第25回 十字屋CROSSさん

 全国のスゴいお店を紹介していく「つのはず誠の“元気が出る<CD>ショップ”」。なんと、この連載、2年目に突入しました!!こんなマニアックな内容で1年続いていることに私が一番驚いていますが(大汗)、ショップの皆さんのアイデアと情熱に刺激されながら、今後も日々精進できればと思います。

 さて2年目1発目の第25回は、鹿児島市の十字屋CROSSさん (以下敬称略)をご紹介します。


こちら十字屋CROSSの1F入口です。地下にイベントスペース、2Fが楽器や楽譜、3Fがピアノ、そして4Fと5Fが音楽教室とビルまるごと見事に音楽漬けなのです♪

 「十字屋」と聞くと、音楽好きの関東の人は銀座の楽器店を、関西の人はCDショップのJEUGIA(以前四条店をこちらでご紹介)を思い浮かべる人が多いと思いますが、楽器でもCDでも人気の十字屋が鹿児島にあることも忘れてはなりません。この十字屋、創業が昭和初期ということだけあって、お店のあちこちから音楽への愛情が感じられるお店で、加えて、ビルの上階部分は音楽教室や楽器コーナーもあって、その教室に通う生徒たちの為か、上品な雰囲気もあります。でも、やっぱり薩摩の血が騒ぐのか、商品紹介からは郷土愛が満ち溢れています。

 
 実は、そんな十字屋の中で、私が一番に紹介したかったのが以前あった「GACKTコーナー」。発売日に関係なく、いつもゴージャスに飾り付けがしてあるわ、メッセージ・ノートは置いてあるわ、何より作品ごとの熱烈レビューがぎっしり書かれているわ、それはそれは凄かったのです。残念なことに(いえ、おめでたいことに)、その店員さんが近年“寿退社”なさったそうで、GACKTコーナーが維持できず、縮小してしまったそうなんですが、当時は、全国のファンがコーナーで記念写真を撮ったり、GACKT様ご本人が来店したり、とにかく名物コーナーでありました。aiko中毒の新星堂・町田店の“愛子堂”もそうですが、大都市よりも、その周辺や地方都市の方が、実はチャンスではないだろうか、と10年ほど前、私に教えてくれたのがこの十字屋CROSSでした。特に、今年は3月以降、“がんばろうニッポン”がスローガンとなっているので、不器用であれ、無骨であれ走り続けること、頑張ることは、むしろトレンド・リーダーなのだと思います。


ほぼ毎回、猛プッシュされている長渕剛の作品。今回は復興支援作品ということもあって、手書きの推薦文もチカラが入っています。少し読んだだけでも目頭が熱くなります。


鹿児島出身アーティストや鹿児島を拠点として活動するアーティストを応援するコーナー。ちなみに、上方で大きく紹介されている宮井紀行さんも、和歌山出身です。(以前、なまずというユニットでコロムビアからデビューしていました。)

 でも、GACKTコーナーが縮小されても、鹿児島出身アーティストは相変わらず熱いです。その筆頭はやっぱり長渕剛。北海道における松山千春、広島における吉田拓郎も多少コーナー広めですが、鹿児島県内のCDショップの長渕コーナーの大きさは半端ないな~といつも感心します。中でも十字屋CROSSではご覧の通り、隣に血判状でも付いていそうなほどの迫力ある手書き!他にも、城南海や中孝介などもメジャーな方々も、また写真のように鹿児島を拠点とするインディーズ系も平等かつ丁寧に紹介されています。そうそう、水森かおりが「ひとり薩摩路」を歌っていた時も、どデカいパネルで展開されていましたっけ。地元出身でなくても、鹿児島にゆかりのある人や音楽を大切にされているって、なんだか第二の故郷に帰ってきたみたいで、きっとアーティストやファンの人たちも嬉しいのだろうと思います。そんな人と人の繋がりをいっそう感じさせるのが十字屋CROSSなのです。


紙ジャケ復刻盤コーナー。紙ジャケの帯の色とりどりな感じ、またジャケット一つとっても部屋に飾りたくなるようなものが一杯!


こちら、なつかしの名盤コーナー。といっても、森山良子や沢田研二の新譜もあるし、大人の音楽コーナーといったところでしょうか。大型BOXゆえにネット通販中心の『小柳ルミ子BOX』もあります。ファンの年代を考えたら、BOXによってはリアルショップでの販売告知も大切ですよね。

 そして、全国の老舗系には、その店舗面積あたりの効率を上げる為か、ジャニーズ、AKB、K-POP、演歌を“CD四天王”として特化しているお店が多いなか、十字屋CROSSは洋楽では紙ジャケ・コーナーもかなり細かく、また邦楽では昭和期から活躍するアーティストをQ盤コーナーに扱うなど、ミドル層向けにも展開されているので、ネット通販でお目当ての音楽を買うだけで、最近音楽的に広がりがない、とお嘆きの方にもとっても親切だと思います。

