12月15日発売の新譜で博文堂木更津店 柴田が購入予定のアルバムをご紹介します。
スカート「エス・オー・エス」
(KCZK-001 カチュカ・サウンズ/ブリッジ)
昆虫キッズ、「yes,mama ok?」のサポート・メンバーとして活躍している澤部渡氏のバンド名義での初アルバム。メンバーは彼一人で、楽器を全て (ギター、ベース、ドラム、鍵盤楽器など)担当しています。要するに宅録作品ですね。
My spaceにて試聴。影響を受けたアーティスト欄にいくつかの名前が記されていました。(この方もSPARKSが好きなようです。最近、SPARKSリスペクトな方が増えていますね)。その中から例えてしまいますが、ラフな鼻歌感覚を持ったポップな楽曲の中に聴き手を裏切る変調を織り交ぜるという意味で、「yes,mama ok」、CARNATIONを彷彿とさせる音楽性です。「「CEO」の再発盤買っちゃったぜ!」、というあなたには検討して頂きたい一枚。
≪聴いた後レビュー≫
これは期待以上の出来でした。バンド・メンバーは渡部氏一人ですが、アルバムでは多彩なゲストを迎えて制作されています。チェロ、フェンダー・ローズ(電子ピアノ)、オルガン、管楽器まで取り入れており、じめじめと湿って、籠もっているサウンド(ヴォーカルも含めて)の味わいを彩っています。
さて。音楽性ですが、ジェントルな雰囲気を漂わせたアコースティック楽曲と、ニューウェイヴ経由のアップナンバーが同居しており、敢えて整理していない印象。この辺りは、一人バンドの特権かもしれません。しかしながら、英国趣味が全編で貫かれている為、不思議と統一感があります。全編から漂うネクラなムードも一因でしょう。
個人的にはアコースティック楽曲の出来が素晴らしく感じました。「ROY WOOD/Boulders」などを思い起こさせる英SSW作品に通じる魅力を持っています。これを日本人が2010年に作ったというのだから感動です。次回CDショップ大賞投票候補。
おまつとまさる氏(松倉如子&渡辺勝)「メルヒェン」
(PCD-93376 P-VINE )
松倉如子氏の新作は、渡辺勝氏との共作となりました。松倉如子氏については表現しづらいのですが敢えて書くならば、一連のオフノート・レーベル作品に通じる日本情緒な味わいを持った情念型ヴォーカリスト。独特の存在感があるので、まず一度聴いていただきたいアーティストです。
「ナリフリ構わない二人の身の毛もよだつ魂の叫びを聞け!」って宣材コメントですが、松倉如子名義での過去2作以上に鬼気迫るパフォーマンスが収録されているというのでしょうか。ちょっと恐いなぁ。と思っていたところ、鈴木翁二氏のメルヘンチックなジャケットを見て一安心。
あ、タイトルもズバリでした。
≪聴いた後レビュー≫
まず、作曲クレジットの内訳から。共作3曲、おまつ3曲、まさる氏7曲、カバー(ベアトリ姐ちゃん)1曲、の全14曲です。というわけで、作曲面ではまさる氏が主導権を握っています。今回のアルバムでは、トラッド色の強い楽曲で全編が統一されています。
まさる氏は、いくつかの楽曲でヴォーカルとしても活躍しており、深みのあるしゃがれ声を聴かせてくれます。心なしか、おまつのヴォーカルもいつも以上に和やかに響きます。
アルバムの構成は、前半をスタジオ音源、後半5曲をお寺録音のライブ音源、となっております。前半、スタジオ音源では穏やかな曲調のものが多く、心地よくまどろんでいると、後半のライブ音源での情熱的なパフォーマンスに圧倒されるという構成は、良く出来ています。
本作は見開きジャケとなっており、物語の存在を感じさせる素晴らしい出来栄え。焚き火を囲んで歌い踊る二人が表している通りの、音楽の素朴な魅力が楽しめる一枚。