11月9日発売の新譜で博文堂木更津店 柴田が購入予定のアルバムをご紹介します。
MIX NUTS HOUSE「My Magnolia 」
(ROSE-112 ブリッジ/rose records)
元リトルハヤタ、林漁太氏を中心とするロックバンドの2NDアルバム。幻想的に、ひずんだサウンドは、中期BEATLESからJIMI HENDRIXまで、英国サイケを彷彿させます。そして、ユーモア溢れる歌詞を乗せて繰り広げられる能天気なロックンロール。他と一線を画す強力な個性を持っているバンドです。今回はROSE RECORDS移籍、曽我部氏プロデュース!かつて、2009年1月1日発売の前作では「2009年度最高のアルバムはこれだ!」とPOPのキャッチでカマした、この私の期待を裏切らない名作となるはず。(じゃあ、CDショップ大賞の時、投票したのか、とか聞くのはヤボです)。本秀康氏がジャケを担当。
≪聴いた後レビュー≫
曽我部氏が「日本のキンクス」と評していますが、なるほど英国的なメロディのひねくり具合、ユーモア感覚、愛嬌のあるポップな楽曲は正にキンクス。⑤「アルコールわっしょい」はその典型。②③と彼らにしては、ガッツのあるロック・ナンバーが続きますが、④以降は、従来通り緩く楽しいPOPナンバーで埋め尽くされております。前作での重要要素であったエコーが無くなるなど、アレンジは総じてシンプルな方針で為されており、より隙間が生かされた作りに。ガツンとくるロック・ナンバーから最後まで一気に聴かせる構成も含めて、個性がはっきりと伝わってくる軸がしっかり定まった作品となりました。プロデュース効果てきめんです。④「白鷺門で逢いましょう」はちょっとサニーデイ・サービスっぽいミドル・テンポのナンバー。英国のポップな側面を前面に出した日本人バンドは、今日絶対的に不足しており、彼らに掛ける期待は大きいです。次回大賞投票候補作品。
Humbert Humbert「さすらい記」
(UPCH-9603/ ユニバーサル)
遂に発売される新作。木更津では未だ、知名度も低いのが残念ですが、全国的にはもうフォーク・デュオの大物アーティストと言って良いでしょう。ベストやサントラなど、様々なアイテムが間にリリースされていたので意識しませんでしたが、前作から2年も離れていたとは驚きです。傾向として最近は、英国(アイリッシュ含む)トラッド色を強めており、今回は渋いアルバムに仕上がるのではと推理しておりますが、どうなのでしょう。ただ、曲目に関して一つだけ不満な点を挙げておきます。今作はユニバーサルに移籍しての第一弾となる訳ですが、既発楽曲を全て収録(ヴァージョン違いにしてくれている所を汲んだとしても)してしまうのは、ファンとしてちょっと残念と感じています。それを差し引いても今回のアルバムの質が高いことは容易に想像でき、今からでも初回DVD付をゲットする為予約をオススメします。木更津にお住まいのあなたも、当店まで是非。切実に待っています。
≪聴いた後レビュー≫
見事に予想が的中。今回の新作は、本格トラッド志向のアルバムとなりました。とにかく佐藤良成氏によるフィドルが全編で大活躍です。僕のような英国フォーク好きには溜まりません。とは言え、英トラッドと米カントリーの折衷具合が、正に初期FAIRPORT CONVENTIONの如く、絶妙なグループである彼ら。今回も渋くなりすぎず、親しみやすいメロディを随所に散りばめており、何も難しいことはありません。尚、ヴァージョン違いとして収録された再録音4曲は、かなり趣を変えているものもあり、楽しめてしまいました。
里帰り「ぼくとあなた」
(ORAA-60002 /Ondo)
ピアノ、ギター、ベースのトリオ編成に、男女ツインヴォーカルのアコースティック・バンド。2ヶ月くらい前に送信されてきたFAXからビビビと来て、調査。予約した1枚です。まだMYSPACEでも30秒くらいしか試聴していないのですが、「これはもったいない」と途中で止めたので大丈夫。イイモノです。気になったあなたはオフィシャルHPをチェック。(http://sato-gaeri.com/pg58.html)錚々たるメンツがコメントを寄せており、あなたの気分を盛り上げてくれます。レッツゴー。
≪聴いた後レビュー≫
聴後レビュー)楽曲は概ね、鍵盤と女性ヴォーカルを中心にしたもので、waffles、advantage lucyなどに通じる良く練られたポップなメロディが印象に残ります。先週の時点ではトリオと書きましたが、ドラムやヴァイオリン、エレキギターなど多彩な客演を迎えており、華やかな音です。ヴァイオリンが加わった楽曲ではよりドラマティックな演奏が楽しめます。唯一残念だったのは、男性ヴォーカルの出番が少なかったこと。このあたりはミニアルバムでもあり、楽曲の選定の過程で結果としてそうなっただけかもしれません。その辺りを含め、より一層磨かれた個性の発揮は、次回以降リリースされるであろう、フルアルバムを楽しみに待つこととします。ともかく、良い新人アーティストを発見出来たと思います。
深水郁「なしのつぶて」
(CXCA-1282 MIDI )
待っていたのです。前作のピアノアルバムも、もちろん素晴らしかったのですが。遂に出るぞ。深水郁、初のヴォーカル・アルバム。「健康家族・伝統にんにく卵黄」のCM曲は入っておりませんが、「栗まんじゅうの唄」を始め、21世紀に生み出される新しい童謡とも呼ぶべき、ほっこり出来る歌が満載。のはず。楽しみです。
「あや」と読むそうです。さて、まず訂正を。にんにく卵黄のうたは、⑬「うがい・手洗いの唄」として収録されておりました。ごめんなさい。全編ピアノ弾き語り。ブックレット裏表紙にはプロフィールが記載されており、そこには竹山聖氏によるキャッチフレーズとして「コンテンポラリーわらべうた」と紹介されておりました。(またまた引用、だって名言なんだもの)。タテタカコが好きな方には確実にストライクな音です。⑥「甘酒の唄」⑪「栗まんじゅうの唄」⑬「うがい・手洗いの唄」と、童謡を彷彿とさせるユーモラスで楽しい唄がある一方(作品の絶妙なアクセントとなっています)で、実は「眠れない夜に硬い硬いかりんとうを食べました」と嘆く①「かりんとうの歌」を代表されるネクラな楽曲が多くを占めています。ちょっと意外でありましたが、達者なピアノと共に、自身の歌声も印象的、アーティストの世界観は確立されています。貫禄十分。長く聴けそうな一枚です。次回大賞投票候補作品。