさん集まっていて、音楽は好きなんだけれどもCDを買うだけが音楽じゃないっていうふうに考えられている方が増えているんじゃないかなと思います。

伊藤(威): 10年前はHMV渋谷で洋楽のロックの担当をしていて、ファックスとかでくる海外の注文書を見て、ちょっと渋めの情報が載っているCDがあると自分用に取り寄せて聴いてみて、ジャケットを見て、これはいけるかなと思ったら上司と相談して、オッケイが出たら100枚仕入れて試聴機でドーンとやってみたりっていうのがあったんですけど。それから徐々に減っていったんですね。それは、その頃からMySpaceだとかYouTubeで曲が聴けるようになってきて、ちょっと気になるアーティストがいるととりあえずネットで聴いて、それで選定してから購入するっていうプロセスが生まれてきたんです。お客さんにとっても同じ状況で、これはお店にとってはマイナスなんですけど、お客さんにとってはプラス。それがCDの売上が落ちてきている原因なのかなって思います。

大畑: 僕は1981年から音楽ソフトを売っているんですけど、去年の売り上げや総生産枚数は、80年代後半の数値と変わらないんですね。僕が売っていて、すごく売れたなっていう時代がそのバブルの頃で、それが一緒だっていうのが不思議です。お店の数は減ったんですけど、メガストアが増えてパパママショップと言われていたお店が減ってきたのが大きな影響を与えているんだろうなと思います。この10年で変わってきたのは、店頭で売れているアーティストもコンサート会場の即売で売れるということですね。

野々口: 10年前と比べて変わってきたのは、女性のお客さんが多くなったことですね。男性の方はネット通販に流れているのかなと思います。大型店と比べて私どもの店舗だと、いいところが出しづらくなってきています。リストラで人も減ってますし、そういう意味でもお店の愛情というのが出しにくい時代になっています。女性が増えることは悪くなくて、むしろ女性にウケるものは必ずヒットしますので。でも、男性客を呼び戻す意味でも、在庫を増やして、コメントをいっぱい書いて、愛情のあるお店を増やしていくしかないかなと思っています。

行: いやー、今日のなにがすごいって、このメンバーは集まらないですよ。レボリューションです。しかもヴィレッジヴァンガードの金田さんがいらっしゃるっていうのはレアですよ。それがすごい。

金田: ウチ(ヴィレッジヴァンガード)はそもそもCDショップではないので、かなり場違いなんですけど。ウチの場合は、靴下とかワンピースの最新刊にCDが勝たなきゃいけないわけです。商品的な面から考えると、CDはまず高い、そして雑に扱えないからすごく大変、ケースが割れやすい、CDが傷ついたら再生できない、ということを感じます。だから、ウチで扱っているCDは、安くていっぱい曲が入っているもの、割とケースを雑に扱ってもいいものですね。商品としてのCDを考えると過渡期のメディアなのかなぁとも思いますが、ライト層の方はCDを買われます。10年間で変わったことと言えば、試聴機を減らしました。例えばライトノベルのコーナーで初音ミクを流して、アウトドアグッズのところにはジャムバンドを流すとか、店をぐるっと回った時に自然にいろんなBGMが耳に入ってくるようなカタチに変えました。

ピエール中野: 10年前はお金がなくてCD買えなくて。好きなCDしか買ってなかったですね。音楽を好きな人は増えてると思うんですよ。グラフは下がってますけど、音楽を手に入れる手段はたくさんあると思います。でも、ハマれるミュージシャンが減ってきていると周りでよく聞くのも事実です。僕は買う側としてCDショップに行ってたんですけど、行くとわくわくして、足を運んでみると実におもしろくて。新しい出会いがあるんじゃないかと思って利用していました。

ふくりゅう: 僕はいま35歳なんですけど、僕ら世代ではかっこいいコンポとかかっこいいラジカセとかに憧れて、家で音楽を聴く楽しみがあって生活に溶け込んでいました。今みたいにパソコンやケータイになってしまうと、音楽のライバルになるものが多すぎるなって思います。そんな中で最近CDショップでも扱われることが多くなってきているんですけど、PLAYBUTTONTM(プレイボタン)ていう曲が入った缶バッチ型のプレイヤーがあるんです。缶バッチの裏に再生ボタンがあって、買ったらすぐに音楽が聴けるんです。CDだと買ってパソコンに一度取り込んで、プレイヤーに戻さなきゃいけないとひと手間あるじゃないですか。そんな中で店舗で買ってすぐ聴けるアイテムというのがあると、もしかしたら若い子でも手にとりやすくなるんじゃないかなと思ったりします。あと、Tシャツとかいろんなものに付けて販売もできますので、新しい音楽の楽しみ方を提案できるアイテムじゃないかなと思っています。

行: ということは、CDがもうダメっていうことなんですかね?