 そういえば、十字屋のPOPってどのコーナーも上方に大きな文字で、それぞれ別のフォントで書かれていますよね。これって、画一的に「演歌」「K-POP」などプレートがぶら下がっているのよりも、エンタメ感があって、こういう所も楽しさが演出されているなぁと思いました。

 最新のシングル・チャートを見てみましょう。

十字屋(鹿児島) シングルTOP10(2011/9/26~10/2)
順位 作品名 アーティスト名
1 ゆれて遠花火 西田あい
2 BRIDGE ゴスペラーズ
3 おとこの潮路 北島三郎
4 霜降り岬 椎名佐知子
5 Magic Power Hey!Sey!JUMP
6 いつか シド
7 家族になろうよ 福山雅治
8 桜みち 神野美伽
9 しぐれ橋 角川博
10 やめられない とまれない カサリンチュ

 
 演歌の新作が3位、4位、8位、9位とランクインしていますが、1位は鹿児島出身の23才、西田あい。しかも、昨年7月発売以来キャンペーンを重ねて地道に売れ続けている叙情歌謡です。他にも、奄美出身の男性ユニット、カサリンチュも10位と大健闘。この作品、アイドル以外の新人が注目されやすかった数年前なら、もっと全国的に長く売れていたような音楽好きにはクセになりそうな楽曲です。ロックバンドではショップ発のヒットが目立ってきましたが、こうしたアイドル以外のポップ・ミュージックからも、増えるといいなぁと思います。なお、アルバムの3位にはC&K(メンバーのKEENが鹿児島出身)、7位には現在ブレイク間近の鹿児島出身のロックバンドFAT PROPがランクイン。いやぁ、本当に皆さん鹿児島好き!あっ、アルバム9位はピンク・フロイドの『狂気 コレクターBOX』で、これも熱き薩摩(?)の象徴作としてブレていません(微笑)。最後に、ソフト全般を統括されているソフト営業課の三浦直貴さんにオススメをご紹介いただきましょう。

井乃頭蓄音団  アルバム『素直な自分』

 とにかく赤裸々。ストレート。フォークっぽく聴こえるけど実はロックでパンク。そして商業的じゃない(笑)
こんなこと書いたらBANDのみなさんに怒られちゃうかもしれませんが僕の素直な感想。
九州では彼らの存在が、まだあまり知られていなくてここ鹿児島でも同じ状況だけどこれこそリアルショップが伝えていかなくてはならない作品だと思います。LIVEもかなりいいらしい。

 なんだか、この作品聴き終えるとせつなくてきゅんとしてやるせない自分が出てくるんですよね。
「素直な自分」を突っつかれているからこそなのかも知れません。

 母親の愛情を感じることのできる「帰れなくなるじゃないか」ほかストレートな世界満載の全11曲。
おすすめします。


今ではジャニーズコーナーはどのお店もマストですが、グループごとに色分けされていて、そんな所にも愛を感じさせます。


落語コーナーでは、三遊亭歌之介が紹介。あれ・・・この人、最近リリースあったっけ・・・と思いきや、やっぱりこの方も鹿児島出身。徹底した鹿児島プッシュぶりに恐れ入りました!


そして、こちらが演歌コーナー。演歌といえば、このミニ提灯での飾り付けが定番ですよね。実習生の方も、まずは演歌の棚から仕事を学んでいらっしゃるようですね♪(勝手に解釈)

 うわぁ~、私の数十倍も説得力のある文章!!さっそく公式サイトでアルバムの曲目を見てみたら、うわぁ~、予想以上の赤裸々なタイトルばかりでドキドキ(←お前は中学生か!)。ちなみに、彼らのこの作品、ダウンロードでは1500円なのに、CDではなんと1050円!!パッケージで残るCDの方が安いなんて、前代未聞!そこには明らかに愛が感じられます。そして、そんなCDをしっかり紹介してくださる十字屋CROSSさんにも(じーん)。またお邪魔させて下さ~い♪

 

つのはず・まこと。1968年京都府出身。理学部修了→化学会社勤務という理系人生を経て、97年に何を思ったか(笑)音楽関係の広告代理店に転職。以降、様々な音楽作品に携わり、05年にT2U音楽研究所を設立。現在は、本業で音楽分析やCD企画をする傍ら、日経エンタテインメント!、共同通信、歌ネットなどでも愛と情熱に満ちた連載を執筆中。Twitterは@t2umusic。先日、平原綾香のLIVEを見学したら、観客からスタンディング・オベーションがありました!!クラシックや洋楽のベテランなら見た経験がありますが、J-POPアーティストでは初めての体験でした。それだけ彼女のファンは、クラシックの正統派からも認められているということなのでしょうか。「Jupiter」の大ブレークから約8年、MCの天然ボケもすっかり上手くなって(微笑)、歌い上げの説得力も数倍増して、「継続は力なり」というのを自然に見せつけられた1日でありました。