11月17日発売の新譜で博文堂木更津店 柴田が購入予定のアルバムをご紹介します。
50回転ズ「ロックンロール・マジック (+DVD)」【初回限定盤】
(AICL-2185 ソニー)
6曲入りミニアルバム。ヴィンテージなロックンロールをパンクらしい前のめりな演奏で聴かせる本格的なロック・バンド。毎回、ロックンロールの枠から外れることなく、バラエティ豊かな楽曲群で楽しませてくれます。今回は往年のロック・オペラ(TOMMYなど)に対するオマージュに挑戦したミュージカル作品とのこと。初回盤には井口昇監督による映像作品も付き、今までになく趣向を凝らした作品となりそうです。
≪聴いた後レビュー≫
「TOMMYとか言っているけど、50回転ズにそのままを求めてもなぁ」と思っていました。しかし、これは!変わりました、50回転ズ。前作でノリ重視、暴れん坊なイメージを植えつけられていたからなのか、カッチリとスタジオで作りました、という姿勢が如実に現れた本作にはイントロから違いを実感。これまでのガレージ・パンクな世界から一転、伝統的なBRITISH BEAT風味へとシフトチェンジ。(あくまでも風味)。
さすがにTOMMYを作ったWHOやHAIRのような世界観は無いものの、今までの彼らからは想像出来ないスタイリッシュなビート・サウンド。クラシックなギター・リフを多用しているのがその一因となっているようです。1曲目のブルー・ハーツはともかく、2曲目イントロに於けるDAVID BOWIE風コーラス、3曲目のパープルの「BURN」風ギターリフ、などこちらの好物を絶妙に忍ばせている楽曲群は一気に聴けます。
音質がいいことも特筆すべき点でしょう。未だかつて、こんなに音質のいい50回転ズは聴いたことがありません。
コンセプトアルバムへのオマージュという点に関しては今のところ、実感なし。ですが、これから付属DVDを見れば、分かるかもしれません。とにかく、6曲で終わってしまうことだけが唯一の不満。フルアルバムが早く聴きたいです。最後に、本作にはライナーが付いており、デモ田中氏の愛と勢いが約7000字に詰まっています。うーむ、この大胆な字数の稼ぎ方は凄いです。いや、褒め言葉ですよ。自分も、もっとはじけなければ!
大橋トリオ「NEWOLD (BOOK付き)」【初回限定盤】
(RZCD-46634 エイベックス)
ダンス・ミュージックをテーマとして掲げた前作は、弦楽アレンジを主体としており、結果としてシティポップの感触に近い、華やかなアルバムとなっていました。一転、メジャー2枚目となる本作では、管楽器を編成に組み入れた楽曲を多く収録、ピアノも鮮やかに映えており、より落ち着いた雰囲気が印象に残ります。初期の音楽性へと回帰した秀作です。
英語詞、日本語詞の楽曲構成も変わりました。楽曲タイトルでは、英語、日本語で交互に表記が並んでおり、「今回も前作と同じく英詞日本語詞が交代していく構成かな。」と思いきや、英語詞は2曲だけ。作曲工程で英語詞の楽曲が少なかっただけだと思いますが、(彼にしては)ロック色の強い英語詞楽曲が少なくなったことが、本作の渋い味わいを生み出す要因の一つでしょう。
次にゲスト参加楽曲について。女性ヴォーカル参加曲ではイントロでハッとさせられ、懸案事項であった布袋氏参加楽曲ではブルース・ギターが適材適所にホーンと絡み合うように活躍(もっとガツガツくるのかと思っていました、てっきりSWEET…じゃなくてBEAT EMOTIONのノリかと。誤解してごめんなさい)。アルバムのメリハリを付けるのに一役買っています。
初回盤の絵本も楽しい出来、アルバムを聴きながら眺めるのが良いでしょう。何といっても出来の良い楽曲「トリドリ」が1曲追加されています。初回盤をゲットするしかありません。ジャケも同様に素晴らしいのですが、所々(目、口など)を切り抜きにして色んな顔に変えられたりしたら、尚良かった気がします。
湯川潮音「クレッシェンド」
(TOCT-27006 EMI )
2年振りのサード・アルバム。前作は英国録音で英トラッド色に彩られており、(DONOVANのカヴァーも収録)渋いアルバムでした。今回は、プロデューサーこそ、前作と同様にクマ原田氏(元ペンギン・カフェ)が担当しているものの、キセル辻村氏、いしわたり淳治氏など、作詞作曲での提供曲の配分が増えている模様。ジャケットはハワイ・マウイ島で撮られたとのことです。先行で公開されている映像から本作収録曲を少し聴くことが出来ましたが、フラダンスも出来そうなくらい、緩く大らかな楽曲という印象。また違う個性を発揮してくれそうな予感がします。
≪聴いた後レビュー≫
ヴァイオリンを中心とした弦楽器によるアコースティックな前作と比較して、一転、楽器数が増えており、明るく親しみやすい作風となりました。具体的には管楽器各種が導入されている他、弦楽にしてもヴァイオリン2本にチェロ、ヴィオラの四重奏編成。各楽曲のアレンジが多彩で、提供楽曲4曲の存在も利いており、アルバムの構成は申し分なし。
英トラッドへの憧れを全編に投影した2ND「灰色とわたし」の気高き魅力とは違う、肩の力を抜いた優しい湯川潮音が楽しめます。