ふくりゅう: これはライブ音源とかコアな曲が入っているんですね。ですので、通常のアルバムはCDで買って、これはコアファン向けのアイテムになってます。中身を変えたりできないようになっていて、CDはCDで楽しんで、こっちはファッションと一緒に楽しむとか、新しいマーケットを作り出すっていうのが、これを作っている会社の考え方みたいですね。

行: 僕なんかは昔気質の人間なので、便利さっていうものが音楽の価値を下げているような気がしています。

金子: 好奇心っていうのはググって手に入れるもの。お金をなぜ払うのかっていうのは安心、安定、信頼を得る、そういう風にお金の使い道が変わってきているんじゃないかなと思います。これだけ検索エンジンとかが広がっていたら、お店に行く前にまずはググりますよね?これがCDの売れない原因だとは思わないですけど、ひとつの理由にはなっているのかなぁと思います。

藤田: CDというパッケージの存在意義と、お客さんを呼ぶためのお店の施策や取組と、そういう両方の転換期にあるのかもしれないですね。

臼井: ショップが10年の間に5分の1になっているということですが、2500店が500店というのは、もしかしたらTSUTAYAさんとか入ってないんじゃないかなと思います。他にも書店さんなどでも、CDの取り扱いはありますので、CDを販売しているお店は増えてきているんじゃないかと思います。このグラフだけでCDが終わりみたいに判断してしまうのはどうかと思いますよね。それから店内を工夫されているお店というのは増えてきていると思います。

藤田: こだわりや特徴のあるお店は、臼井さんにまとめていただいております。ご紹介いただけますでしょうか?

臼井: (手作りのPOPやアーティストコーナーなど、店員の愛情のこもった全国のCDショップを紹介)

藤田: 実際全国のお店で行われている施策のいくつかをご紹介いただきました。続いては、この10年で新しく取り組まれていることをお聞きしたいと思います。

伊藤(威): 大人のお客さんというニーズに着目しているっていうのが、ここ数年のことではないかなと。CDショップに来るのはあくまで若者がメインであって、若者を意識しながら商品を選んでました。だからその頃に足を運んでくださった方々をお店に呼び戻すっていう活動を行っているんじゃないかと思います。ここ数年は大人のJ-POPという言い方をしたりして、大人のお客さんの要望に応えられるような工夫をしてきたと思います。

藤田: 僕はDJイベントをやらせていただいているんですが、初めてDJをするっていう子がから、「実はこの音源はネットの動画サイトから音声だけひっぱってきたんです、再生できますかね?」って質問されて。再生はできるかもしれないけど、ひどい音になるかもしれないよって。そういう仕方でCDにしちゃう人がいるんだなってぴっくりしちゃっいました。

金田: 音楽はあらゆるカルチャーの良き隣人になれる唯一のジャンルだと僕は思ってるんですね。常に2番手でもいいかなと。音楽っていうカルチャーにお金を使ってくれさえすればそれでいいと思ってるんです。だからその動画サイトから音楽をひっぱってくる人も、音楽ファンと言いたいんですよ。そんな人たちに提示できるお店作りを考えたいなと思っていて、そういう取組をしています。

藤田: 音楽にお金を使うということについて、アーティストとしてはどうですか?

ピエール中野: ショップの展開で売上が変わるっていうのはまさにそうで。教則ビデオを出した時に、ちゃんとデータで出たんです。4倍くらいの差があったんですよね。ミュージシャン側としては当然いい作品を提供してるつもりなんですけど、その展開次第で売上が変わっていくっていうのは実際自分がやってみてわかったので、そのへんはこれからもお願いしたいなと思います。

余: インディーズとメジャーって分け方をあんまりしたくないんですけど、インディーズの人たちってプロモーションの仕方が、「これすごくいいアルバムなんで聴いてください」っていう方法か、「かっこいいライブをやって観た人がこんなライブをやるんだったらCD買ってみたい」っていう2つの流れしかないんですね。だからサンプル盤で熱心に音を聴かせてくれるんですよね。でもメジャーにいくと不思議なことが起こるんです。制作の方は音があがったんでっていうんですけど、いつまでたってもここには音が来ないんです。同じバンドでも、いつも通りの作品だったらこれくらい展開したい、でもいい作品だったらもっと頑張りたいと思っても、お客さんと同じタイミングでその事実を知るっていう状況なんです。

野々口: 昔ほど音を聴けないですね。聴かないで店頭に出すのが当たり前。良いのか悪いのかわからないまま出していくしかないっていうのが現状ですね。

藤井: ユーストで観ている方のつぶやきの中で、「POPやコメントを仕事をしながら作るのは不可能。だから愛がなきゃできないんですよ」と。そういう人間の熱意で、お店で展開していって、コミュニケーションが生まれていく。実際、独自の展開は難しくなってきているのでしょうか?

伊藤(威): 会社によって違うと思いますが、やる余地はあると思いますし、それができないようでしたらリアル店舗である意味がないと思います。そこはどの会社の方もわかってらっしゃると思います。効率性の問題ですとか、手間をかけるということで人件費の問題にもなってくるかもしれないです。でも、リアル店舗が存在して、そこで頑張っていくと考えている会社であれば、力を入れていかれるのだと思います。

野々口: そうですね。ウチは、お店に少しでも発注の権利を戻してあげようとそういう方向性にしようとしてますね。でも担当者が育たないと回っていかないのも確かですし、愛情のあるお店を作っていかないとダメなのもわかっています。来季のキャッチフレーズは“音楽の手触り”。これをテーマに展開していきます。

伊藤(晃): メーカーさんにも言いたいんですけど、「どーんと展開したいので返品条件付けてもらえますか」って言うと、ノーと言われてやりたくてもやれないっていうのがありますね。それから、CDは売れなくなってきても返品率っていうのは昔と変わってないんです。CDが売れなくなってくると、リベートも少ないし。ですので、そこからメーカーさんと一緒にやれたらっていうのがありますね。そのあたりを改善できたらなと思うんです。

藤井: CDじゃないメディアをCDショップに買いに行くっていうのはどうなんですか?

大畑: 去年、一昨年とビートルズとクイーンのUSBが発売されて、聴かれた方は驚かれたと思うんですけど、CDより音がいいんですね。24ビットで。そういうのは僕はすごく歓迎するんです。やっぱりいい音でちゃんと聴いてほしいっていうのが頭の中にないと、CD屋をやってる意味がないと思ってます。生活提案という意味では、いい音を聴いたときの感動はなにものにも代えがたいと思うんですよね。

金田: 電気屋さんに行くと、いまCDプレイヤーっていいところに置かれてないですよね。いま一番目立つところに置いてあるのはイヤホンとヘッドホン。CDの売上は落ちているんですけど、イヤホンとヘッドホンの売上は上がっているんですね。なんか、電気屋に行くとCDをホントに売りたいのかわからないような感じでちょっと悲しくなることがあります。

ピエール中野: CDショップでオーディオも売って欲しいですね。

野々口: 今年は高級プレイヤーを売るかっていう流れがあって。空気を鳴らして聴けっていうのがあるので。全部のお店がやれなくても、そういうことをやってかないとダメなのかなって考えてます。

行: でも今の若者たちはMP3の音に慣れてて、音へのこだわりがないように思えるんですけど。それは改善しないといけないですよね。

ピエール中野: それは知らないだけで。いい音があるっていうことを知らないんですよ。聴かせるとびっくりして、え、こんないい音なのとか。知らないだけでいい音を聴きたいっていう欲求はあると思うんです。

藤田: ピエール中野さんにツイッターを使って、「お店に求めること」「店員に求めること」で事前にアンケートをとっていただきました。いくつか紹介させていただきますと、「やる気のある店員に好きなように展開を組ませて、その展開を好きじゃないバンドにも応用させる」「全部の音源を試聴できるようにしてほしい」「音楽好きが居心地良くなれる雰囲気。立ち寄りたくなる店づくり」「店ごとの個性を出してほしい」「同じような品ぞろえだとつまらない」「地元バンドコーナーの充実」「歌詞カードを見られるようにしてほしい」「ポイント制度を充実させてほしい」などなど。

藤田: このディスカッションで、改善しなくてはならないことが多く出たと思います。そういうひとつひとつを解消できることで、行きたくなるようなショップや、CDを買うこと自体に価値を見出すことができるんじゃないかなと思います。最後に実行委員長、本日を振り返っていただけますか?

行: 皆さんキチンと考えられていて、参考になることをたくさんお聞きできました。僕なんかはPOPを見て、これで売り上げが変わるのかなと疑問視してたんですけど、実際売れているというお話も聞けて、そうすれば売れるのかという気がしました。全然ネガティブに考える必要はないんです。